『アダマン号に乗って』(原題:Sur l'Adamant)
監督:ニコラ・フィリベール
どう考えてもシネコン向きの作品ではないと思うのですが、
なぜか109シネマズ箕面で1日1回だけ朝イチに上映中。
GW中、実家に向かう前に寄りました。
ニコラ・フィリベール監督による日仏合作のドキュメンタリー作品です。
本作に登場する施設について、エンドロールまで何の説明もありません。
それはセーヌ川にずっと停泊したままの船で、動く様子はない。
集っているのが精神疾患を抱える人々だということがなんとなくわかります。
エンドロールのテロップによれば、これはデイケアセンター“アダマン”。
老若男女がまずは「今日は何をするか」について話し合います。
議長はスタッフのときもあれば、患者のときもある。
新しい顔を見つけた日は、「新入りを歓迎する」のが一番目。
絵を描いたり音楽を聴いたり文章を綴ったり。
描いた絵について自らの言葉で説明する時間も設けられています。
冒頭の歌とギターのセッションは胸に刺さる。
毎日短時間オープンするカフェの売り上げを計算すると、
いつもわずかに誤差が生じて、なかなかピッタリとは合いません。
どこでどう間違ったのかをみんなで考える。
十代で発症して40年近く病気と向き合っているフランソワの言葉が悲しい。
とても賢いお父さんから強いられたわけではないのに、
お父さんを喜ばせたいと思っているうちに精神を患ってしまった。
だけどお父さんが願っているのは息子の幸せだけ。
医師や看護師など話を聴いてくれる人の存在は必要だけど、
やっぱり薬は必要なんだ、薬のことを悪く言う人がいるとしても、
薬がなければ自分はこんなふうに普通に話はしていられないんだよと言います。
ダンスを教えることができたなら、私も相手も幸せなのと訴えますが、
運営上、患者に講師を任せることには慎重にならざるを得ません。
それぞれが自分が精神疾患を抱えていることはわかっている様子。
双子の娘の姿を描くオリヴィエだとか、明るい表情を見せたあとに、
ふと口を強く引き結んで寂しげな顔になることがあります。
無料で利用できる施設なのだそうです。
ここへの送迎は誰がどのようにしているんだろうと思ったりも。
実際に悪いところは何もない施設なのかどうかはわかりませんが、
この立地だけでもう素晴らしいものに思えます。