朝、出かける準備をしていた。
カバンをリュックからショルダーバッグに替えた。
中身を詰め替えた。
が、定期入れがない。
私鉄定期券と、ピタパ(非接触型交通ICカード)と、行政発行のバスカードが入っていた。
それらは3枚とも、交通機関を利用する時に全て必要。
が、どうしてもない。
探しても探しても、ない。見つからない。
出かけるまで後30分しかない。
遠方地、本日のアポ時間は遅延できない。
どこに行った??
さて、どこかに落とした?
昨日は、帰りにビールと酎ハイを飲んだ。
酔っ払って脳が溶けたか。
冷静になって昨夜の足取りを辿ってみる。
最後にバスカードを使ったのは?
前日、夜、自宅最寄りバス停で降りた時。
少なくともその時まではあった。
そこから自宅までの間に落とした?
もうあれから14時間も経っている。
だが、落としたのかも?
部屋着にコートを引っかけて、絶望しつつ、あまり期待せず、帰って来た道を逆戻りした。
道の地面に目線を落とし、じっと追い、落ちていないか探しながら歩いた。
が、もう半分は諦めていた。
警察に落とし物がなかったか、問い合わせなければいけないなあ、、、などと、交番の赤いランプがアタマに浮かんだ。
とぼとぼ。
駅に向かう側の乗るバス停から、道を挟んでその向かいにある、降りる側のバス停へと、自動車道路(両車線で幅12メートルぐらい?)を横切って渡った。
その頃には、すっかり諦めていたが、虚しくもありながら、とりあえずは、前夜に自分が歩いた経路を辿った。
降りた地点まで行き、パスカード入れがないことを確認して、また道路を渡ってUターンした。
駅に向かう側のバス停の、停留所名が書かれた標識版の足元をふと見ると、、、なんと、わたしのパスカード入れが地面に置かれていた。
あらまあ、なんと。
見覚えのある茶色のパスカード入れ。
驚きのご対面。
外国で元夫に出会ったような、不思議な感動。(離婚経験はないが)
どなたかがどこかで拾って置いてくれたのか。
「落とし主は乗る側のバス停に必ず来る」と、拾い主に予測されたのだろうか。
交番に届けてくれていなくて、かえってよかった。
パスカード入れの中を見ると、微妙にカードを入れる場所が変わっていた。
カード入れの中からカードを3枚とも一旦、抜き出して、また入れたようだ。
ひょっとすると、入れていた100円がなくなっていたかも??
(いつも100円予備に入れている)
少々、人の手に触れた形跡はあるものの、とりあえずは、大喜び。
100円ぐらいお安いものだ。(勘違いの可能性もある)
喜びが込み上げるというよりも、半分信じられない思いで足早に自宅に戻った。
出かける前にお風呂に入る時間は、パスケース探しに使ってしまったものの、ギリギリ、準備をして予定通り、乗るバスの時間に間に合った。
ああ良かった、良かった。
なくして悲しみ、がっかりし、見つけて喜び、上がったり下がったり、忙しかった。