Wind Socks

気軽に発信します。

珠玉のラブ・ストーリー3部作の2作目「ビフォア・サンセット’04」劇場公開2005年2月

2014-07-10 21:24:26 | 映画

              
 「半年後にここ9番線ホームで午後6時に……」と言って別れたジェシー(イーサン・ホーク)とセリーヌ(ジュリー・デルビー)その後は一体どうなったのだろうか。9年後の再会となると何か訳がありそうだし、アメリカとフランスに分かれている遠距離恋愛の難しさか。年齢も20代から30代に入り仕事も円熟の境地に入る頃だ。

 ジェシーは、作家となってヨーロッパの書店に出かけサイン会を精力的にこなし、最終日はパリで読者からいろいろな質問を受けていた。
「列車で会ったフランス女性は実在しますか?」
「そのことは大して重要じゃありません」
「つまりイエス?」
「ここはフランスなので“イエス”ということに……」

 そこでふと横を向いた。向いたその先に書棚を背にした紛れもないセリーヌが立っていた。

 店主が「著者は、今から空港に向かいます。質問の受付はこれで終わります。シャンパンなども用意してありますのでご自由にどうぞ」

 外で待っていたセリーヌに「やあ、元気?」これは万国共通でこれしか言いようがない。熱い抱擁もキスもない。9年間という歳月は二人に心をリセットする効果があるようだ。

 セリーヌは真っ先に聞いた。「12月にウィーンに行った?」あれこれと言葉のやり取りがあったが、結局ジェシーは行ったが、セリーヌは祖母の葬式で行けなかったということ。

 これなんか1作目で住所も電話番号の交換もしないで別れていたから9年間という無駄な歳月が流れた。それで気になっていたことがある。1作目のラスト・シーン。 半年後の再会を約束してセリーヌは列車に乗り込む。そして振り返りもせず座席に向かう。ジェシーはすごすごと構内を出て行く。これなんか欧米人気質で当たり前のことなんだろうか。あれほど別れを惜しんでむさぼるようなキスをしていたのに。あるいは半年後の暗示なのか。いまだに気になる。

 今回は観覧車もないしキスもない。ジェシーは結婚しているし、セリーヌは報道写真家と同棲中という。しょっちゅう海外へ出かけているから一人が多い。

 まあ、二人の会話が重要な要素となっているから、流れの脈絡はたいした問題でもないのかもしれない。というのも2作目のラスト・シーンは、セリーヌのアパートでセリーヌの歌を聞いた後、「空港へ行く時間よ」とセリーヌが言って「分かってる」とジェシーが答えて終わる。
           
           
           

 多分、3作目はまったく違う場面から始まるはずだ。しかも今度も9年後だから。セリーヌ役のジュリー・デルビーはかなりの才媛のようで歌ったのは自作のもののはず。CDも出すくらいだから相当なもの。

珠玉のラブ・ストーリー3部作の1作目の「ビフォア・サンライズ恋人までの距離'95」

2014-07-10 21:20:54 | 映画

               
 7月2日に3作目のDVD「ビフォア・ミッドナイト」が発売された。映画専門サイトで絶賛されていて、1作目も未見の私にとっては最初から順次観ることにした次第。

 さて、この1作目は物凄く身近に感じる。ラブ・ストーリーは、憧れや夢を求める部分もあるが、この映画は私たちの日常を隈なく描出していてリアルな演出が新鮮だ。

 とにかくアメリカの青年ジェシー(イーサン・ホーク)とフランス娘セリーヌ(ジュリー・デルビー)が、列車を途中下車してウィーンの街をさまよい夜明けまで一緒に過ごす。この二人の会話が全編を通じて続く。退屈そうに感じるかもしれないが、まったくそんなことはない。

 生い立ちや自分の両親、愛やセックス、結婚、死、つまり人生を語る。二人の出会のシーンから気に入ってしまった。

 列車の中でドイツ人夫婦が喧嘩をしている。反対の窓際に座って本を読んでいるセリーヌも、あまりのうるささに席を替える。替えた席の反対の窓際にこれも本を読んでいるジェシーがいる。やがてドイツ人夫婦は席を立ってどこかへ……。

 ジェシーとセリーヌが顔を見合わせる。「何を言い争っていたの? 英語 話せる?」とジェシー。「ええ、でもドイツ語はよく分からないわ」とセリーヌ。自然な出会いの場面には納得したが、この何気ない会話にはアメリカ人とフランス人の特徴がよく出ているんじゃないだろうか。

 食堂車でセリーヌが「外国語はダメなんでしょ?」と言う。「どうせ僕は下品で教養のないアメリカ人さ。外国語は何も出来ない」とジョニー。

 ジョニーはいたるところで「英語話せる?」と聞きまくる。考えてみればこんな独善的な態度があるとはねえ。これは製作者の自虐的な皮肉と言えるかもしれない。そしてフランス人。フランス人は自国の言葉に異様なほど誇りを持っていると聞く。で、ドイツ語を学ぼうとしない。どちらも似たり寄ったりかも。

 ウィーンの街を歩いたり路面電車に乗ったり、そしてあの有名な観覧車に乗る。たしか「第三の男」にも出てきた気がするが。

 黄昏の街ウィーンを眺めながら二人の気持ちが高揚する。どういうわけかあの観覧車で二人っきりになるとキスしたくなるのは国籍を問わないようだ。情熱的な口づけのあとの二人の態度の変化が見事だ。よそよそしさから密着型への変化。確かにキスを境に劇的に関係が進むというのはよくあることだ。

 それにしても、もしジョニーのようなアメリカ人が日本に来たら戸惑うだろうなあ。「英語話せる?」「ノー」取り付く島がない。

 さて、いよいよ別れのとき、パリに帰るセリーヌを列車の乗降口まで送ってきたジョニー。二人の心の中は、二度と会えないという思いで一杯。発車間際の一秒でもいいから一緒に居たい。

 思い余ったジョニーは言った。「もう一度会いたい」セリーヌは感極まって「その言葉を待ってたの」むしゃぶりつくようなキス。半年後のここ9番線ホーム午後6時に……主に二人だけの会話で成り立っているが、イーサン・ホークとジュリー・デルビーの自然な表現に友人の二人のやり取りを見ているような錯覚すら覚えた。

 巷に氾濫するラブ・ストーリーとは、一味も二味も違う味わいを堪能できる。さて、2作目は9年後の出会いから話が始まるそうだ。じゃあ、半年後の9番線ホーム午後6時はどうなったんだ。それも明らかになるはず。
           
           
           
           

監督
リチャード・リンクレイター1960年7月テキサス州ヒューストン生まれ。

キャスト
イーサン・ホーク1970年11月テキサス州オースティン生まれ。
ジュリー・デルビー1969年12月フランス、パリ生まれ。