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『夢みる小学校』

2022年03月28日 | 映画(や行)
『夢みる小学校』
監督:オオタヴィン
ナレーション:吉岡秀隆
 
京都で晩ごはんを予約した日、朝から京都シネマで映画ハシゴを企図しました。
ところが京都シネマだとどうがんばっても鑑賞可能本数は3本。
アップリンク京都でなら4本観られる。アップリンクの会員になりました。
ちなみにアップリンク会員になると、平日は1,100円、土日祝日は1,300円で鑑賞できます。
 
“いただきます”シリーズのオオタヴィン監督の作品。
南アルプス子どもの村小学校に密着したドキュメンタリーです。
 
京都大学教育学部出身の堀真一郎さんがイギリスの自由教育を目にして、
こんな学校を作りたいと、和歌山にきのくに子どもの村学園を創設したのは1992年のこと。
大自然のなか、子どもたちの個性を尊重した教育をおこなう。
小学校は1年生から6年生までの縦割りで全学年児童が入り混じり、
算数や国語といった授業もなければ、宿題もテストもありません。
 
堀さんはその後、福井、山梨、福岡、長崎などに学園を創設。
そのうちの山梨県南アルプス市に作ったのが南アルプス子どもの村小中学校です。
 
こういった学校は正規の学校法人ではないと思いがちですが、
文部科学省の学校教育法にちゃんと準じています。
 
入学すると、子どもたちは5つのプロジェクトから好きなものを選ぶ。
そのプロジェクトは、クラフトセンター、むかしたんけんくらぶ、
おいしいものをつくる会、劇団みなみ座、アート&クラフト。
何かを作ったり表現したりすることで暮らしについて考える趣旨があり、
どこの子どもの村学園もプロジェクト名は違えども同様だと思われます。
 
学校教育の基本的な科目がないなんて。算数、要るでしょ。国語、要るでしょ。
そう思って訝っていたら、たとえば料理の材料の値段や重さを計算するし、
子どもたちが訪問したい施設に自ら電話をかけてアポイントメントを取るし、
とにかく大人社会で必要なことはたぶんすべて身につけているのです。
修学旅行の行き先を決めるのも子どもたちで、必要経費の計算ももちろん自分たちで。
1万円を「安っ!」という小学生にはちょっと引きますが。(^^;
 
素晴らしいとは思います。
でも自分が子どもだったとして、この学校に行きたいかと聞かれたら迷う。
 
ルールとは何だろう、決まりきったルールなんて要らないと言う。
でも、子どもたちが教室で寝そべったり床に座り込んだりしている姿に、
じっとしていなければいけないこともあるよねと思わなくもない。
 
職員室でも教室でも先生の膝の上に座る子どもたち。
そもそも「先生」という考え方はなくて、「先生」とも呼ばないそうですが、
誰かを師として崇める感覚はあるのだろうかとも思う。
 
脳科学者、作家、人類学者、尾木ママといった各界の先生方もインタビューで絶賛。
こんな学校ならそりゃ楽しいだろうと思うメリットしか語られません。
よい学校だと紹介したい作品なのですから当然のことですが、
デメリットがひとつも出て来ないとなると、いろいろ疑問に感じます。
 
いじめとかないのかな。ないんでしょうね。
でも、入学したものの馴染めないという子どももいると思うんです。
ここには馴染めた子どもしか出て来ませんし。
 
「普通」の学校でアスペルガーと診断された子どもたちが
この学校に救われた例も多いという談話もありました。
それも素晴らしいことだと思うけれど、もしも「普通」の場に戻ることがあるならば、
大丈夫なんだろうかという気持ちもあって、考え込んでしまいます。
「普通」になんて戻らなくてもいいわけですから、これはこれでいいかと思ったりも。
 
それはそうとして、いちばん大きな謎だったのはこの日の客。
家族連れで来られていましたが、幼児に本作が面白く映るはずもなく、
座っていられなくてドッタンバッタン。
それを横目にパパは鑑賞中にスマホを開くこと数回。
映画の上映中にスマホを見るのはあかんという「ルール」はどうなるんでしょ。
 
それと、校則や定期テストをやめたという世田谷区の中学校の元校長先生。
「校長をさせていただきました」は「校長を務めました」で良くないかい?
別の小学校のカリキュラム表に「ら抜き」があったのも気になりました。(^^;
 
こういう作品を意地悪な目で観てしまうのはよろしくないと思っています。
でも、いくら用意すれば入学できるのか、通学できるのか、
寮生活みたいなものを送っているのかどうかもまったくわからない。
入学を検討している人たち向けというよりは、
卒業生の皆さんが「いい学校だったよね」と再認識する作品のように思えます。

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