夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

今年観た映画50音順〈か行〉

2024年12月27日 | 映画(か行)
《か》
『神回』
2023年の日本作品。TSUTAYA DISCASにてDVDレンタル。
東映ビデオによる新プロジェクト“TOEI VIDEO NEW CINEMA FACTORY”の第1回作品。
夏休みのさなかもさなか、お盆時でほぼ誰も来ていない高校。
文化祭の実行委員になった沖芝樹(いつき)(青木紬)と加藤恵那(坂ノ上茜)は、打ち合わせのため、教室で13時に待ち合わせる。
ところが、恵那が話している途中に樹が失神。目覚めるとまた13時に戻っている。
どうやら樹だけがタイムループに陥ったらしい。
このタイムループから抜け出そうと、さまざまな方法を試みる樹。
いつも同じ位置で窓を見上げている用務員が何か知っているのだろうと捕まえてみたり、
樹同様に校内を全速力で走っていた生徒会女子を問い詰めてみたり。
しかしいずれもほかにわけがあり、樹の勘違い。
死ねばタイムループから抜け出せるかと、校舎から飛び降りても失敗に終わる。
やがてヤケになった樹は、恵那を襲うことも考えるようになる。
どうにも状況は変わらないなか、自分たちが少しずつ歳を取りはじめたことに気づき……。
冒頭で今際のきわにいる老人(森一)の姿が映ることから、これが老いた樹であり、
終盤になると、タイムループの映像すべてが彼の妄想であることがわかります。
浮いた噂ひとつもなく、生涯独身でおそらく生涯童貞のままだった樹が願っていたのは、
初恋の恵那と一緒に文化祭の実行委員になって、ずっとふたりきり、教室で過ごすこと。
ちょっとキモかったりもするし、果たして幸せだったのか問いたくなります。
そもそもこのタイムループの中に「神回」と呼べるものがないやんか。
 
《き》
『貴公子』(英題:The Childe)
2023年の韓国作品。TSUTAYA DISCASにてDVDレンタル。
『悪魔を見た』(2010)の脚本家で、監督第2作の『新しき世界』(2013)が評価されたパク・フンジョン。
“The Witch/魔女”シリーズも同監督によるもの。面白いじゃあないか。
マルコ(カン・テジュ)はフィリピン人の母親と韓国人の父親を持つハーフ。
しかし父親は誰かわからず、マルコはフィリピンで病気の母親の世話をしている。
地下格闘技のボクサーとして日銭を稼ぐも生活が向上することはなく、
容態が思わしくない母親のために父親を見つけて治療費を受け取りたい。
マルコがなけなしの金を払って父親の行方を突き止めようとしたところ、
驚くべきことに向こうからマルコを見つけにやってくる。
父親が会いたがっているからすぐに韓国に来るようにと言われたときには
すでにパスポートなど旅に必要なものがマルコに用意されていた。
半信半疑で飛行機に乗り込むと、見知らぬ謎の男(キム・ソンホ)が親しげに接してくる。
韓国に着くと、貴公子然としたその男に追いかけ回されるばかりか、
弁護士を名乗る女性ユンジュ(コ・アラ)に助けを求めると彼女からも命を狙われる。
徐々にわかったことは、マルコの父親はとんでもない金持ちで現在危篤状態。
マルコの異母兄ハン(キム・ガンウ)とハンの異母妹ガヨン(ヨン・ラエル)との間で相続を巡る争いが起きており、
ガヨンがすべて継ぐという遺書を書き直させるまで父親に死なれては困るハンは、
危篤の父親にマルコの心臓を移植させるためにマルコを連れてきたのだ。
麻酔を打たれて手術台に上げられたマルコを助けにきたのは敵だと思っていたあの貴公子で……。
キム・ソンホが超絶強いうえに可愛いイケメンで見惚れました。
しかも彼はまだ死なないらしく、続編を望みたい。
 
《く》
『クロス・ミッション』(英題:Mission Cross)
2024年の韓国作品。Netflixにて配信。
アジア2位を自負する凄腕の女刑事カン・ミソン(ヨム・ジョンア)。
幼稚園の送迎バスの運転手を務める夫パク・ガンム(ファン・ジョンミン)は、
多忙な妻に代わって家事のいっさいを執りおこなう主夫だが、
実は以前は特殊部隊要員だったことをミソンには隠している。
ある日、かつての同僚チャン・ヒジュ(チョン・ヘジン)から捜査への協力を求められ、
彼女の夫で同じく特殊部隊要員のキム・ジュンサン(キム・ジュホン)を救出することに。
てっきりガンムが浮気していると勘違いしたミソンは、上司や同僚の手を借りて追跡。
その過程でヒジュが国家的犯罪の黒幕であることが判明し、ミソンはそのアジトへと向かったところ、ヒジュに捕まってしまう。
一方、騙されていることに気づいたガンムもミソンの危機を知って現地へ。
ガンムとミソンはヒジュたち一味を一網打尽にするべく、奮闘するのだが……。
コメディ映画としてもアクション映画としてもいささか半端な気がするものの、
なにしろファン・ジョンミンですから、彼がいるだけで楽しい。
彼がエプロン着けて家事をする姿は今までなかなかなかったような。
ミソンのチームを見ていると、“犯罪都市”のような仲の良さで嬉しくなりました。
普通に面白い。
 
《け》
『結婚解消』(原題:Rozwondnicy)
2024年のポーランド作品。Netflixにて配信。
20歳そこそこのときに勢いで結婚したヤチェクとマルゴシアはとっとと離婚して20年が経過。
マルゴシアには再婚した夫と多感な年頃の娘アラがいる。
ヤチェクも恋人と婚約中なのだが、彼女が教会での結婚式を望んでいるらしい。
カトリックには「離婚」という概念がないため、民事で離婚していてもまだ夫婦のまま。
新たに挙式するためには、ヤチェクとマルゴシアがもう夫婦ではないことを証明しなければならない。
婚姻を無効にする手続きはすんなり終わるかと思いきや、
教会としては無効にはしたくないから、ふたりの関係を修復するために神父がああだこうだと言ってきて……。
カトリックの結婚観についてよく知らなかったものですから、目からウロコ。
わりと容易に婚姻無効を認めてくれる神父もいれば、頑として認めようとしない神父もいるそうで。
ヤチェクとマルゴシアを担当することになったのはもちろん後者。
ふたりが会うたびに今の伴侶が嫉妬して、反抗期のアラもマルゴシアに対して冷ややかな態度を取ります。
アラが通う学校で音楽教師を務めるマルゴシア。管弦楽団の演奏がとても楽しげでよかった。
鉄道の開業式をするために一旦その駅を廃駅にするというのにも驚いて笑ってしまった。
 
《こ》
『恋人はアンバー』(原題:Dating Amber)
2020年のアイルランド/イギリス/アメリカ/ベルギー作品。TSUTAYA DISCASにてDVDレンタル。
アイルランドの片田舎に暮らす高校生エディは、軍人の父親の期待に応えるべく、
入隊試験に合格するよう毎日訓練を欠かさずにいるが、なかなかキツイ。
同級生らの興味は異性とつきあうことしかなく、童貞のエディはからかわれてばかり。
そんなある日、レズビアンだという噂の同級生アンバーがエディに接近。
アンバーはエディに「アンタはゲイだ」と言い、お互いゲイであることを隠すために、
高校を卒業するまで恋人のふりをしようと提案してくる。
自分はゲイではないと言い張るエディだったが、ほかの同級生の手前、恋人がいるほうがイケている。
こうしてふたりはみんなの前でイチャついて見せつつ、不思議な友情を育んで行くのだが……。
保守的で閉鎖的な田舎町では、どんな話もすぐに広まる。
カップルの関係がどこまで進んでいるかなんてことはもちろん、同性愛者であることを教会で告解したら、それも広まるとは。
開き直るアンバーに対して、絶対に認めないエディ。
でも、母親だけはそんな息子に気づいているんですよね。
何も言わずに抱きしめるシーンが好きでした。
息子のほうは、母親に気づかれていることに気づいていないのですけれど。(^^;
エディ役のフィオン・オシェイの顔がちょっと苦手ではあるものの、佳作。

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今年観た映画50音順〈あ行〉

2024年12月27日 | 映画(あ行)
23回目となりました。恒例におつきあいください。
 
その日以前に劇場で観た作品についてはすべてUP済みだから、ここに挙げるのはそれ以外のDVDあるいは配信で観たものばかり。
好きだったとか嫌いだったとかは関係なし。
どれも今年レンタルや配信が開始されて視聴可能となった作品です。ネタバレ御免。
 
《あ》
『アリバイ・ドット・コム2 ウェディング・ミッション』(原題:Alibi.com 2)
2023年のフランス作品。TSUTAYA DISCASにてDVDレンタル。
開始後数分を観てから、見逃していた前作『アリバイ・ドット・コム カンヌの不倫旅行がヒャッハー!な大騒動になった件』(2017)を鑑賞してからのほうがよさそうだと思い、
まずそちらをAmazonプライムビデオを観たのちに本作を。
アリバイ工作を請け負う会社“アリバイ・ドット・コム”は迅速綿密に立てた計画のもと、
常に依頼人の要望に応えてアリバイ工作を成功させてきたが、
社長のグレッグは前作で嘘が大嫌いな女性フローと運命的な出会いを果たし、
もう嘘はつかないと決めて“アリバイ・ドット・コム”を廃業する。
本作ではグレッグとフローの結婚が決まり、挙式に向けて話が進む。
しかし、両家の顔合わせをする段になり、グレッグは大弱り。
というのも、グレッグの両親はすでに離婚しているが、父親は詐欺師、母親はポルノ女優
こんな親をフローの親と会わせたら、間違いなく破談になるだろう。
そこでグレッグはかつての仲間オーギュスタンとメディと共に“アリバイ・ドット・コム”を再結成。
オーディションで雇った偽の両親を呼び、この局面を乗り切ろうとするのだが……。
笑えないフランスのコメディ作品も多いなか、監督と主演を務めるフィリップ・ラショーはかなり笑わせてくれる人。
期待値が高すぎたせいもあって、それほど大笑いというわけではなかったけれど、
この馬鹿馬鹿しさは憎めません。続編も作るんだろうなぁ。
 
《い》
『イン・ハー・プレイス』(原題:El lugar de la Otra)
2024年のチリ作品。Netflixにて配信。
1955年にサンティアゴで実際に起きた事件をモチーフにした作品。
著名な女流作家マリア・カロリーナ・ギールがホテルで恋人を射殺。
この事件を担当することになった判事の助手を務めるのは、ごく控えめな女性メルセデス。
自宅で写真館を営む夫の良き妻であり良き母親であるが、
マリアの自宅を調査する仕事に就くうち、その人柄に興味を持つとともに、
社会における女性の扱われ方に疑問を抱くようになり……。
マリアが恋人を殺したホテル・クリヨンがそもそも女人禁制ゆえ、
判事について行って現場を見ようにも、メルセデスにはホテルに入ることが許されません。
世の男性たちはもちろんのこと、夫も息子たちもそして義父母たちも、
女性の扱いについておかしいなんてことはまったく思っていない。
プレゼントひとつにしても、男性陣には彼らのほしいものが渡されるのに、
メルセデスには「壊れていた掃除機を直したよ。嬉しいだろ」って。
会ってもいないのに、マリアとメルセデスの間に生まれる絆。
今のチリってどんなふうですか。まだまだ家父長社会のままなのでは。
 
《う》
『うさぎのおやこ』
2023年の日本作品。TSUTAYA DISCASにてDVDレンタル。
地味に見えてその活躍は決して地味ではない上西雄大監督。
本作も2023年度のミラノ国際映画祭で外国語長編映画最優秀作品賞と主演女優賞をW受賞。
軽度の知的障害を持つ来栖玲(清水裕芽)は22歳だが、小柄なこともあって見た目はまるで子ども。
父親を亡くしてからは母親の梨加(徳竹未夏)も玲に手を焼き、半ばネグレクト状態。
玲の唯一の理解者だった精神科医の急死により、玲は孤立している。
そんなとき、後任となった精神科医の恵比寿(上西雄大)が訪れる。
最初は恵比寿に対して拒絶の意思を見せる玲だったが、次第に心を開きはじめる。
梨加から働けと言われた玲は仕事を探しに出ると、
そんな仕事とは知らずにデリヘルのバイトに応募し、契約書にサインしてしまい……。
玲を気にかける福祉課の職員役を古川藍が演じ、役者はほぼ上西組。
上西監督の作品は常に社会的弱者が主人公で、観ていてつらくなるものが多いけど、
本作は上映時間が90分を切る短め作品ということもあり、普段よりおとなしめで穏やか。
玲を助けるデリヘル嬢かな役の華村あすかが可愛かった。元グラドルなんですね。
 
《え》
『エレベーター・ゲーム』(原題:Elevator Game)
2023年のアメリカ作品。TSUTAYA DISCASにてDVDレンタル。
都市伝説を検証する番組を配信する若者のチーム。
学生時代に小遣い稼ぎのつもりで始めたことだが、今はスポンサーもついている。
そのスポンサーから逃げられそうになり、急いでネタを見つけることに。
番組のファンだというライアンが手伝いたいとやってきて、“エレベーター・ゲーム”を検証してはどうかと言う。
過去にエレベーターに乗ったきり行方不明の女性がいるというビルに侵入したチームは、
都市伝説“エレベーター・ゲーム”で噂される手順を踏んで検証することに。
まずエレベーターに乗り、4F→2F→6F→2F→10F→5Fの順で移動する。
5Fに着くと女が乗ってくるはずだが、見ても話しかけても駄目。目を瞑っていること。
扉が閉じたら1Fのボタンを押す。ゲームに成功していれば1Fに降りられるが、
もしも5Fで目を開けて女を見てしまった場合はエレベーターは上昇し、赤い異世界へ。
もしくは5Fの女に無残に殺されるらしく……。
ライアンが実は行方不明になった女性の兄で、妹のことを調べるためにチームへ来ました。
妹がチームのゲス男クリスに唆されてエレベーター・ゲームに挑戦した末、
それっきり行方がわからなくなったことを皆がが知ります。
5Fの女の正体は、かつてエレベーターの昇降路に閉じ込められて箱に粉砕された気の毒な女性。
いろいろと面白い要素はあって、それなりに怖かったものの、
手順を守っているのに結局異世界へ連れて行かれるし、ストーリーとして破綻気味。
最後まで生き残ると思われた常識的でいちばん信頼できそうなクロエも殺されて、バッドエンド。
とりあえず知らないビルのエレベーターに乗るのは怖くなるかも。
 
《お》
『オン・ザ・フロント・ライン 極限戦線』(原題:Myrnyi-21)
2023年のウクライナ作品。TSUTAYA DISCASにてDVDレンタル。
“未体験ゾーンの映画たち 2024”にて上映。
2014年、ウクライナ南東部に位置するドンバス地方。
武装蜂起した親ロシア派とウクライナ政府軍の戦闘が繰り広げられている。
国境の防衛と人質の奪還を誓う政府軍の兵士たちだったが、親ロシア派が装甲車を用意して襲ってくる日も間近で……。
兵士たちのみならず、兵士の家族や恋人などの目線でも描かれています。
ボンクラ息子だと思っていたら、最期は仲間のために命を張ったことを知る父親とか。
外は凄まじい戦地と化していても子どもは生まれる。
『マリウポリの20日間』のように病院まで砲撃を受けることがないようにと祈るばかり。
ただ、深刻な話でありながら、娯楽色が強すぎる。
「本物の迫力&極限の緊迫感を体験する、注目の戦争アクション大作!!」と謳われても、
本物のロシアvsウクライナに思いを馳せることはとてもできません。

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