夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『ブリッジ・オブ・スパイ』

2016年01月14日 | 映画(は行)
『ブリッジ・オブ・スパイ』(原題:Bridge of Spies)
監督:スティーヴン・スピルバーグ
出演:トム・ハンクス,マーク・ライランス,エイミー・ライアン,アラン・アルダ,
   スコット・シェパード,セバスチャン・コッホ,オースティン・ストウェル他

今年劇場で初めて観た作品はこれでした。
昨年10月にTOHOシネマズ伊丹で混線した予告編を観たのが懐かしい。
連休中日がちょうど109シネマズデーだったので、1,100円で。
脚本がコーエン兄弟だとは観るまでつゆ知らず。さすがです。
定価だったとしても見応え十分だと思ったはず。実話に基づく。

1957年、米ソ冷戦下のニューヨーク。
ルドルフ・アベルという男がスパイ容疑でFBIによって逮捕される。
アベルに弁護士の知り合いはおらず、国選弁護人が就くことに。

ソ連のスパイが米国民から憎まれるのは当たり前。
裁判で死刑を言い渡されることは確実だろう。
しかし米国政府としては敵国のスパイにも寛容なところを見せておきたい。
弁護人として推薦されたのはジェームズ・ドノヴァン。

ドノヴァンは誰もが認める優秀な弁護士ではあるが、保険が専門。
米国民の非難を一身に浴びること必至の刑事裁判を扱うなんて。
家族の反対にも遭うが、たとえスパイであろうと裁判を受ける権利はある。
弁護士としての職責を全うしようと、ドノヴァンは引き受ける。

案の定、思っていた以上の嫌がらせを受けるが、すでに乗った船。
交渉上手なドノヴァンは、判事との駆け引きに成功。
アベルは死刑を免れて、禁固30年を言い渡される。

これで一件落着したかに思われ、5年が過ぎた日、
ふたたびドノヴァンは政府から呼び出される。
米国の偵察機がソ連上空で撃墜され、パイロットのフランシス・ゲイリー・パワーズが拘束されたらしい。
かつてドノヴァンはこのようなことを想定し、
いつか捕虜を交換できるように、アベルを死刑に処するべきではないと主張していた。
まさにそのとおりの事態となり、交渉人としてドノヴァンが指名されたのだ。

軍人でも政治家でもないただの民間人ドノヴァン。
そんな彼が交渉人の極秘任務を任されるとは。
交渉の地は今まさにベルリンの壁が築かれようとしている東ベルリン。
妻子にすら打ち明けることを禁じられ、護衛もなく、
ロンドンへの出張だと偽って、ドノヴァンは東ベルリンへ赴くのだが……。

スパイ容疑で逮捕されたアベルは、二重スパイにならないかと政府から持ちかけられます。
そうすれば罪は問わない、生かしてやると。しかし、アベルはその申し出を拒絶。
得策ではないとドノヴァンに言われても信念を曲げません。
逃げも隠れもせず言い訳もしないアベルの人柄に触れ、
ドノヴァンはこの男を死なせたくはないと思いはじめます。

米国では死刑が確実視され、もし生きてソ連に帰れたとしても殺される可能性大。
なのにアベルは恐れる様子をまったく見せません。
ドノヴァンから「不安は感じないのか」と三度問われ、
いずれも「(不安を感じることが)役に立つのか」と答えるシーンが印象的。

いくぶん美化されていたとしても、こんな弁護士が存在したことは本当。
恥ずかしくない人間でいることは難しいけれど、そうありたい。

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三羽省吾の『路地裏ビルヂング』

2016年01月13日 | 映画(番外編:映画と読み物)
昨年「大人買い」してしまった作家3人のうちの1人、三羽省吾
あとの2人である高野秀行と山本幸久に比べると著作が少なく9冊。
うち8冊はすでに文庫化していて、それらをすべて買いました。
薄めのものから読んでいたら、残るは分厚いものばかり。
そろそろ着手してみるかと手に取ったのが『路地裏ビルヂング』です。

雨で道がぬかるめば、人の行き来がままならず、
立ち止まって譲り合わねばならぬほど狭い路地に建つ“辻堂ビルヂング”。
ビルジングではなく、ビルヂングです。
築半世紀は経っているであろう、6階建てのくせして隣の5階建てより小さい雑居ビル。
そんなおんぼろ辻堂ビルヂングのフロア毎に1章ずつ、6章から成る連作小説。
1階から6階という順番の章仕立てではありません。

5階、健康食品販売会社、主人公は元フリーター・加藤。
2階、無認可保育園、主人公は五十路の保母・種田。
3階、学習塾、主人公は司法書士を目指す講師・大貫。
4階、不動産屋、主人公は共働きで子どものいないOL・桜井。
6階、広告制作プロダクション、主人公は元野球部員・江草。

そして1階は章が進むたびに売るものが変わる料理屋です。
1章から順にその遍歴を追うと、おでん屋→カレー屋→お好み焼き屋→ホルモン焼き屋となり、
5章ではおでんもカレーもお好み焼きもホルモン焼きも出すというコンプリート店。
ただしそのどれもが超絶まずく、まずさの確認にリピート客が出るほど。
店員はずっと同じ、国籍不明の外国人。
いつまで経っても日本語が上手くならず、「オマエラ、ナニ召シ上ガリマスカ」。

主人公に限らず、登場人物の誰もが魅力的です。
おとなは何のために働いているんだろうと思い、
こどもはどうして勉強しているんだろうと思う。
誰も見てくれてやしないと思っていても、
こうして見てくれている人だっているんだよ。そんなふうに思えます。
6階の章では思わずウルッと来ました。

私はやっぱりこの著者が大好きです。
「クララが立ったくらいの朗報だったということだ」という言い回しにふきだし、
「つまり、私の生活に足りないのはドラマチックな出来事ではなくて、
それを感じ取る感性なのだと思う」という一文にうなずき。

1階の主人公が誰なのかは読んでからのお楽しみということで。
あったかいです。

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『母と暮せば』

2016年01月12日 | 映画(は行)
『母と暮せば』
監督:山田洋次
出演:吉永小百合,二宮和也,黒木華,浅野忠信,加藤健一,
   広岡由里子,本田望結,小林稔侍,辻萬長,橋爪功他

29日(火)は大学のプチ同窓会で、カタギの人は出てきにくいであろうその日、
当初は4人だけ参加の予定がなんだかんだで7人集合。
京都で飲む前に映画をできれば2本、せめて1本は観たかったけど、
連日の宴会でさすがに身が持たず、映画はあきらめました。
京都シネマで『善き人のためのソナタ』(2006)を観るつもりだったのに。(;_;)

で、翌30日(水)、この日は高校のクラブの忘年会。忘年会もこれで打ち止め。
せっかくのレディースデーだから2本観たかったけれど、やはりしんどい。
お正月に倒れるのも嫌なので、この1本だけにとどめました。
大阪ステーションシティシネマにて。

1945(昭和20)年8月9日、長崎。
助産婦の伸子(吉永小百合)は夫と長男を戦争で失ったが、
次男の浩二(二宮和也)の明るさに救われて元気に暮らしている。
ところがこの日、長崎に原爆が投下される。
大学で川上教授(橋爪功)の講義を受講中だった浩二は還らぬ人となる。

以来ひとりつましく暮らす伸子のもとへ、3年経った今も、
浩二の恋人だった町子(黒木華)がずっとかよってくれている。
町子は浩二ひとすじ、ほかの人と結婚するつもりはないと言う。

そんなある日、伸子の目の前に浩二がひょっこり現れる。
あまりに嬉しくて「浩ちゃん、元気だった?」と問う伸子に、
「元気なわけがなか。僕は幽霊なのに」と笑う浩二。

それからしばしば浩二は出没、伸子と思い出話に花を咲かせるように。
しかし、会話の行き着く先は必ず町子のこと。
町子の幸せを願う浩二は、いい人を見つけて結婚してほしいと
伸子から町子へ伝えてくれと頼むのだが……。

途中、いや終盤までかなり退屈です。寝そうになったことも何度か。
やっぱり吉永小百合だしと思わなくもありませんでした。
が、こんな最後が待っていようとは。しばし放心。

これも静かな反戦映画
2015年に観た最後の作品が本作でした。戦争は、絶対駄目。

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『DENKI GROOVE THE MOVIE ? 石野卓球とピエール瀧』

2016年01月11日 | 映画(た行)
『DENKI GROOVE THE MOVIE ? 石野卓球とピエール瀧』
監督:大根仁

これも梅田ブルク7にて。

電気グルーヴといえばすぐに思い出せるのは“Shangri-La”ぐらいなんです。
すみません、こんなんで。
でも最近は俳優としての知名度抜群のピエール瀧が気になるし、
ケラさんことケラリーノ・サンドロヴィッチも絡んでいるし。
少しずつ興味を惹かれることがあって観に行きました。

石野卓球とピエール瀧を中心に1989年に結成された電気グルーヴ。
日本のメジャーシーンに初めてテクノを持ち込んだグループと言われています。
破天荒なパフォーマンスによって存在感ありあり。
そんな彼らの歴史を綴り、ドキュメンタリーにまとめたのは、
『モテキ』(2011)、『バクマン。』(2014)の大根仁監督。

前述の『ストレイト・アウタ・コンプトン』とともにノーマーク。
時間的にちょうどよかったので選んだ2本でしたが、
期せずして音楽ユニットの実話になり、共通することいろいろでした。
グループを存続していくことの難しさを感じさせられます。

でもまぁいいんじゃないですかね、この人たちはこのままで。
アルバム1枚1枚についての関係者の話が面白く、
これは聴かなくちゃと思ったものが数枚。
観賞後、TSUTAYA DISCASですでにレンタル済みです。

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『ストレイト・アウタ・コンプトン』

2016年01月10日 | 映画(さ行)
『ストレイト・アウタ・コンプトン』(原題:Straight Outta Compton)
監督:F・ゲイリー・グレイ
出演:オシェア・ジャクソン・Jr.,コーリー・ホーキンズ,ジェイソン・ミッチェル,
   オルディス・ホッジ,ニール・ブラウン・Jr.,ポール・ジアマッティ他

忘年会ダブルヘッダーだった27日(日)の翌日、28日(月)。
この日も長らくごぶさたしていた人と北新地で晩ごはんの予定。
朝イチで入院中の父の介護保険を申請するために、母とともに茨木市役所へ。
それが思ったより早く片付き、ついでに伯母の様子を見に高槻へ。
母を実家へ送り、私はそのまま新御で梅田までビューン。
最大料金サービスのある梅新南のタイムズへ駐車。

テアトル梅田で観たい作品があったけれど、梅新南からはちと遠い。
晩にはまた北新地まで戻らないといけないことだし、少しでも近い梅田ブルク7で2本。
ブルクに来るのはものすごく久しぶりな気がすると思い返してみたら、このとき以来でした。

伝説的ヒップホップグループ“N.W.A.”の誕生から崩壊までを描いた伝記ドラマ。
実話だけどドキュメンタリーではありません。

カリフォルニア州コンプトンはアメリカ屈指の危険な街。
バイオレンスとドラッグがはびこり、黒人差別も極端。
ドクター・ドレーはそんな街に生まれ育った黒人の若者。
母親からは普通の職業に就くように言われているが、音楽で食べていく夢を捨てられない。
会社の面接をすっぽかした日、母から出て行けと怒鳴られて家を飛び出す。

ドクター・ドレーは金を持っている元ドラッグの売人イージー・Eに声をかける。
自分がレコードを回し、アイス・キューブの言葉をのせる。それに投資しろよと。
すでにほかのグループに所属していたアイス・キューブは、
詞は提供してくれるが、自ら歌うことはできない。
そこでラッパーをスカウトしてくるが、怖じ気づいたのか出て行ってしまう。
仕方なくド素人のイージー・Eが歌うことに。

イージー・Eのラップはまるで駄目。
最初は箸にも棒にもかからないと思われたが、ドクター・ドレーの指導でなんとか形に。
コンプトンの現実を奏でたラップは街で大人気となる。

これに目をつけたのがジェリー・ヘラー。
ジェリーはイージー・Eに共同でレコード会社を設立しようと持ちかける。
“Niggaz Wit Attitudes”、略して“N.W.A.”と名付けたグループで本格的に活動を開始。
過激な詞は世界でもっとも危険なグループとして評判を呼び、
人気が出れば出るほど警察との対立も深まってゆく。

一方で契約や儲けの取り分に関してグループ内で不満が勃発。
不穏な空気が漂いはじめるのだが……。

ヒップホップにほぼ興味はないので完全ノーマーク。でも非常に面白かったです。
いままでとはまるでちがう暮らしに、メンバー誰もが舞い上がった状態。
甘い汁を吸おうという輩が群がってくるのも当然のこと。
そんななかではまともに考えられなくなっています。

昨年末にDVDで観た『ハイネケン誘拐の代償』(2014)で、
アンソニー・ホプキンス演じるフレディ・ハイネケンがこんなことを言っていました。
「人生には二通りある。大金を持つか、大勢の友人を持つか 。両方はありえない」。
そうかもしれないと本作を観たときに思いました。

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