雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

早くも豪雨の被害

2023-06-03 18:33:49 | 日々これ好日

      『 早くも豪雨の被害 』

    台風2号は ようやく温帯低気圧になり 去って行ったが
    梅雨前線とも相まって 各地で記録的な豪雨となった
    被害を受けられた方々に お見舞い申し上げます
    それにしても 早すぎる梅雨入りだと思っていたが
    まだ二つ目の台風に これほどの影響を受けるとは思わなかった
    梅雨は まだまだこれからで
    台風となれば 本格シーズンはずっと先だが
    暴風や豪雨の到来は 地震より遙かに確実だ
    何とか 被害を少しでも小さく抑える手段を
    備えておきたいものだ お互いに!!

                   ☆☆☆
    

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わが魂の

2023-06-03 08:05:52 | 古今和歌集の歌人たち

     『 わが魂の 』


 飽かざりし 袖のなかにや 入りにけむ
           わが魂の なき心地する

              作者  みちのく

( 巻第十八 雑歌下  NO.992 )  
        あかざりし そでのなかにや いりにけむ
                 わがたましいの なきここちする


* 歌意は、「 ずいぶんお話ししましたが なお語りきれない気持ちが残っていて その思いがあなたの袖の中に 入ってしまったのでしょうか わたしの魂が 体から抜け出してしまったような気がしています 」と、親しい人との別れを惜しむ気持ちを詠んだものでしょう。

* 作者の「みちのく」に関する情報を訪ねることは殆ど出来ませんでした。
「みちのく」は、漢字書きすれば「陸奥」で、おそらく女房名だと思われます。
生没年ともに不詳ですが、父の官暦が伝えられていますので、それから推定すれば、平安時代前期、800 年代半ばから 900 年代初頭に掛けて生きた女性だと推定されます。

* 父は従五位下 岩見権守 橘葛直(タチバナノクズナオ)です。生母は不詳です。
父の葛直の生没年も不詳ですが、伝えられている官暦を列記します。
 868 年  蔵人
 876 年  従五位下を叙爵。これにより貴族の仲間入りをすることになりますが、これは「氏爵(ウジノシャク)」によるものです。
 880 年  宮内少輔
 881 年  大和介
 894 年  岩見権守  これが最終官職なので、ほどなく没したと推定されます。

* なお、「氏爵」とは、王氏・源氏・藤原氏・橘氏など(四氏に限られたとも。)の正六位上の者から各一名、氏長者の推挙により従五位下に叙す制度のことです。当時の橘氏の力のほどがうかがえます。
また、「みちのく」の父は下級貴族の家柄ではありますが、その血統はそれ以上の評価が為されていたのではないでしょうか。
作者の祖先を辿りますと、橘三千代に至ります。橘三千代は藤原不比等の妻として藤原一族の基盤を築いた女性ですが、先夫の美努王との間の子である橘諸兄 → 橘奈良麻呂 → 橘清友  → 橘氏公(祖父・従二位右大臣) → 橘岑継 (伯父・従三位中納言)と繋がっていて、「みちのく」の父橘葛直は、岑継の弟にあたります。
つまり、作者の父はいわゆる受領クラスの中下位の貴族にあたりますが、伯父や祖父は歴とした公卿であり、父の官位は低くても、「みちのく」は公卿の姫君にも匹敵する女性だったと思うのです。

* 「みちのく」というのは、おそらく女房名だと思われますが、誰に仕えていたのかは確認できていません。ただ、その家柄を思えば、宮中あるいは相応の公卿の家に仕えていたものと推定されます。
掲題の和歌の前書き(詞書)には、「女ともだちと物語して 別れてのちに つかはしける」とありますが、これは単に世間話などといったものではなく、地方官を歴任している父について都を離れる際の、名残を惜しんだ物語だったのかも知れません。「わが魂の・・」とまで詠うのには相当の切実さがともなっていたからだと思うのです。
ただ、今一つ分からないのは、当時の女房名は、父などの官職から付けられることが多いのですが、父の官職には「みちのく(陸奥)」は該当しません。もしかすると、これはまったく筆者の推定ですが、陸奧国に縁のある人物と結婚していたのかも知れない、と考えています。
いずれにしても、作者の「みちのく」は、伝えられている情報は少ないとしても、「わが魂の・・」と詠むほどの情熱豊かな貴族女性として生きた人物だと思われるのです。

     ☆   ☆   ☆


        

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