
巨額の遺産が他人に渡るのが分かれば、人間はどんなことでもする。巨額とはどのくらいか。60年ほど前の1947年百万ポンドに及ぶ預金と金利、その一倍半の額に達する債券と株式と各種証券、そして屋敷と備品だった。
現在の一千万以上に相当する。ちなみに邦貨に換算すると約127億円の巨額になる。これを手に入れるためなら人を一人や二人殺してでも欲しいと思うのも人情だろう。
クリス・ネイピアの大伯父が殺されたのも金だった。犯人として死刑に処せられたマイケル・ランヨンの息子ニッキ-がクリスの前に現れ「父は君の大伯父を殺していない」と言ったが、クリスの父に追い払われたあと、翌朝屋敷の大木で首をつり自殺しているのを発見された。ニッキ-とは幼馴染のクリスにとってはショッキングな出来事だった。
やがて真相を探っていくが、そこには意外な事実が横たわっていた。ゴダード特有の謎から謎へと翻弄されるが、混乱することなく読了する。チョット長すぎる嫌いがある。登場人物に際立った個性があるわけでもなく余情あふれる描写もない。この作品は可もなく不可もないというところか。