『ドリームプラン』(原題:King Richard)
監督:レイナルド・マーカス・グリーン
出演:ウィル・スミス,アーンジャニュー・エリス,サナイヤ・シドニー,デミ・シングルトン,
トニー・ゴールドウィン,ジョン・バーンサル,ディラン・マクダーモット他
令和の祝日って、何が何の日やらまだ覚えられません。
2月23日はいったいどうして休みなのだろうと思ったら、そうですか、天皇誕生日ですか。
ちょうど水曜日だから、映画が安い。
寒すぎて家から出たくないけれど、109シネマズ箕面にて1本だけ。
原題は“King Richard”。
女子テニス界のスーパースター、ヴィーナス&セリーナ・ウィリアムズ姉妹の父親のこと。
リチャード・ウィリアムズはアメリカ・ルイジアナ州の出身。
「KKKから逃げるのに忙しくて、テニスをする黒人なんていなかった」という冒頭のひと言は、
悲惨な境遇を表しつつもユーモアを感じられて笑ってしまいました。
そんな彼が結婚して移り住んだのはカリフォルニア州のコンプトン。
ルイジアナ州よりは黒人にとって暮らしやすい環境でしょうが、治安は決してよくない。
ここから必ず出て行くのだと、娘5人を厳しく躾けます。って、虐待とかじゃない。
医者や弁護士を目指して勉学に勤しみ、全員成績は上位。
だけど頭でっかちにはならぬよう、身体能力も高めることに努めます。
ヴィーナスとセリーナはテニス選手にしよう。
リチャードと妻オラシーンは、この娘たちが生まれる前からそう決めていました。
しかしテニススクールに通ったりコーチを雇ったりするような金はないから、
テニス未経験者のリチャードが毎日ふたりに指導する。
みるみる上達していく彼女たちを見て、自分が教えるには限界を感じます。
こんな町で練習を続けていたって、ウィンブルドンには行けない。
無料で指導してくれるコーチを見つけようと、リチャードはあちこち当たります。
そんなコーチいるわけない。でもいるんですよね。
最初にコーチを引き受けたのは、ジョン・マッケンローのコーチでもあるポール・コーエン。
ただし、引き受けるのはヴィーナスだけ。セリーナまでは見てくれない。
ここでセリーナを腐らさないようにするのもまたリチャード。
破竹の勢いで出場試合に勝ち続けるヴィーナス。
これからはジュニアのツアーに出て勝ちまくるぞと意気込むポールに対して、
リチャードは「ヴィーナスはまだ子どもだから」と拒否。
世界を回るには心も体も整っていないと言うのですね。そしてポールと離縁。
勝ち続けているのに試合に出るのをやめて、すべてが整うまで待ってくれるコーチはいるか。
そんなコーチもいるわけない。でもリチャードは見つけるんです。
今までいなかったなら、アンタがその第一人者になってくれりゃええと。
白羽の矢を立てられたのは(笑)、リック・メイシーでした。
私が名前を知っている選手だと、ジェニファー・カプリアティのコーチですね。
娘の意思を尊重せずに、妻とも相談せずに、何でもひとりで決めてしまうリチャード。
独善的で横暴に見えなくもありません。
彼が白人だったら、間違いなくそう思うことでしょう。
でも、彼は黒人。一家は黒人。
彼女だけの問題ではない。全世界の黒人の思いを背負っているのですから。
整わないうちに世に出て、撃たれたり潰されたりすることがないように。
ウィル・スミス演じるリチャードに振り回されるリックが可笑しくて、何度かクスッ。
リック役のジョン・バーンサルもとてもよかったです。
テニスをする人はぜひ、しない人もどうぞ。