2022年2月の読書メーター
読んだ本の数:11冊
読んだページ数:3258ページ
ナイス数:757ナイス
■夜は不思議などうぶつえん (双葉文庫)
半年後に閉園する動物園でバイトする主人公・飛鳥。閉園なんて動物たちは与り知らぬことだから、気づかれぬように飼育に努めるところがまず素晴らしい。夜勤のエキスパート・不破は動物と入れ替われる特異体質の持ち主で、その様子はまるで憑依。若干エロ爺気味のライオンや、フワフワの毛皮を着たいサイ、野球に勤しむフラミンゴなど、とても楽しい。こんなふうに動物の気持ちが分かればと思うけど、言葉が通じないからこそ分かろうと努力する。檻の中の動物にとって、人間は囲いのない檻の中で暮らす不自由な生き物に見えているって、ホントかも。
読了日:02月04日 著者:石田 祥
■ヒポクラテスの試練(祥伝社文庫)
別に笑うような話ではないはずなのに、光崎教授に無茶を言われて悲壮感漂う古手川さんが可笑しくて、電車の中で何度かふきそうになりました。怪しいがな(笑)。毎年受ける健康診断の意味なく突然末期の肝臓癌で死亡なんて怖すぎる。原因は早いうちに明らかになるものの、どうしてこんなことが起こるのか。今回のドンデン返しは全然たいしたことねぇなと思ったら、やっぱり来ましたよ、残りがうっす薄になってから。まったく何度やられたら慣れるのか。前作までキャシー要らんと思っていましたが、彼女も実は苦労人のようで。こっちには慣れてきた。
読了日:02月06日 著者:中山七里
■グッバイ、ドン・グリーズ! (角川文庫)
薄かったから。それ以外に本書を購入した理由はありません。そもそもノベライズというものにはあまり良い印象がないのです。すみません。……と思いながら読みはじめました。期待どおり1時間もあれば読めますが、目の前に広がる光景は意外と大きかった。かつ、訳あって今は余命という言葉に敏感になっているため、思いのほかジワッと来ました。「たとえ打つ手がないと言われても、ハッピーエンドをあきらめる必要なんてない」。悪あがきであってもできないよりはいい。ほんと、悪あがきのひとつでもやってやれと思う。出来過ぎの偶然も見たいよ。
読了日:02月08日 著者:いしづかあつこ,山室 有紀子
■軀 KARADA (文春文庫 の 7-13)
中年以上に差しかかった頃、高校時代の同窓会で、ある男子が「女性の後ろ姿だけでだいたいの年齢を当てるにはどこを見ればよいか」を皆に力説してくれて、大笑いしたことがあります。お尻、肘、膝の裏。本作はなんだかその説を証明するかのようだなぁと苦笑い。ほかに登場する部分もヘソ、顔のシワ、つむじ、顎といった、特に老いの現れる部位として描かれているわけではない場合も、見た目を多少なりとも気にする人であれば、コンプレックスの集まるところ。ハッピーエンドは無し。気にせずにいられたらよかったのか。やはり美しく強く生まれたい。
読了日:02月13日 著者:乃南 アサ
■風神の手 (朝日文庫)
「好きとは言えないのに読んでしまう作家」のうちのひとりが道尾秀介なのですが、本作を読むと、私やっぱり彼が好きなんだわと思う。裏表紙から想像したのはオカルトの入ったミステリー。遺影専門の写真館が舞台で、死んだはずの人が写っているとなればそう思いませんか。だけど違った。いったい各章の登場人物はどう繋がっているのか。とてもややこしいので、500頁弱のボリュームでもとっとと読むことを勧めます。でないと、誰が誰かわからなくなる。いろいろある人生だったとしても、いろいろあったからこそ今がある。あなたがいる。よかった。
読了日:02月14日 著者:道尾 秀介
■歪んだ波紋 (講談社文庫)
塩田さんの作品はどれも好きではありますが、どハマリしたボクシングの話や、将棋やオーケストラの話と比べると、いかにも新聞記者らしい『罪の声』と本作はかなり硬質。読みやすさの点から見るとサクサクすいすいというわけには行きません。しかしじっくり読めば、世の中にはこんなにも「創られた」記事があり、しかもそこには悪意が存在することに恐怖を感じます。新聞を取る人が減っているであろう昨今、とにかく人の目を引く記事にしなければならない。でも罪のない人まで傷つけられるとは。嘘を見抜く力が私たちにも必要だなぁと思わされます。
読了日:02月19日 著者:塩田 武士
■天国酒場
癌で闘病中の弟が、『週刊プレイボーイ』に面白い連載があるよと教えてくれたのが「今週のハマりメシ」。その著者の本も貸してくれました。天国酒場を簡単に説明すると、パラダイス的立地の飲酒できるお店。酒飲みならばどうにかして行ってみたくなる文と写真。どこもその店にいる気持ちになれます。家系的に酒に強いわが家ではありますが、弟はたいして飲みません。それが、癌になって飲酒を控えざるを得なくなったら、ちびちび飲みたいなぁと思うことがあるらしく。心の裡を推し量ると姉としては切ないものがあります。代わりに私が飲むわ(笑)。
読了日:02月21日 著者:パリッコ
■グッバイ、ドン・グリーズ! (角川文庫)
【再読ではなく、映画版を観たので書き込み】もともとノベライズは「そんなもん」とナメてかかっていますから(失礼極まりなくてすみません)、観る前後どちらか、映画とセットでしか読みません。薄さに惹かれて先に読んだ本作。ロウマとドロップの出会いなど、映画とは順序を入れ替えて描かれている部分もありますが、ノベライズゆえ当然ほぼ同じ。ただ、読んだだけではここまでの光景は想像できず。ロウマとトトが訪れる旅先の美しさには目を奪われました。水しぶきが本当に飛んで来そう。こんなところに公衆電話、あり得ないけど、あったらいい。
読了日:02月23日 著者:いしづかあつこ,山室 有紀子
■夢探偵フロイト ナイトメアの殺人実験 (小学館文庫 C な 2-5 キャラブン!)
思えばこのシリーズを読みはじめたのは、内藤さんの他のシリーズが途切れたり終わったりして寂しかったからでした。たぶんイマイチだろうという予想に反してこれも面白くて、それなりにハマったのですよねぇ。なのに最終巻だなんて(泣)。悪いことをする人だから悪いことを楽しんでいるとは限らない、本人が一番苦しんでいるかもという言葉にハッとさせられ、悪夢のもとを抱きしめるシーンではウルリ。まさかペコに泣かされるとは(笑)。みんな卒業しちゃうんだね。ドラえもんやクレしんみたいにずっと同じ年齢でいてくれてもいいのになぁなんて。
読了日:02月25日 著者:内藤 了
■正義の申し子 (角川文庫)
こんな言い方は失礼かもしれませんが(どちらに?(^^;)、本作を例えるなら「文章の上手い木下半太」。コミュ障ひきこもりネット弁慶YouTuberとイケメン銭なしチンピラのバトルはどこへ行き着くのか。著者の『悪い夏』の印象が強かったので、心折れそうなバッドエンドも覚悟していたけれど、想定外に最後は笑って泣きながら読みました。彼らに自己投影する読者も多いことでしょう。生きづらさが切なく思えて、今後のふたりを応援したくなる。ラストシーンが目に浮かびそうで、最高です。それにしても染井さん、何故こんなに大阪弁堪能?
読了日:02月27日 著者:染井 為人
■早朝始発の殺風景 (集英社文庫)
たいして親しくもなかったのになぜか思い出す同級生。私の場合、その同級生と数十年後に再会したと思ったら、しばらくして彼女が亡くなってしまったから、本作を読むと懐かしさと同時に切なさに襲われます。本音が出る瞬間に心を掴まれる。連作風で連作ともいえない短編5つ。ミステリーとは思わずに読みはじめたから、意外としっかり謎解きであることに驚きました。何度か声に出して笑う。特にツボだったのは、「穴があったら埋まりたい」。そうだよねぇ。入るぐらいでは収まらないほど恥ずかしいときってあるよねぇ。青春って、やっぱりいいな。
読了日:02月28日 著者:青崎 有吾