夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

“浪速の歌う巨人パギやん”に会いに行く。

2015年12月08日 | 映画(か行)
去年「さばのゆ大学」を教えてくれたお姉さまから、
この間の日曜日、新たなお誘いをいただきました。
「パギやんの『歌うキネマ』に行きませんか」って、何ですかそれ。

お題目は名作中の名作、『飢餓海峡』(1965)。
これを1本丸ごと歌ってしゃべる人がいらっしゃるという。
『歌うキネマ』であり『声体文藝館』であるらしい。

ますますよくわからない。
気にはなるけど、日曜日の晩ごはんは諸般の事情から16時が定刻のわが家。
谷町六丁目で15時半~17時までのこの催し物に参加したら、
晩ごはん定刻の掟を破ってしまうことになるため、一旦はお断りしました。

しかし気になって仕方がない。
マルセ太郎の『スクリーンのない映画館』みたいなものを想像するけれど、
そもそもマルセ太郎のそれを観たことがないからわからない。
ダンナに「よくわからんねんけど、映画丸ごと1本しゃべらはるみたいやねん」と
まったくわからない説明で許可を得て、梅田で映画鑑賞後に谷六へ。

駅から徒歩数分、空堀商店街入口近くのビルの地下、
舞道ダンスシアター・アジール空堀にて。
開場時間の15時ちょっと過ぎにおじゃま。なんとも怪しげ。
40名の定員は予約で満杯の様子ですが、まだ客少なく、
けれど前方に座るのは初体験には畏れ多くて遠慮、最後部に座りました。

開始時間になっても未到着のお客さんが5名以上いらっしゃり、
常連さんが多いのか、そのあたりは結構ゆるめ。
その時間を埋めるべく、“浪速の歌う巨人パギやん”こと趙博さん、トーク開始。

客が揃う前にと場つなぎに話してくださったところから、私はすでに引き込まれました。
ケイト・ウィンスレット主演の『愛を読むひと』(2008)と
昨秋日本で公開された『シャトーブリアンからの手紙』(2011)。
この2本のあらすじをパギやんが説明してくれるわけですが、
私の頭の中には映像もしっかり思い出されて、皆さんの2倍強楽しかったはず(笑)。

徐々に明らかになる、これから私が観るものが何なのか。
つまりは映画1本丸ごと、パギやんが語りと歌と身振り手振りで再現するらしい。
そこにピアノの生伴奏まで付いているのです。

『飢餓海峡』は水上勉の同名小説を内田吐夢監督が映画化した作品。
1947(昭和22)年、悪天候のせいで青函連絡船の層雲丸が転覆、多数の死者が出る。
遺体の身元を確認してみると、乗船名簿に該当者がいない遺体が2体。
同日、北海道岩内で大規模火災が発生。
火元の質店は3人組の強盗に押し入られており、犯人が証拠隠滅のために放火したらしい。
身元不明の遺体2体は犯人3人のうちの2人と判明。
函館警察の刑事が、2人を殺したのは残る1人であると推測する。

……というようなあらすじをパギやんがザザッと説明。
殺す人=三國連太郎、殺される人=左幸子、函館署の刑事=伴淳三郎、
東舞鶴署の刑事=売れる前の高倉健
そんな説明も先にしてくれるのでとても話に入り込みやすい。

北海道から舞鶴まで、壮大なスケールで描かれた作品が目に浮かぶよう。
『歌うキネマ』、『声体文藝館』と名づけられたこの一人芝居は、
全身でおこなう落語のようです。面白すぎる。
映画の台詞以外にも、パギやんの歌や語りが挟まれ、稲妻に合わせて照明もパシッ。
ピアノの伴奏がこれまた素晴らしい。

『シャトーブリアンからの手紙』はそのうちやろうかとおっしゃっていました。
めちゃめちゃ観たい聴きたい。

こんな楽しい舞台をありがとうございます。また必ず観にいきます。

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