雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

秋深まる

2020-11-09 19:08:22 | 日々これ好日

       『 秋深まる 』

    昨日 今日と 当地も少し冷え込んでいる
    明日はさらに寒いそうで 「秋深し」という気候
    もっとも すでに立冬も過ぎており 驚くほどのことでもないが
    どうも今年は 秋らしさを感じたことがないように思う
    この週末あたりからは 少し温度は上がるそうで
    まだまだ秋は 近くにいるらしい
    コロナが 少々厳しくなってきたが
    深まる秋を 惜しむ余裕も 大切にしたい

                 ☆☆☆

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志賀の唐崎

2020-11-09 08:14:42 | 新古今和歌集を楽しむ

     夜もすがら 浦漕ぐ舟は 跡もなし
              月ぞ残れる 志賀の唐崎

             作者  宜秋門院丹後

( No.1507  巻第十六 雑歌上 )
            よもすがら うらこぐふねは あともなし
                     つきぞのこれる しがのからさき

* 作者は、後鳥羽天皇の御代の頃の歌人である。生没年ともに未詳である。

* 歌意は、「 夜通し 浦を漕いできた船も 今は航跡も見えない 湖面には ただ有明の月だけが残っている 志賀の唐崎よ 」といったものであろう。

* 作者 宜秋門院丹後(ギシュウモンイン タンゴ)の父は、丹後
守などを務めた源頼行、清和源氏の出自である。頼行の生年も未詳であるが、1157年に政変も絡んだトラブルで自刃している。頼行には多くの子供がいたが、子息たちは実兄の源頼政に託されたが、宜秋門院丹後がどうであったかははっきりしない。
因みに、この源頼政は源三位頼政と称せられる歴史上の重要人物なのである。失敗したとはいえ、以仁王らと共に平家打倒ののろしを上げた人物である。
宜秋門院丹後は末子のように推定されるので、生年は、1157年の数年前程度ではないかと推定される。没年は、1208年までの消息が確認できるようなので、その生涯は五十年余りのものであったようだ。

* 年齢やその経緯は不詳であるが、九条兼実家に出仕した。兼実は、従一位摂政関白太政大臣にまで上り詰め、九条家の祖となった人物である。これも時期は分からないが、兼実の息女の任子(タエコ/ニンシ・1173 - 1239 )に仕えている。任子誕生の時には、丹後はおそらく二十歳近くになっていたと推定されるので、誕生の時から仕えた可能性が高い。

* 任子は、1190年1月に後鳥羽天皇の元服に合わせて入内、女御宣下を受けた。後鳥羽天皇は安徳天皇が京都を離れたことにより、政争の結果四歳の時に践祚の形式をとっており、この時まだ十一歳で、任子は十八歳という姉さん女房であった。同年4月には中宮に冊立され、1195年には昇子内親王出産と幸せな日々を送った。
しかし、任子の生涯は、激しい時代の動きに翻弄されることになる。1196年、政争に敗れた父の兼実の失脚により内裏を退出することになった。1200年に院号宣下を受け、宜秋門院を名乗る。1201年には母の死去により出家した。1207年には父が死去。1211年には愛娘昇子内親王を亡くしている。
1212年、院号・年爵などを辞している。そして、1221年には、承久の乱で後鳥羽上皇が隠岐の島に配流となった。
1238年、任子は崩御する。行年六十七歳。遠く離れた夫後鳥羽院に一年先立っての旅立ちであった。

* 宜秋門院丹後は、おそらく、任子誕生から自身の命が終わるまで、側近くで仕えたものと考えられる。
丹後は、1175年から、多くの歌会などに加わっていて、長年にわたって高い評価を受けていたようである。後鳥羽院は、丹後の才能を愛でて「やさしき歌あまた詠めりき」と評している。
本歌の作者名としては「宜秋門院丹後」とされているが、実際は、任子が院号宣下を受けた1200年以降のことなので、それ以前は、「丹後」「女房丹後」と名乗っている和歌の方が多い。
また、1201年に出家しているが、これは任子の出家に合わせたものと考えられる。

* 宜秋門院丹後の生涯は、幼くして父に死別するなど、苦難のスタートであり、仕えた任子も華やかながらも波乱の生涯を送っており、苦楽を共にした丹後の生涯も安穏なものではなかったのかもしれない。
しかし、歌人としての丹後は、後鳥羽院歌壇の一員として恵まれた生涯であったと思うのである。

     ☆   ☆   ☆

コメント (2)
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