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隆慶一郎 「影武者 徳川家康」

2009-01-18 11:27:39 | 読書

            
 慶長五年(1600)陰暦九月(現在の十月)関が原の合戦において、家康は暗殺された。家康五十九歳のときだった。家康の死は密閉され、長い影武者の時代を経て、影武者の死とともに家康の本当の死が訪れることになる。
 一言で言えば非常に面白い読み物だった。戦国時代といえばスリルとサスペンスに満ちていて、下手なミステリーより格段に楽しめる。それにしても家康はチビだった。身長160センチにも満たずおまけに肥満で足が短い。いかつい顔で決してスマートとはいえない。
 しかし、この男めっぽう女には強く何人にも子を生ませていた。特に戦の前にはアドレナリンの分泌が性欲を促すのか、二十三歳の側妾お梶の方との濃厚な交わりに愉悦していた。
 一方影武者も家康によく似た体躯で、そっくりさんだった。そっくりなのは体躯ばかりでなく、性力も勝るとも劣ることはなかった。お梶の方も影武者との最初の交わりに、家康以上の喜びを味わったほどだった。
 セックスも当然だが、日常の生活そのものにも興味が尽きない。意外とこれらの記述が少ない。どんなものを食べているのか。どんなところで寝ているのか。武将以外の兵卒の食べ物やトイレ、寝場所などだ。多くの歴史ものは、飲まず食わずOKのサイボーグが戦っているのではないかと思わせられる。この本で合戦の後処理に触れてあったのはうれしい限りだ。
 著者の隆慶一郎は、大正12年(1923)東京赤坂生まれ。大学教授の職を経てシナリオライターとして活躍。60歳を過ぎて小説家となり、僅か5年の作家生活であったが読者に好まれる歴史小説を残した。1989年11月没。
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