夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

今年観た映画50音順〈は行〉

2024年12月29日 | 映画(は行)
《は》
『薄氷の告発』(英題:Bait)
2023年の韓国作品。TSUYAYA DISCASにてレンタル。
実話が基になっていると思っていましたが、そうではないそうな。
ただ、韓国のアイススケート界では度重なる不祥事が問題になっているらしく、
実際に有罪判決を受けた指導者もいるそうです。
ショートトラックの元韓国代表選手ジュヨン(ペク・ジニ)は全盛期に引退、
現在は高校のカーリング部で女子チームのコーチをしている。
ある日、かつてチームメイトだったユラが自殺したと知り、悲しみと共に怒りに駆られる。
ジュヨンは選手時代にコーチのヒョクス(ペ・ユラム)から性的暴行を受けており
当時それを訴えたジュヨンのほうが責められ、自殺を図った過去がある。
それで選手を引退することを余儀なくされたのだ。
ユラも同じ目に遭って自殺したに違いないと思っていると、
ユラの兄ムヒョク(ソン・ジェリム)が妹の無念を晴らしたいと言ってジュヨンに協力を求めてくる。
一方、ヒョクスはジュヨンの教え子スジをスカウト。
スジもその母親も国家代表選手になるチャンスがやってきたと大喜びで、
ジュヨンがどれだけ引き留めようとも聞き入れようとせず……。
韓国のみならず、アメリカでも日本でも指導者による性暴力が取り沙汰されています。
そんな指導者をクビにすることなく、事件を揉み消して使いつづける協会。
同罪もしくはそれ以上ではないですか。
 
《ひ》
『瞳をとじて』(原題:Cerrar los Ojos)
2023年のスペイン作品。TSUYAYA DISCASにてレンタル。
今年84歳のヴィクトル・エリセ監督が31年ぶりに撮り上げたとして話題になった作品です。
と言っても、映画監督人生でこれがたった4本目の長編作品。
なのに巨匠名匠と呼ばれて国際映画祭の審査員になったりもしていて、どんだけ評価が高いんだ。
元映画監督のミゲルは、20年以上前に起きた事件について取材を受ける。
それは、ミゲルの監督作『別れのまなざし』の撮影中に、主演男優のフリオが突然失踪し、
そのせいで映画自体も未完のまま終わってしまったという事件だった。
取材に協力することにしたミゲルは、親友でもあったフリオとの懐かしい日々を思い返すのだが……。
どれだけ凄い監督なんだか知りませんが、169分の長尺でギブアップしそうになりました。
しかも、この直前に観た作品が《へ》に挙げる『ペット ネットで出会った美少女の秘密』で、
ミゲル役のマノロ・ソロがロリコンの変態男を演じているんです。
ド変態ぶりが思い起こされてしまってどうにもこうにもつらかった。
拷問のような3時間近くでした。(^^;
 
《ふ》
『震える家族』(英題:The Other Child)
2022年の韓国作品。TSUYAYA DISCASにてレンタル。
牧師のソクホとその妻ヒョヌには4人の子どもがいたが、長男のハンビョルを事故で失う。
その悲しみからなかなか立ち直れずにいたヒョヌをソクホが説得、
視覚障害のある少年イサクを施設から養子として引き取ることに。
イサクにはハンビョルのことを伏せていたのに、イサクには死人が見えるらしく、
そのせいで親から捨てられ、彼の服には魔除けの札が縫い付けられている。
イサクの言動を最初はまったく信用していなかった夫婦だが、
イサクがハンビョルから聞いたという言葉があまりに具体的で、ヒョヌはイサクを信じるように。
それを良しとしない長女ジュヨンは、イサクを悪魔の子とみなして抹殺しようとし……。
終始不気味ではあるけれど、驚かせるようなシーンはほとんどなし。
心理的にぞくぞくさせてくれる、私の好きなタイプのホラーです。
ただ、何もかもが中途半端な感は否めません。
謎だったハンビョルの死は、ジュヨンが仕組んだものだったと途中わかります。
車椅子に乗り、癇癪持ちで手のかかる息子だったハンビョル。
その世話に疲れている母親の姿を見て、ジュヨンが車椅子のロックを解除した。
ただ、実はヒョヌもそのことに気づいていたのに見ないふりをしたことが
教会の信者でやはり死人が見える青年ヨンジュンに知られ、ヒョヌはヨンジュンを殺します。
母親が家族を守ったようなエンディングにはなっていても、切なさが足りない。
 
《へ》
『ペット ネットで出会った美少女の秘密』(原題:La Desconocida)
2023年のスペイン作品。日本では劇場未公開。TSUYAYA DISCASにてレンタル。
パコ・ベセラ原案による舞台劇『グルーミング』は世界中で上演された問題作なのだそうです。
妻と幼い娘を持つ中年男は実は小児性愛者
レオナルドという偽名を用いてネットで少女を物色中、16歳のカロリーナと出会う。
直接会う約束を取りつけて公園に出向くとカロリーナは怯えつつも逃げ出す様子がない。
カロリーナのことをすっかり手なずけたつもりが、童顔に見える彼女の正体は捜査員で……。
ロリコンの変態男を演じるのはスペイン・アカデミー賞受賞俳優のマノロ・ソロ。
最初の15分ほどはその変態ぶりが気持ち悪くて観るのをやめたくなるほど。ところが話は急展開。
捜査員だと打ち明けた彼女が男に復讐するのかと思ったら、彼女も人には言えない性癖がある。
狭いところに閉じ込められると興奮するらしくて、男に取引を持ちかけます。
男の言うことも聞いてやる代わりに、彼女を生き埋めにしてほしいと。
もしも断ればどうなるかわかっている?という彼女がものすごく怖い。
どうやらこれまでにも捜査対象者に取引を持ちかけて、断られた場合は殺しているのかもしれません。
生き埋めにされることで至上の性的興奮を感じられるのだという彼女ですが、
エンディングは彼女が森を抜けてただ向こうに歩いて行くシーンが映し出され、この世にあの男はもういないように思えます。
本編開始前にパブロ・マケーダ監督本人が「ネタバレ厳禁」と強く言うわりには、
それぞれがどうなったかは最後まで観ても明かされることなく、観た人に解釈が委ねられる。
なんだか嫌なものを見せられただけでまったくスッキリせず。ああ、嫌だ。

《ほ》
『ほかげ』
2023年の日本作品。TSUYAYA DISCASにてレンタル。
塚本晋也監督の作品と聞けば観ずにはいられません。
終戦直後の闇市。夫と息子を亡くした女(趣里)は、半焼した小さな居酒屋でひとり暮らしている。
世話焼きの男(利重剛)の紹介によって店に来る客に体を売って日々をしのぐ毎日。
食べ物を狙って覗きにくる少年(塚尾桜雅)を最初は追い払っていたが、
ある日やってきた若い復員兵(河野宏紀)と共に少年も招き入れたところ、
家族を取り戻したような気持ちになり、心が穏やかになる。
しかしトラウマを抱える復員兵が正気を失って暴力をふるったため、彼を叩き出す。
残った少年に泥棒などせずにまともに働けと諭し、まるで親子のように暮らしはじめるのだが……。
女はやがて病に罹り、少年にうつしてはならぬという思いから、「嫌いになった」と嘘をついて追い出します。
少年を拾ったのはやはり戦争で心身に傷を負った男(森山未來)。
静かな反戦ドラマで、つらいけれど目を背けることはできませんでした。

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今年観た映画50音順〈な行〉

2024年12月29日 | 映画(な行)
《な》
『何がなんでも!遺産でリッチ』(原題:Ricchi a Tutti i Costi)
2024年のイタリア作品。Netflixにて配信。
高校時代の同窓会に出席したアンナは、40年前の当時に恋人だったヌンツィオと再会。
劇場を所有するヌンツィオは、アンナの母親で女優のジュリアナを紹介してほしいと言う。
高齢のジュリアナにはとんと仕事の話などなかったから喜ぶに違いない。
ヌンツィオに感謝するアンナだったが、ある日、ジュリアナから家族に召集がかかり、赴いてビックリ。
アンナと夫カルロ、息子エミリオ、娘アレッサンドラの4人共、てっきり遺産相続の話だと思っていたのに、
ジュリアナは恋人ができたので結婚すると言う。しかもその相手は30歳以上も下のヌンツィオ。
遺産が狙われていると考えたアンナたちは、挙式のために訪れるスペインでヌンツィオを殺す計画を立てて……。
600万ユーロ(約9億5千万円)もの金を持っている婆ちゃんが死ぬのをみんな待っているのに、
その婆ちゃんがうんと年下のいかにも遊び人の男を連れてきたらどうしますか。
家族が今までにないくらい一致団結して殺害の計画を練る様子はあんまり笑えない。
結局、婆ちゃんは何もかもわかっていて、アンナにだけは打ち明ける。
ヌンツィオとの生活を始める前に600万ユーロはすべてアンナの口座に移すこと。
それをヌンツィオには言わずにおけば、彼は金目当てにジュリアナのそばに居続ける。
余生を楽しみたいからこうするのよと。
アンナは夫や子どもたちにもこの事実を伏せたままエンドロールへ。
さて、この先どうなるでしょうね。
お金を持ちすぎるのも考えものだなぁ。ちょうどいいのはいくらぐらい?
 
《に》
『日本で一番恐くない間取り』
2023年の日本作品。TSUTAYA DISCASにてDVDレンタル。
自殺や他殺、孤独死により、国内の物件のほとんどが事故物件になった近未来。
日本で唯一の「無事故物件」となった部屋の住人・山田(大坂健太)のもとへ、
さまざまなメディアがインタビューに訪れて山田は大迷惑。
職場にもひっきりなしに人が押しかけるせいで山田はクビになり、フリーターに。
そんな山田の部屋で金を儲けようとする不動産屋・根津(ヤマダユウスケ)は、
亡き夫の幽霊に怯える大富豪・富良野(広山詞葉)に売りつけることを思いつく。
家賃10万円で入居中の山田に退去費用として2,100万円を提示し、この部屋をオークションに出せば20億円で売れる。
しかし根津の思惑に気づいた山田は頑として退去しようとしない。
根津は社員の桧山(エアコンぶんぶんお姉さん)を使うなどして山田に嫌がらせを繰り返すのだが……。
唯一の無事故物件というのがいわゆる文化住宅の一室。
豪邸に住む富良野がこんな部屋に住めるのかどうかは疑問だけど、
世間はとにかく「誰も死んだことのない部屋」に住みたいと願うのですね。
バカバカしいと思いつつも、唯一の無事故物件の価値が高騰するという設定は面白い。
オチには意外な切なさもあり、ホントに意外。
鳴瀬聖人監督って知らなかったけど、『温泉しかばね芸者』(2018)も気になります。
 
《ぬ》
『ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい』
2022年の日本作品。TSUTAYA DISCASにてDVDレンタル。
これが長編商業デビュー作となる金子由里奈監督。脚本は実兄の金子鈴幸と共同で執筆。
父親の金子修介も映画監督という映画一家なんですね。
原作は大前粟生の同名小説で、立命館大学出身の金子監督が京都の大学を舞台に撮る。
七森剛志(細田佳央太)は入学した大学で麦戸美海子(駒井蓮)と出会って意気投合。
一緒に“ぬいぐるみサークル”なるものを見学に行く。
ぬいぐるみを作るサークルだとばかり思っていたが、実はぬいぐるみとしゃべるサークル。
誰かに聞いてほしい悩みや思いをぬいぐるみに向かってしゃべるのだ。
見学に来たものの、気味悪がってドン引きする新入生も多いらしいが、麦戸は肯定的。
かつて拾ったぬいぐるみを大切にしている七森も当然のごとく入部する。
ひとりでやってきた同じく新入生の白城ゆい(新谷ゆづみ)も入部を決めて……。
“ぬいサー”のルールは、それぞれがぬいぐるみに話している内容に聞き耳を立てないこと。
「男らしい」とか「女らしい」とか、恋愛感情についてもよくわからずにいた七森は、
高校時代に親しかった女性からコクられて振ってしまったことがトラウマ。
そんなことをつぶやいても咎められず、変だとも言われず、“ぬいサー”にいれば安心。
一方の白木はぬいぐるみにしゃべらない。自分がぬいぐるみになると思っています。
ゆるゆると進む「いい話」ではあるけれど、社会に出たときの彼らは心配。
 
《ね》
『ネルマ・コダマ:闇マネーの女王』(原題:Nelma Kodama: The Queen of Dirty Money)
2024年のブラジル作品。Netflixにて配信。
ブラジル人女性のネルマ・コダマと聞いたって私は初耳ですが、
南米史上最大の汚職事件と言われる“オペレーション・カー・ウォッシュ(洗車場作戦)”に関与したとされる闇ドル業者らしい。
闇ドル業者と聞いたところでまたまた私には何のことやらさっぱりわからないけれど、つまりは資金洗浄を請け負う人のようです。
歯科医の資格を持つネルマは経済的自由がほしい。
精肉業者の両親の会社で財務関係の仕事を受け持つうち、ドルを売れば儲かると知る。
社会的地位の高い人と知り合う機会に恵まれ、他人のお金を預かっては自分も儲けるように。
無類の靴好きで、1年間毎日ちがう靴を履けるほどの数を持っている。
また、車も7台所持していて日替わりで乗れるとドヤ顔。
宝石を身に着けない女性は裸でいるのも同然だと笑います。はい、そーですか。(^^;
驚くべきはこの事件で、議員やら判事やら、信じられない数の「偉い人」が関わっていて、金まみれ。
お金があるに越したことはないけれど、この人たち、じゅうぶんにお金持ちでしょうに。
ネルマが悪者にされたって全然同情はしませんが、男どもに上手く利用された感は否めません。
 
《の》
『NOCEBO/ノセボ』(原題:Nosebo)
2022年のアイルランド/イギリス/フィリピン/アメリカ作品。TSUYAYA DISCASにてレンタル。
子供服のデザイナーとして活躍するクリスティーン(エヴァ・グリーン)は、
ある日、ダニだらけの不潔で不気味きわまりない犬に襲いかかられる幻影を見る。
以降、手に震えが出るなど体調不良に見舞われ、キャリアは一旦ストップ。
そんなとき、フィリピン人の女性ダイアナ(チャイ・フォナシエ)が住み込みの家政婦としてやってくる。
雇った覚えはなかったが、物忘れの傾向もあるクリスティーンは、自分がいつのまにか約束したのだろうと納得。
夫のフェリックス(マーク・ストロング)は露骨に嫌な顔をし、一人娘のボブス(ビリー・ガズドン)もダイアナを無視。
しかし、超自然的な能力を持っているというダイアナから民間療法を施されると、クリスティーンの体調が明らかによくなる。
クリスティーンがダイアナに信頼を寄せる一方でフェリックスは不信感を募らせ、
学校では嫌われ者、両親にも不満を持つボブスはダイアナに心を開きはじめて……。
ダイアナの復讐劇であろうことは中盤に予測できますが、これがまた凄絶。
クリスティーンはかつてフィリピンの工場に子供服の縫製を注文していました。
安い給料で大量に頼むせいで、従業員たちは激務を強いられたうえに、
現地の人を信用していないクリスティーンは工場に鍵をかけて物を持ち出せないようにする。
ダイアナにはボブスと同じ年頃の娘がいたけれど、預ける場所も金もないから工場に連れてきていて、火事に遭ったという。
炎に包まれた娘を助けることができず、クリスティーンを激しく恨みます。
恨まれている当人は自分のせいで異国の縫製工場に災難が起きたことを覚えてもいない。
監督は『ビバリウム』(2019)のロルカン・フィネガン。不穏な空気を描くのが上手い。
虫が首にめり込むなど、相当不快なシーンがありますのでご注意を。

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