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『アシスタント』

2023年06月28日 | 映画(あ行)
『アシスタント』(原題:The Assistant)
監督:キティ・グリーン
出演:ジュリア・ガーナー,マシュー・マクファディン,マッケンジー・リー,
   クリスティン・フロセス,ジョン・オルシーニ,ノア・ロビンズ他
声の出演:ジェイ・O・サンダース
 
ひと月ほど前から喉に異物感があり、2週間前に通りすがりの耳鼻咽喉科へ。
診たところ異常なしと言われてうがい薬と漢方薬を処方されました。
しかし一向に状態変わらず。痛みも声のかすれ等もないんですが、異物感のみある。
飲食にも車内のひとりカラオケにも差し障りがないから(笑)放置していましたが、
やっぱり気になるので時間休を取って別の耳鼻咽喉科へ行くことに。
 
初診でもWeb予約できる医院なのですが、時間帯ではなくて先着順の順番の予約。
しかもとても丁寧な女医との噂だからきっと時間がかかる。
朝イチで午後診察の予約を取ろうとしたら、15時からの1番になってしまった。
1番だと時間の押しようもなく、内視鏡検査も異常なし、様子見との診断で終了。
このまま帰るのももったいないから、シネ・リーブル梅田へと車を走らせる。
 
ドキュメンタリー作家のキティ・グリーンが初監督に挑んだ作品。
フィクションではあるけれど、どう見てもモデルはハーヴェイ・ワインスタイン
娯楽大作好きの人には鑑賞をお勧めしませんが、非常に面白かった。
主演のジュリア・ガーナーは私は初めて知る女優。素晴らしい。
 
名門大学を卒業して、最大手の映画プロダクションに就職して5週間が経つジェーン。
自身もプロデューサーを目指す彼女は、会長のアシスタントを務めている。
誰よりも早く出社して最後まで残り、休日などない。
仕事の内容も理不尽そのものだが、仕事を辞めたくないから受け入れるしかない。
 
そんなある日、アイダホ出身の若い美女シエナがやってくる。
シエナは会議の席に給仕係として居合わせた折に、会長から就職を世話すると言われたらしい。
ジェーンの同僚となったシエナだが、会長は彼女にホテルの一室を用意。
どうにもおかしいと感じたジェーンは、意を決して人事部を訪ねるのだが……。
 
ジェーンは新人アシスタントと思えないほどてきぱきと仕事をこなします。
しかしその内容は、こんなことまで彼女ひとりにさせるのかと思うほど。
会長のスケジュール調整はもちろんのこと、部屋の掃除、備品の発注と受け取り。
会長のことのみならず、同僚男性のランチの注文も。
ランチにターキーサンドイッチを頼んだのにこれはチキンじゃないかと文句まで言われる。
共用の給湯室では、他部署の社員が使ったコップを当たり前のように置いていき、
そのままにしておけばいいものを、ジェーンは洗って棚にしまう。
 
会長の妻から電話がかかると、取ろうとせずにジェーンに押しつける同僚。
奥さんは「クレジットカードを夫に止められた。なんとかしろ」とか、
「夫は今どこにいるのか教えろ」とかヒステリックにわめき立て、ジェーンの答えには納得しません。
「わからない」と答えると、そのあと必ず会長から電話があり、
ジェーンは無能呼ばわりされて、反省文をしたためたメールを送ることを強要されます。
そのときだけは同僚が「こう書けばいいよ」とアドバイスをくれる。みんな反省文のベテランだから。
 
せっかく覚悟を決めてセクハラ疑惑を訴えに行っても、キャリアを棒に振るなと諭されるだけ。
しかも、ハラスメントを相談できる場であるはずなのに、彼女が相談に行ったことは会長まで筒抜け。
 
会長の姿は一度も出てこないところが面白いですね。電話の声だけで威圧感じゅうぶん。
 
見て見ぬふりをしないと上に行けない映画業界。この業界に限らないものなのでしょうか。
明らかにおかしい。でも仕事は辞めたくない。夢を叶えたい。親に心配をかけたくない。
何も変わらないまま終わります。ジェーンの後ろ姿が寂しい。彼女が這い上がることを祈る。

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