『1秒先の彼女』(原題:消失的情人節)
監督:チェン・ユーシュン
出演:リウ・グァンティン,リー・ペイユー,ダンカン・チョウ,ヘイ・ジャアジャア,
リン・メイシウ,マー・ジーシアン,バンブー・チェン,トム・リン他
すっかりDVDをレンタルして観る機会は減りましたが、
いまでもTSUATAYA DISCASの契約は解除することなく続けています。
一時は「定額レンタル16」でしたが、今は月に4枚だけ。
で、その4枚を借りるのは、毎年末に自ら義務と化している「今年観た映画50音順」のため。
だから、同じ字で始まるタイトルの作品は1回しか借りません(笑)。
ひと月4枚×12カ月で48枚、これでほぼ50音すべて網羅できますから。
だから最近はDVD鑑賞した作品については年末まで出番がないのですけれど、
「い」で始まる作品は1月にすでに観てしまったのですよね。
でも本作はスルーできずに借りてしまった。
えっ、この監督、全部で5本しか撮ってないんですか。量より質か。
台湾のアカデミー賞に当たる金馬奨で作品賞と監督賞を含む最多5部門を受賞したそうです。
郵便局に勤めるアラサーの女子社員シャオチーは、
幼少期から何をするにも人よりワンテンポ早い。
写真を撮るときには必ず目を瞑ってしまうし、走り出すのも笑い出すのもワンテンポ早くて、
誰ともタイミングが合わず、ずっと冴えない人生が続いている。
容姿も凡庸で、隣の窓口の美人社員と見比べられてばかり。
そんな彼女がある日、公園で踊っていたイケメンダンス講師リウに恋をする。
郵便局までやってきたリウから映画に誘われて盛り上がったのち、
リウが大金を手に入れたいと望んでいることを知ったシャオチーは、
ふたりで市の競技大会に出ることを提案。賞金がもらえるからだ。
競技大会の日はちょうどバレンタインデー。
いそいそと用意するシャオチーだったが、目覚めたのはなぜかバレンタインの翌日。
消えた1日の謎を解明しようと街をさまようのだったが……。
これがシャオチーの章。
そこに登場していた青年グアタイが鍵を握っていることが後半にわかります。
グアタイは毎日のように郵便局を訪れ、シャオチーのいる窓口で切手を買う。
シャオチーは彼のことを不審に思い、切手をまとめて買えばいいのにと直接言ったことも。
けれど笑ってごまかすグアタイは、実はシャオチーに恋していました。
しかもそれは今に始まったわけではなく、20年も前から。
何をするにもワンテンポ早いシャオチーに対し、何をするにもワンテンポ遅いのがグアタイ。
ネタがバレバレですが、毎日ワンテンポ遅い人の1日は、普通の人より長い。
それが20年積み重なると、利息が1日になるというんです。
んなアホな(笑)ですけれど、これがなんだかとても素敵。
利息となって返ってきた1日、世界中の「普通」の人の動きが止まる。
そのとき動けるのはいつもワンテンポ遅かったグアタイ。
それ以外にも何人かの動ける人がいて、中には行方知れずだったシャオチーの父親も。
幼少時、同じ病院に入院していたシャオチーとグアタイ。
シャオチーのほうは忘れてしまっているけれど、
明るくグアタイを笑わせてくれたシャオチーは初恋の相手。
人よりワンテンポ遅いせいで同じく冴えない人生を送っていたグアタイにとって、
シャオチーと再会できる日を待つことが生きる原動力となっていました。
思い出してくれなくても、グアタイは毎日シャオチーに手紙を書く。
でもこれを最後の手紙にしてあきらめよう。これ以上は変態になってしまうから。
「変態」に笑いつつ、胸の中は切なさでいっぱい。
逢えてよかった。