夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『A Film About Coffee ア・フィルム・アバウト・コーヒー』

2016年01月20日 | 映画(あ行)
『A Film About Coffee ア・フィルム・アバウト・コーヒー』(原題:A Film about Coffee)
監督:ブランドン・ローパー

シネ・リーブル梅田にて。

大のコーヒー党というわけではありませんが、
私の暮らしにコーヒーは欠かせないものです。
毎朝おなかをすっきりさせるためには、PCの前で飲むコーヒーが必須。
また、「風邪の目安にスターバックス。」と書いたのが2007年6月。
とにかく病気で仕事を休むのがもったいないから、風邪は気合いで治すタイプ。
あれから8年以上の間、寝込むほどの風邪はひいていません。
つまりコーヒーが飲めなくなるほどの風邪をひいたことはここ何年もなく、
365日毎日、コーヒーを数杯以上飲んでいることになります。

こんなにも私の生活に密着しているコーヒーなのに、
本作を観るまで「スペシャルティコーヒー」という言葉を知りませんでした。

スペシャルティコーヒーとは、簡単に言えば量より質にこだわったコーヒー。
生産者と販売者が中間業者を経由せずに契約する直接取引、
すなわちダイレクトトレードと呼ばれる方法で売買がおこなわれています。
コストはすべて開示され、良い原料を用いて、客の要望を満たす商品を開発。
生産者の想いを消費者に伝えたい、そんな趣旨があります。

サンフランシスコを拠点とする映像制作会社“Avocado & Coconuts”は
そんなスペシャルティコーヒーに注目し、本作を自主制作。
1杯のコーヒーが至福の時間をもたらしてくれるまでにどんな物語があるのか。
コーヒーに関わる人々の気持ちが伝わったのか、
こうして世界各国で上映されるに至ったようです。

サンフランシスコをはじめとする大都会のコーヒーショップ。
それとは対照的なルワンダやホンジュラスのコーヒー豆の生産地。
生産地の人々はまさに職人で、自分の手足の感触で発酵の度合いを確かめます。
たいへんな仕事も歌い踊りながらというところがめちゃくちゃイイ。
自分たちが育てた豆を使ったエスプレッソを飲んだことのなかった農民たちに
現地へ赴いたバリスタが心を込めてコーヒーを淹れるシーンも良かったです。

2013年に38年の歴史に幕を閉じた東京・南青山の“大坊珈琲店”。
オーナーの大坊さんが1杯のコーヒーを淹れる所作の美しいこと。
多くのバリスタがチャンピオンを競うコンクールの様子や、
コーヒーのカッピング(ワインでいうところのテイスティング)の光景も面白く、
ますますコーヒーが好きになりそう。

コーヒーだって生きている。

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『ピンクとグレー』

2016年01月18日 | 映画(は行)
『ピンクとグレー』
監督:行定勲
出演:中島裕翔,菅田将暉,夏帆,小林涼子,岸井ゆきの,千葉哲也,マキタスポーツ,
   入江甚儀,橋本じゅん,篠原ゆき子,矢柴俊博,宮崎美子,柳楽優弥他

予想外に楽しめた前述の『傷物語 I 鉄血篇』とハシゴ。

原作を読んだときのレビューを“ブクログ”にUPしています。
多分にかぶりますので、そちらをお読みくださった方にはすみません。
しかしその先は映画版について完全ネタバレモードで書きます。

加藤シゲアキの同名小説を『世界の中心で、愛をさけぶ』(2004)の行定勲監督が映画化。
原作者はジャニーズ事務所所属、アイドルグループNEWSのメンバー。
映画に出ている人しかわからない私は、山P錦戸くん、かろうじて手越くんがわかる程度。
顔もわからないのに、ジャニーズの子かぁと先入観ありありで読み始めました。
以下、原作のあらすじです。

りばちゃんこと河田大貴は小学生のときに大阪から横浜へ転校。
友だちをつくる気などなかったが、同じマンションに住む同級生と意気投合。
中でもごっちこと鈴木真吾とは中学受験をしてまで同じ学校へ進み、高校生活も共に送る。
文化祭ではバンドを結成、お互いのいない毎日など考えられなかったが、
高校2年生のある日、転機が訪れる。
駅で雑誌編集者の赤城から読者モデルにならないかと声をかけられたのだ。
ハンバーガーをおごってくれるならOKだと冗談で言うと、意外にもそれが受け入れられる。

ルームシェアを始めたふたりは、芸能事務所に所属。
大貴は河鳥大、真吾は白木蓮吾という芸名を持ち、ささやかながら芸能活動を始める。
やがてエキストラの仕事でプロデューサーに見初められた真吾は、
連続ドラマへの出演を手中におさめ、人気はうなぎのぼり。
以後、芸能人としてのふたりの格差は広がるばかり。
真吾は自分の出演作に大貴も出られるように取りはからうが、
大貴のプライドがそれを許さず、すべて断ってしまう。
それでもずっと友だち。一緒に暮らしていたい。
大貴はそう思っていたが、真吾が唐突に事務所を移籍、
勝手に引っ越しを決めたのをきっかけに決裂。

数年後、同窓会で再会したふたり。
相変わらず大人気の真吾にふてくされた態度を取る大貴。
しかし帰り際に飲みに行ってみれば、わだかまりが嘘のようになくなる。
翌日もう一度会う約束をして真吾のマンションに寄ってみると……。

300頁ほどの文庫本で、半分を過ぎる辺りまではいささか退屈。
面白くなるのは真吾の自殺現場に大貴が乗り込んでからでした。

さてここからネタバレ全開ですので、映画をご覧になる方は決して読まないでください。

映画はまさにその面白くなる場面、真吾の自殺現場に大貴が居合わせるところからスタート。
なるほど、そこから始めるのねと興味津々。
そして、ヤラレタと思ったのは119分の作品でおそらく65~70分辺り。

原作では、真吾の自殺後、大貴が真吾に関するノンフィクションを書き、それが大ヒット。
大貴が真吾役を演じる映画が製作されます。
冒頭から70分頃まではなんとこの映画の中のお話でしたというわけで。

つまり、ずっと真吾だと観客が思っていた中島裕翔は本当は大貴。
大貴だと思わされていた菅田将暉は、実は大貴役の俳優。
真吾と大貴ふたりともが想いを寄せる幼なじみのサリーだと思っていた夏帆は、
清楚なサリーとは大違いのパンパン女優。厚化粧の夏帆がコワイ(笑)。
本物の真吾役は柳楽優弥でした。
なるほど、道理で映画のHPに役名がほとんど載っていないのね。

ほぼ原作に忠実な映画化だと思っていたらとんでもない。
原作のその後が付け加えられた作品となっていて、
物語を楽しむというよりも菅田将暉くんのカメレオンぶりを見る作品に。

映画と原作、どっちも「ら抜き」てんこ盛りなのは同じ。
原作では遺書までら抜きだなんてと思いましたが、映画では遺書は公開されず。

映画の中の「映画の話」と「現実の話」をカラーとモノクロで使い分けたり、
こんなふうに映画化するのかという点では非常に面白いけれど、
映画として好きかどうかと聞かれたらイマイチです。
原作だってそんなに好きだったわけじゃないから、こんなもんで。

大阪から横浜じゃなく埼玉に引っ越すことにしたのは別に意味はないですよね。
原作では引っ越しの挨拶に餃子持参で驚いたけど、
いくら大阪人だからって、ご挨拶に餃子は持っていかないと思いませんか。

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『傷物語 I 鉄血篇』

2016年01月17日 | 映画(か行)
『傷物語 I 鉄血篇』
総監督:新房昭之
監督:尾石達也
声の出演:神谷浩史,坂本真綾,堀江由衣,櫻井孝宏

連休中、梅田とかなんばとか西宮まで出るのが面倒になり、
近場のTOHOシネマズ伊丹で手を打つことに。

2本目に観るものはもともと決めていたけれど、1本目の候補が少なすぎる。
これがなんばか西宮ならばあと3つくらいは選択肢が増えるのに、
伊丹となると未見の作品は“仮面ライダー”もしくは“妖怪ウォッチ”
さすがにそれはフリーパス期間じゃなきゃヤダ。
ほかに何かないんかいなと調べてみたら、まったく知らない本作が。

原作者の西尾維新は私と同じ大学の出身(中退だそうですが)でB型(笑)。
血液型で人の性格を分類できるわけないやんかと思っているのに、
なぜかB型だと聞くと湧く親近感。
小説も漫画も1冊たりとて読んだことはないけれど、この機会に観てみる。

阿良々木暦(あららぎこよみ)は私立直江津高校の2年生。
春休み中の3月25日、同学年の羽川翼(はねかわつばさ)とばったり出会う。

学校一の秀才のメガネ女子・翼はスタイル抜群で巨乳
横断歩道で風が吹き荒れ、翼のスカートが見事にまくれ上がったうえに胸ゆさゆさ。
学校ではクールを装っていた暦もこの事態に動じずにはいられない。

照れ隠しに話しかけてくれた翼と言葉を交わし、
ケータイの番号とメアドまで一方的に教えられ、内心嬉しくて仕方ない暦。
おかげでその夜は悶々としてしまい、ふらりと駅前へ出かける。

ところが、地下鉄の構内でおびただしい血痕を発見。
導かれるようにその痕を追っていくと、その先には四肢を切断された美しい女の姿が。
近づくと、瀕死の女はおぞましい口調で「助けさせてやる」と言う。
救急車を呼ぼうとする暦に「血を寄越せ」と。

これはきっと翼が昼間に話していた、最近出没するという吸血鬼
腰を抜かしそうになりながら逃げかけた暦だが、なぜか女を見捨てることができず、
自分の血を吸い尽くせばいいと、死ぬつもりで女に自分の体を差し出す。

死んだつもりだったのに。
目覚めた暦は自身も吸血鬼となっており、
少女として生まれ変わったあの女キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレードの従僕に。
キスショットは暦を人間に戻してやると約束するが、それには条件があると言い……。

いやはや、想像していた以上に面白かったです。
ふきだしてしまったシーン、数カ所。
西尾維新は著作に現れるボケとツッコミに関して、
自分が関西人であることが影響していると語っているそうですが、なるほど。
全然関西人っぽい作品ではないのに、絶妙の間(ま)のやりとりあり。

幻想的な美しさも感じます。
三部作だそうで、一部目を観てしまったら続きも観ないわけにいかず。
著作ではこのシリーズよりも戯言シリーズのほうが気になるので、
とりあえずはいちばん人気の『クビシメロマンチスト』を読んでみることにします。

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父、入院のその後。

2016年01月16日 | まるっきり非映画
父が出先で大腿骨を骨折したのが昨年の11月18日のことでした。
それから2カ月。手術を執刀してくださった先生から、
「京都の博物館まで行こうという気持ちのある85歳は、
元通りに歩けるようになる可能性が高い」とお墨付きをいただいたとおり、
車椅子→歩行器→杖と順調に進み、今は杖なしでもほぼ大丈夫。
来月前半には退院できそうです。

本と将棋と数独が好きな父のこと。
病院では退屈するだろうと、入院翌日に本を10冊ほど持っていきましたが、
さすがにこんなだと文字が頭に入ってこないそうです。
数独も簡単なものならできるけど、難易度の高いものは無理らしく。
しかし歩行器を使うようになった頃から読書欲も復活したようで、
父が読まないならと母が先に読んだ重松清の『定年ゴジラ』に着手。
「流し読みするつもりが本気になった。おもしろい」と言って読んでいました。

昨年末、正月を病院で年越しすることになった父から
りんごジュースが飲みたいから、持ってきてくれ」とのリクエスト。
先生からちゃんと許可を得ていると言うのです。
血糖値が高いはずなのにええんかいなと思いつつ、父の言葉を信じ、
アンパンマンの125mlサイズのりんごジュース6本を差し入れ。

年明け、それがなくなったからまた持ってきてほしいと再リクエスト。
だけど年末の父の態度がどうも不審、かなり怪しい。
普通入れませんよね、りんごジュースをキャビネットの引き出しの中になんて。
今回は15本持って行っていたということもあり、看護師さんに先に聞きました。
「許可をもらっていると言うのですが、ほんまかいなと思って」。

ウソでした。バレると思ってへんのか。浅はかだわぁ。(--;
父に「何をウソ言うてるのん。あかんやん」と言ったら、
「どうして聞いちゃうんだよぉ。ちょっとぐらい飲んだって大丈夫なのに」。
大丈夫じゃないから許可が出えへんのやっちゅうの。

懲りない父から先週またまた別のリクエスト。
「ヤクルト1本持ってきてくれ。ほかの人の食事には付いているのに、
僕のには付いてないんだ。誰かに聞いたりせずに持ってきて」。

とりあえず渡せるようにヤクルトカロリーハーフを用意していた母。
看護師さんに尋ねたらもちろん「駄目です」とのお返事。
願いが叶えられないと知った父は激しくブーたれていましたが、
「お父さん、あのな。その1本が駄目やからごはんに付いてへんのやろ。
せっかくそんなに速く歩けるようになったのに、
その1本で足の指先が壊死するかもしれへんねんで」と言ったら、
「そうかぁ」としんみり返事をしておりました。

基本的には素直だけど、とっても懲りない人だから、またなんぞリクエストがあるかも。
親父よ、りんごジュースもヤクルトも忘れてがんばれ。

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『人生の約束』

2016年01月15日 | 映画(さ行)
『人生の約束』
監督:石橋冠
出演:竹野内豊,江口洋介,松坂桃李,優香,小池栄子,高橋ひかる,美保純,
   市川実日子,立川志の輔,室井滋,柄本明,ビートたけし,西田敏行他

前述の『ブリッジ・オブ・スパイ』とハシゴ。
同じく109シネマズデーの109シネマズ箕面にて。

『池中玄太80キロ』を手がけたベテラン演出家の初映画監督作品。
って、いまごろ『池中玄太』と言われても。
杉田かおるがそれはそれは可愛かったのは35年も前のお話(笑)。
ま、でもターゲットはその年代なのでしょう。
タイトルがちょっとずれている気はしますが、無難に感動できる作品になっています。

中原祐馬(竹野内豊)は大学時代の盟友・塩谷航平とIT関連企業を創業。
飛ぶ鳥を落とす勢いでのし上がり、今や大企業に成長。
しかし会社が大きくなるにつれて祐馬と航平の間に溝ができ、
結局は航平を追い出す形で決別してしまう。以来、ふたりに音信は無し。

ワンマン化した会社では、祐馬の部下の誰も何も進言できずにいる。
唯一、沢井卓也(松坂桃李)が祐馬に反対の意思を見せたところ、
彼にかつての航平の姿を合わせた祐馬は、卓也を即刻クビにすると決める。

そんな折り、祐馬の携帯に航平から何度も着信が。
無視して電話に出ようとしない祐馬を秘書の大場由希子(優香)が諭す。
航平の身に何かあったのかもしれないから会いに行ったほうがいいと。

航平の故郷である富山県の新湊を訪れてみると、まさに航平の葬儀中。
航平は数カ月前にふらりと帰郷、病に伏してそのまま還らぬ人となったらしい。
焼香に現れた祐馬を、航平の義兄・渡辺鉄也(江口洋介)は激しくなじる。
その席で航平に一人娘の瞳(高橋ひかる)がいたことを初めて知る祐馬。

瞳や近所の住民から聞かされる祭りの曳山のこと。
ここ四十物町(あいものちょう)の曳山が、財政難により新興の西町に譲渡されたという。
航平が死ぬ間際までその曳山にこだわっていたと聞き、
金で買えないものなどないと考える祐馬は、曳山を買い戻すべく、
西町の町内会長・武田善三(柄本明)に会いに行くのだが……。

45歳の竹野内豊と48歳の江口洋介。いい感じに年を重ねていてカッコイイ。
あまり嫌な役の人のイメージがないご両人。
江口洋介は最初から熱い人で、町民をまとめていますが、
竹野内豊は最初はものすごく嫌な人。
こんな役のときもあるんだと驚いたほどです。
それが、いつのまにか忘れていた心を取り戻し、やっぱりいい奴に。

四十物町の町内会長に池中玄太のよしみか西田敏行
その役名を「西村玄太郎」としたのはちょっとした遊び心でしょう。
町内会長の奥さん役には室井滋。さばさばした漁師仲間に小池栄子
飲み屋のママに美保純、カメオ出演並みの刑事にビートたけしと豪華キャスト。
ターゲットがはっきりしたストーリーにこの配役なら無難も無難。
無難と言いつつ、きっちり泣かされている私です(笑)。

エンディングは最後の最後だけ転調して長調に。
最初から長調の曲のほうがさらに無難でよかったと思うのですが、
なんで最後へ来て曲だけこんなにひねるのよ。

何はともあれ、泣けます。

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