夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

今年観た映画50音順〈た行〉

2024年12月28日 | 映画(た行)
《た》
『ターゲット 出品者は殺人鬼』(英題:Don't Buy the Seller)
2023年の韓国作品。TSUTAYA DISCASにてDVDレンタル。
インテリアデザイン会社に勤める女性スヒョン(シン・ヘソン)は引っ越したばかり。
この機会に洗濯機を買い換えることにするが、なにしろ今はお金がない。
できるだけ安く入手したいとフリマアプリで物色し、手頃な値段の洗濯機を見つけてポチる。
売主は海外転勤になったため家具や電化製品を処分しつつあるらしい。
ところが届いた洗濯機は不良品だったものだから、スヒョンは憤慨。
苦情を言おうにも売主のアカウントが見つからなくてイライラ。
執念で追跡した結果、同じ文言の出品者にたどり着き、「この人は詐欺師です。買っては駄目」と書き込む。
スッキリした気分になっていたのに、その直後に出品者からメッセージが届く。
負けるものかと応酬すると、身のまわりで不気味なことが起こりはじめ……。
手始めに、注文していない料理が次々に届きます。
留守中に誰かが侵入した気配があったりもして、めちゃめちゃ怖い。
相談に行っても警察はなかなか取り合ってくれないけれど、
そもそもスヒョンが明らかに変な奴を煽るような真似をしたら駄目だよぉ。
やっと動いてくれた刑事(キム・ソンギュン)と出品者の部屋を見に行ってみたら、
キムチ用の冷蔵庫からその出品者の死体が出てきて絶叫。
出品者になりすました連続殺人鬼を相手にしていたわけで。
結局、親身になってくれた刑事はふたりとも死んじゃう悲しい結末。
フリマアプリで買い物するときは用心しなきゃですね。
 
《ち》
『違う惑星の変な恋人』
2023年の日本作品。TSUTAYA DISCASにてDVDレンタル。
美容室に勤めるむっちゃん(璃子)は、恋人もいなければ友だちもゼロだったが、
先輩のグリコ(筧美和子)と音楽の趣味が同じとわかって意気投合。
グリコがつきまとわれているという元カレ・モーくん(綱啓永)ともなんとなく親しくなる。
ある日、グリコから紹介された音楽プロデューサー・ベンジー(中島歩)にひと目惚れ。
恋愛経験のないむっちゃんは、アプローチの仕方についてモーくんに相談するのだが……。
オフビートな感じが楽しくて、しばしば笑ってしまいました。
モテるベンジーはシンガーソングライター・ナカヤマシューコ(みらん)とそれなりの関係。
けれどベンジーは実はグリコのことが好きで、
モーくんをストーカーのように言うグリコは実はまだモーくんのことが好き。
むっちゃんの相談に乗っているうちにモーくんはむっちゃんのことを好きになり、
どうしようもない四角関係なんですが、それでドロドロになることはありません。
スポーツバーサッカーの観戦をしながら4人で建設的に見えなくもない話し合いをするラストも笑えます。
 
《つ》
『罪深き少年たち』(英題:The Boys)
2022年の韓国作品。TSUTAYA DISCASにてDVDレンタル。
『権力に告ぐ』(2019)のチョン・ジヨン監督が“サムレナラスーパー事件”を基にして。
1999年のある夜、完州郡参礼(サムレ)の小さなスーパーに3人組の強盗が押し入る。
就寝中の女性ユン・ミスク(チン・ギョン)とまだ幼い娘、ミスクの70代の母親が縛られ、
3人が金品を物色する間に、鼻と口をふさがれた母親は死んでしまう。
人を殺すつもりはなかった3人組は狼狽してすぐさま逃走する。
1週間も経たぬうちに逮捕されたのは近所に住む少年3人で、うち1人は知的障害あり。
3人は犯行を自供して収監され、事件は終わったと誰もが疑わなかったが、
ここに異動してきたばかりの刑事ファン・ジュンチョル(ソル・ギョング)は、
真犯人を知っていると連絡してきた青年に会い、冤罪を確信する。
しかし、ジュンチョルとその部下パク(ホ・ソンテ)が再捜査に乗り出すと、
事件を解決したとして一気に昇進したチェ・ウソン(ユ・ジュンサン)や
担当検事だったオ・ジェヒョン(チョ・ジヌン)からさまざまな嫌がらせを受けるように。
逮捕された少年3人は拷問に怯えて自分たちがやったと言い張る。
結果、冤罪を証明することは叶わず、ジュンチョルも日陰に追いやられたまま15年が経過。
あのときの少年たちは出所してそれぞれ勤めているものの、元殺人犯のレッテルを貼られたまま。
定年間際となり、すっかりおとなしく暮らしていたジュンチョルだったが、
自分の証言のせいで少年たちの未来を潰したと悔やむミスクが弁護士(ハン・スヨン)を伴って来訪、再審請求すると言い……。
酷い事件です。警察組織ってこんなに腐っているんですかね。ここまでやるか。
書類や証拠を捏造して冤罪を生み出した刑事や検事は誰も処罰を受けていないとのこと。
ジュンチョルの妻役ヨム・ヘランと娘役のチョン・イェジンが最高。
こんな奥さんと娘がいたら、がんばれるよねぇ、お父さん。
 
《て》
『ティアーズ・オブ・ブラッド』(原題:Entre la Vida y la Muerte)
2022年のベルギー/フランス/スペイン作品。TSUTAYA DISCASにてDVDレンタル。
監督のジョルダーノ・ジェデルリーニは、ラジ・リ監督の『レ・ミゼラブル』(2019)の脚本家。
ブリュッセル地下鉄の運転士を務めるレオ。
ある日、レオが運転する車両に飛び込んで自殺を図ったのは、ほかならぬ彼の息子ユーゴだった。
間一髪、緊急停車してユーゴを轢かずに済んだものの、
どこで撃たれたのかユーゴには銃創があり、手術中に死んでしまう。
その後、ユーゴが強盗事件に関わっていたことがわかる。
ユーゴが属する犯人グループに潜入して捜査中だった刑事ラルフが行方不明のままで、
ラルフの同僚で恋人でもあるヴィルジニーはレオが何か隠していると直感。
どうやら強奪した金をユーゴが持ち去ったまま死んだらしく、
逃亡中の犯人2人がレオを襲い、金の隠し場所を突き止めようとする。
犯人と警察の両方から狙われる身となったレオだったが……。
ほとんど期待せずに観たらかなり面白いノワールアクションでした。
レオはもともとスペイン人で、訳あって政府に匿われ、改名までしてベルギーに来ています。
ヴィルジニーはレオのことをテロリストか何かだと推測するけれど、実は警察官。
悲しい過去があり、そのせいでユーゴとも離ればなれでいることを余儀なくされました。
ユーゴを撃った犯人を追う執念が実る最後には心が震える。
レオを演じるのはアントニオ・デ・ラ・トレ。ヴィルジニーの父親役で名優オリヴィエ・グルメも出演しています。
 
《と》
『トゥ・クール・トゥ・キル 殺せない殺し屋』(原題:個殺手不太冷静)
2022年の中国作品。TSUTAYA DISCASにてDVDレンタル。
三谷幸喜監督の『ザ・マジックアワー』(2008)を中国でリメイクしたら大ヒット。
ギャングのボス・ハーベイは映画製作に出資を繰り返しているが、監督のミラーが撮る映画は赤字続き。
ミラーの姉は大物女優のミランで、ハーベイはミランが自分と結婚するなら借金を帳消しにしてもいいと言う。
しかしミランは絶対にハーベイと結婚したくない。
あるとき、有名な殺し屋カールがミランのファンであると聞いたハーベイは、カールを紹介するようミラーに強いる。
本当はカールのことなんて知らないし、ミランのファンであろうはずもないのだが、
誰もカールの顔を知らないのをいいことに、ミランとミラーは妙案を思いつく。
研究熱心だけど演技が大げさすぎて万年エキストラの役者ウェイを呼ぶと、
これは映画だと言い聞かせ、殺し屋カールの役を演じさせることに。
初の主演映画だと喜びはりきるウェイはカールになりきり、ハーベイとも血の杯を交わして……。
ミラン役のマー・リーは今年『抓娃娃(じゅあわわ) 後継者養成計画』でも見ましたが、オーラが凄い。
三谷作品は中国でリメイクするのにふさわしいのではないかと思いました。
というのか、三谷監督が撮るよりもむしろこっちのほうが面白い。笑ったな~。

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今年観た映画50音順〈さ行〉

2024年12月28日 | 映画(さ行)
《さ》
『最悪な子どもたち』(原題:Les Pires)
2022年のフランス作品。TSUTAYA DISCASにてDVDレンタル。
リーズ・アコカとロマーヌ・ゲレの監督コンビは、これが長編デビュー作にして、
第75回カンヌ国際映画祭〈ある視点〉部門のグランプリを受賞したそうです。
フランス北部、治安の悪さで有名なピカソ地区で映画を撮ることになり、
監督のガブリエルは現地オーディションで選出した問題児たちに演技をさせる。
物語に登場するのは十代のカップル・ジェシーとリリ、そしてリリの弟ライアン。
オーディションを受けるも選ばれなかった子どもたちや、
選ばれたのに台詞もない端役であることを不満に思う子どももいて、
特にもともと「ヤリマン」と言われていたリリは嫌みを言われてばかりで……。
ドキュメンタリーだと思って観はじめたらモキュメンタリーでした。
キャストの子どもたちは実際にオーディションで選ばれた演技未経験者。
映画の中で「演技をする」という演技をする子どもたちが凄い。
この少年少女たちが今後も映画の世界で生きていくのかどうか、楽しみでありながらも無事を祈らずにはいられません。
 
《し》
『侵入者たちの晩餐』
2024年の日本作品。Netflixにて配信。
新春に放送されたTVドラマですが、映画として紹介することをお許しください。
家事代行サービス会社“スレーヌ”に清掃スタッフとして勤める田中亜希子(菊地凛子)は、
たまに顧客の家で一緒になる料理スタッフの小川恵(平岩紙)と親しくなる。
ある日の仕事帰りに2人で話し込むうち、スレーヌ社長の藤崎奈津美(白石麻衣)の話に。
グラビアアイドルの美人社長には脱税の噂があるらしく、
安い給料で働かされているのは納得が行かない、タンス預金を頂戴しに行こうと。
2人では心許ないと恵の友人でサスペンスドラマに詳しい江藤香奈恵(吉田羊)を誘い、
社長宅の合鍵を作ることに成功した3人は、社長のハワイ旅行中を狙って忍び込む。
ところが、タンス預金など見つからないばかりか、社長が慈善事業をおこなっていることが判明。
何も盗らずに一旦は退散した3人だったが、このままでは罪悪感が募る。
そこで亜希子の提案により、掃除をしに行こうと社長宅に戻る。
一見綺麗でありながら、サッシや排水溝、家具の裏に埃が溜まっている社長宅を磨き上げ、
冷蔵庫に積み上げられていた賞味期限間際のものも有効活用。
満足して引き上げようとしたところ、部屋の片隅に本物の空き巣・重松洋介(池松壮亮)が潜んでいるのを発見。
洋介を縛り上げていると、なんと社長が帰ってきて……。
ここにさらに登場するのが社長の元ファンだったコンシェルジュ・毛利貴弘(角田晃広)。
可笑しくてクスクス笑いが止まらない。キャストも完璧。
なんと面白い作品だったことか。バカリズムってやっぱり天才だと思いました。
 
《す》
『スペシャル・エージェント 特殊工作員』(英題:Special Agent)
2020年の韓国作品。TSUTAYA DISCASにてDVDレンタル。
日本では何の情報もないのでたぶん劇場未公開。
国家情報院のエージェント、パク・ウォンチョル(イ・ジェユン)は、北朝鮮での任務を終えたばかり。
これで自由の身となるはずが、新たな任務のためにもう一度北朝鮮に戻れと言われる。
その任務とは、韓国人科学者“VIP”の暗殺。
VIPは生物兵器を開発して北朝鮮に拉致されており、そのVIPを消せと。
命令ではなく申し出だと言われて断ろうとすると、
ウォンチョルの一人娘(チェ・ジス)が問題を起こして鑑別所に収監されていると言う。
もしもウォンチョルがこの申し出を受け入れるなら、
娘が前科者にならないようにし、すぐに鑑別所から出所させると。
このように脅されては「申し出」を飲まざるを得ず、北朝鮮に入るウォンチョル。
VIPを見つけて殺そうとしたところ、VIPも娘を人質に取られていると知り……。
この手の作品はたいていスリル満点で面白いものですけれど、かなり地味。
ひたすら国境付近の地雷原で隠れて逃げて殺してが繰り返されるだけ。
アクション自体はキレがあっていいものの、退屈です。
やっとラスボスを倒して一件落着のいい話のはずが、エンドロールでラスボス復活!?
これで続編を作ろうとしているならツラすぎます。
 
《せ》
『世界が引き裂かれる時』(原題:Klondaik)
2022年のウクライナ/トルコ作品。TSUTAYA DISCASにてDVDレンタル。
同年の東京国際映画祭での上映時は、原題のまま『クロンダイク』という邦題でした。
2014年に実際に起きたマレーシア航空17便撃墜事件を背景にした作品で、
メガホンを取るのはウクライナ出身の女性監督マリナ・エル・ゴルバチ。
ロシアとの国境近くにあるウクライナ・ドネツク州の小さな村。
出産を控えた妻イルカの体調を心配する夫トリクが病院へ連れて行こうとしたとき、家に砲弾が撃ち込まれて壁がぶち抜かれる。
怪我などはなかったものの、修復に取りかからざるを得なくなってしまう。
この村では親ロシア派と反ロシア派が激しく対立しており、誰がどちらなのか疑心暗鬼。
民間の航空機が撃墜される事件まで起こり、気が気ではなく……。
親族同士でも対立しているものだから、信頼関係が成り立ちません。
イルカの弟ヤリクは親ウクライナ派で、トリクは実は親ロシア派だということがわかる。
夫と弟が絶えず言い争うようになり、イルカはイライラ。
壁のない家でイルカがソファでひとり出産するラストシーンが衝撃的。
 
《そ》
『ソウェト・ラブストーリー 愛しの花嫁を探して』(原題:A Soweto Love Story)
2024年の南アフリカ作品。Netflixにて配信。
年末、教会での恒例行事を企画した女性ボンゲキレ。
彼女にはいい歳をした息子が3人いるが、揃いも揃って独身で嫁の来てがない。
行事を共同で仕切る女性ブリジットとは親しいものの、オイシイとこ取りをする彼女には時折腹が立つ。
さらにはブリジットの娘が医者と結婚したと得意気に話すから、内心イライラ。
ブリジットに張り合うボンゲキレは、次男が今晩恋人にプロポーズすることをバラしたばかりか、その店にみんなを招待。
ところがそれが見事に失敗してボンゲキレは悲嘆する。
息子たちをなんとか結婚させようと、最初に結婚した息子に家を譲るとボンゲキレは宣言する。
誰も結婚しないならば家は売りに出すと言われ、息子たちはとにかく一番に結婚して家をゲットしようとするのだが……。
長男メンジは料理人でレストランオーナー。母親が家を売れば、自分も店を手放すはめになります。
風来坊のように現れた女性シェフのディナに相談すると、見合い相手を次々に連れてきてくれる。
次男サンディレはかつてはヒット曲もあったミュージシャン。プロポーズ相手のセンテとよりを戻したい。
三男のスカイは服飾デザイナーでゲイらしい。カミングアウトせずにモデルでレズビアンのリンクスと偽装結婚を企てます。
最終的にはメンジはディナと、サンディレはセンテとくっつき、スカイはゲイではなくてブリジットの娘レモハンとデキていたというオチ。
そもそも嫁探しというのが今の時代には古いように思うけど、国によるのでしょうね。ハッピーエンドだったから良しとしたい。
メンジの店の厨房を見るのがいちばん楽しい程度でしたが、私には何語かわからん公用語と英語の使い分けが面白かった。

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