Netflixオリジナルの「ザ・クラウン」は、イギリスの女王エリザベス2世の治世を描く。1952年国王の父ジョージ6世の死去により女王として即位した。
現在94歳で在位中である。王配(夫)エディンバラ公爵は99歳だが、96歳のとき公務から引退した。
現在まで68年に亘る在位の中で、とりわけ内外の注目を集めたのは、1982年のアルゼンチンとのフォークランド紛争、1981年のチャールズ王太子とダイアナ妃との結婚そして2020年1月31日のEU離脱だろう。
特にミーハー的興味でチャールズ王太子の結婚は、世界中の興味の対象になった。それはひとえにダイアナ妃の類まれな美貌のせいだった。大きく開かれるあの青い目の魅力には、抗しがたい印象を持ったものだ。
「ストーリー・オブ・ダイアナ」は、ダイアナ妃の弟やバレエの教師、大衆紙の記者やスタイリストなどの証言を基にしたドキュメンタリー映画である。
パパラッチと言われるカメラマンの群れ。とにかく、1枚の写真で巨額を手に出来るとあれば、マナーもへったくれもないという様相を呈した。
そんな人気絶頂の夫妻が、なぜ離婚しなければならなかったのか。 という点は、「ザ・クラウン」に詳しい。
ちょっと触れておくと、ダイアナ妃の出自は、本宅がロンドンから100キロほど離れたノーサンプトンシャーのオルソープにあるオルソープ・ハウスであり、ロンドンにもスペンサー邸があるイギリスの名門貴族スペンサー伯爵家の三女として生まれる。働かないくてもいい境遇なのに、幼稚園で子供の世話をしていた。そういう体験が庶民性を育んだが、英王室では通用しない。
もともとチャールズは、ダイアナの姉セーラと親しくしていて、チャールズがオルソープの本宅を訪問した時ダイアナと言葉を交わした。それもダイアナの方から。そんなこんなで婚約の運びとなり、ダイアナがロンドンで家をシェアしていた女友達3人の祝福を受けてバッキンガム宮殿でいわゆる花嫁修業に入る。
ところが王室のしきたりと言うのが、ダイアナには苦痛に感じられた。挨拶の順番とか言葉遣いとか食卓のマナーとか貴族の出とはいえ自由に育ったダイアナには大きな負担となった。過食症に陥った。やたらに食べて指を喉に入れて、食べたものをすべて吐き出すということの繰り返しになった。
これに拍車をかけたのが、チャールズの行いなのだ。ダイアナにあまり寄り付かないのである。チャールズには公務とポロ競技がありそれが留守がちになる原因。それでも公務が終われば、恋人であるブルース・シャンド陸軍少佐の長女カミラ・パーカー・ボウルズの家に寄ってから帰宅するという見識のなさ。
結婚前の若い女性は、夫になる男性にはより一層寄り添って欲しいと願うもの。チャールズには思いやりというものがなかった。しかも、結婚後ダイアナの人気が沸騰するにつれ、それに嫉妬するのだから言葉がない。
チャールズに一言援護すれば、それは王室特有の子供の育て方もあったのかもしれない。なにしろ朝になれば女官? いわゆる女性従業員がベッドで寝ている人を無視してカーテンを開ける。本人は何もしなくてもいい。歯を磨き顔を洗い、服を着るだけでいい。食卓に着けば料理が運ばれてくる。そんな育ち方をすれば、思いやりの入る余地がないのかもしれない。
それでもダイアナにとって幸せなひとときもあった。王室では子連れの外遊は前例がなかった。ダイアナは生まれて間もないウィリアムを連れて行った。チャールズは渋面を作る。しかし、外遊先では夫婦が心の内をうちあけ、チャールズから「I love you」の言葉を受けてダイアナに微笑みが戻った。ウィリアムと一緒に遊んだり、パーティではダンスまで披露するむつまじさ。しかし、これらの場面は、ダイアナがおりに触れて思い出すことになる。
この二人はともに繊細な気質なので、相性という点では合わないのかもしれない。男から見れば、あんな美人の妻ならほかの人に目移りするはずがないと思うがなあ。
「ザ・クラウン」は、現在シーズン4まで公開されている。計画ではシーズン6まであるそうな。ただ、この作品の異色なところは、シーズン2毎に俳優が入れ替わるところだ。例えば、エリザベス女王2のシーズン2まではクレア・フォイが演じ、シーズン3と4は、オリヴィア・コールマンだし、ダイアナにはエマ・コリンからエリザベス・デビッキという具合。代わった時の違和感が、落ち着くまで少し時間がかかる。
「ストーリー・オブ・ダイアナ」では、離婚後のダイアナの男遍歴にも触れるが、さらりと流す感じ。ダイアナには悲劇が待ち受けていた。1997年8月31日、この頃ダイアナは二人の男と交際していた。
この日はそのうちの一人ドディ・アルファイドとデート、ドディのほか運転手、ボディーガードとダイアナが乗った車がパパラッチに追われ時速150キロのまま、トンネルの中央分離帯のコンクリートの激突、シートベルトを締めていたボディガード以外の3人が死亡した。ダイアナ享年36歳。
それにしてもこんなドラマをよく作ったと思う。これを観てチャールズ王太子がキライになる人も出るのではないか。ダイアナ妃が亡くなった後、カミラと結婚している。チャールズ王太子の本心は、カミラとの結婚だったんだろう。カミラの出自が貴族階級でなかったのが原因で、カミラが身を引いたと推測できる。
さて、上記のダンス・シーンに流れる曲は、フランキー・ヴァリの1967年のヒット作「君の瞳に恋してるCan't take my eyes off you」である。フランキー・ヴァリは、フォ・シーズンズのリード・ヴォーカルとして一世を風靡、ソロでも成功した。
2005年、ブロードウェイ・ミュージカル「ジャージー・ボーイズ」の中でフォ・シーズンズのヒット曲が多用され商業的に成功した。2014年に同名でクリント・イーストウッド監督によって映画化されている。ここでは映画のシーンから「君の瞳に恋してる」を聴いていただきましょう。また、「ザ・クラウン」の重厚なメインテーマ曲も、そして蛇足ながら作曲をしたのは有名なハンス・ジマーである。
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