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1959年カンザス州の農家で家族全員が惨殺された。男二人、父親と息子。女二人、母親と娘。実際に起こった事件で、性的暴行の痕もないし金品が奪われてもいない。被害者宅は、周辺でも評判がよく怨恨は考えられない。自宅に現金を保管していることもない。支払いはいつも小切手だったという。捜査は難航する。
ところが、一時期この農家で働いていたという元受刑者が捜査当局に情報をもたらす。結果は、ペリー(ロバート・ブレイク)とディック(スコット・ウィルソン)の二人が逮捕される。死刑判決から絞首刑で終わる。
映画はモノクロで犯人の子供時代の恵まれない環境や受けたトラウマの様子に加え、犯行後の逃避行が語られる。
ペリーはディックの「絶対損のない話がある一緒にやろう」という言葉に仮出所の身でありながらそれに乗った。
導入部は、なかんかのもので観客の目を惹きつけてしまう。マイケル・ジャクソンを育てたといわれるクインシー・ジョーンズのジャズの旋律が雰囲気を盛り上げる。
気がついたのは、画面のつなぎ方だ。こんなシーンがある。髭を剃っている男がいる。洗顔のために蛇口にかがむ。顔を上げた場面は別の男という具合。こういう手法を多用してある。
尋問中はのらりくらりと逃げていたが証拠を突きつけられ、その犯行の詳細を語る。それが映像として描かれるが、手足を紐で結び無抵抗の状態で射殺する。
撃たれた状態の映像はないが、哀願する声や銃声で凄惨さが強調される。特に娘の哀願の言葉は目に焼きついて離れない。
原作は、トルーマン・カーポティーで犯人を取材している。中の一人に自身の過去の境遇と重ね合わせて同情する。
そこでこの冷血というタイトルについて口さがないらしい。犯人の冷酷さを表しているのは当然として、カーポティーが同情する犯人に対して「少しでも長生きさせたい」と思う反面「作品を発表するためには死刑執行が早く行われるのを望んだ」という葛藤に苦しんだ。その二面性ゆえ作者自身を表すのではないかも言われているらしい。
この「冷血」はカーポティーに富と名声をもたらしたが、その後は作品を一つも完成できなかったとも言われる。
この映画を監督したリチャード・ブルックスは、1955年「暴力教室」という作品で若者の間で評判となる。学校で不良少年が暴れるというお話だから大人には受け入れられなかった。
音楽もロックンロールの幕開けの曲とも言われるビル・ヘイリーの「ロック・アラウンド・ザ・クロック」がヒットした。懐かしい名前がある。ヴィック・モローとシドニー・ボワチエ。
本作は、アカデミー賞監督賞、音楽賞、撮影賞、脚本賞がノミネートされ、アメリカン・フィルム・インスティチュート法廷ドラマ部門の8位。
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なお、クインシー・ジョーンズの音楽もいいかもしれないが、監督にまつわる音楽で調子のいい「ロック・アラウンド・ザ・クロック」をどうぞ!
監督
リチャード・ブルックス1912年5月ペンシルベニア州フィラデルフィア生まれ。1992年3月没。
キャスト
ロバート・ブレイク1933年9月ニュージャージー州うまれ。
スコット・ウィルソン1942年3月ジョージア州アトランタ生まれ。