マネジャーの休日余暇(ブログ版)

奈良の伝統行事や民俗、風習を採訪し紹介してます。
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脇本頭屋宮遷し

2008年12月24日 07時46分43秒 | 桜井市へ
膳の形式に特徴があった脇本春日神社の宮座中の直会。

これから始まる頭屋渡しの儀式も珍しい形式だ。

直会の時間を見計らって一老さんがそろそろ呼出してんかと旧頭屋に指示をすると、新頭屋の家に電話をかけてこっちの家に来てやと伝える。

ところが一回では動じない。

呼出し三回目でやっと腰をあげて旧頭屋の家に伺う。

すんなりと引き受けはでけんといい、じらす意味があるのでしょうか、隣の家なのに電話するのも滑稽に感じる呼び出し所作だ。

新、旧頭屋が揃うと炊事場に用意した桶の高膳(カワラケ三枚とスルメ)に向かい合って座る。

重要な頭屋渡しの儀式は炊事場と決まっている。

かつての家には土間に竃があった。

その竃の前に筵を敷いて逆さにした桶の上に高膳を置いていたという儀式は炊事場に替わったがとても珍しい光景だ。

神官、一老も席に着いて儀式が始まる。

お酒を三度注いでいく儀式はいわゆる固めの盃とされる三献の儀式。

最後にスルメを奉書に包み込んで終える。

以前はこの桶の上で神籤を引いて頭屋が決められていたが、現在は住民も少なくなり断られることが多くなり維持することが難しくなって、区長がこの人だと思う人に頼み込んで決めているという。

その神籤の名残りの桶は頭屋渡しの儀式で引き継がれている。

文字が消えかかっている大きな桶。

その桶上で神職がコヨリ籤を、そーっと降ろして引いていたという。

残念ながら今は見ることはできない。

このあと、座衆らは旧頭屋に祀られた神さんの前に座って宮遷しの神事。

祓えの儀、祝詞奏上を済ませると旧頭屋は櫃の神さんを担いで中庭を三周し外回りを三周する。

この形式も珍しいものだ。

周回したあとは新頭屋が神さんを担いで家に入る。

新調された神棚に供えて注連縄作りや綱掛けなど一年間の祭事と座衆の名前を墨書する宮座記帳などの作業が始まる。

新築の玄関は釘を打つことができないお家なので材木をかまして設える。

神棚には神饌を供えて灯明を翳す。傍らにはフクダワラのようなものが置かれる。

この中には旧頭屋が吉野の大名持神社前の川原で拾ってきた二つの石。

祭礼前の九月末に予め新頭屋は川に返して再び石を二つ拾って供える。

準備が整えば一同は神棚の前に座って神事を執り行う。

(H20.10.19 Kiss Digtal N撮影)