雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

ものへいく道に

2014-07-02 11:00:18 | 『枕草子』 清少納言さまからの贈り物
          枕草子 第二百十九段  ものへいく道に

ものへいく道に、清げなる郎等の細やかなるが、立文持ちて、急ぎいくこそ、「いづちならむ」と、見ゆれ。
また、清げなる童女などの、衵どもの、いとあざやかなるにはあらで萎えばみたるに、屐子の、艶やかなる革に土多く付きたるを履きて、白き紙に大きに包みたるものを、もしは、箱の蓋に草子どもなど入れて、持ていくこそ、いみじう呼び寄せて見まほしけれ。
門近なるところの前渡りを呼び入るるに、愛敬なくいらへもせでいくものは、使ふらむ人こそ、推し量らるれ。


どこかへ行く途中で出会った、小ぎれいな従者でほっそりしたのが、立文を持って、急ぎ足で行くのは、「どこへ行くお使いだろう」と、つい見てしまいます。
また、可愛らしい童女などが、衵など、仕立ておろしというほどではなく着ならしているのを着て、履物の艶やかな皮に、急いでいるらしく泥はねが沢山付いているものを履いて、白い紙でかさ高く包んだ物、あるいは、箱の蓋に冊子などをいれて、持って行っている様子ときたら、たまらなく呼び寄せてみたい気がします。(「艶やかな皮・・」の部分は諸説ある)
通りに近い私の家などの門前を通っているのを呼び入れようとすると、愛敬もなく返事もしないで通り過ぎて行く者は、召し使っている主人の人柄までが推し量られるということを知るべきですよ。



少納言さまは、泥はねをつけながら急ぐような使用人がお気に入りのようです。
最後の部分は自分の家のことでしょうが、簡単に呼び寄せられるようですから、少納言さまのお屋敷は、それほど大きなものではなかったみたいですね。
前段に拘るようですが。

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