ペーパームーン ムック紹介第2弾。 ちゃとと さんにお借りしています。㈱新書館 1979年7月10日 初版
先日アップの 「少女漫画 千一夜」 より一年半程前のペーパームーンムック版、この号の特集は 「夏の夜の夢」 です。表紙は 竹宮 惠子氏。
前回と同じく内容の紹介しか出来ないと思いますが、懐かしく見てくださればありがたいです。
特集が 「夏の夜の夢」 ということで、シェイクスピアの 「真夏の夜の夢」 にページを割いて、それを原作とした イルジー・トルンカ の人形アニメや他の画家達のイラストを紹介したりしていますが、少女漫画家さんたちの作品はちょっと離れて怪奇物や幽霊話やら心理的に怖い話などがまんがでもインタビューでも載っています。
巻頭のカラー4ページは 萩尾 望都氏 の 「むかし語りの終わり」 という短いけれど最近の萩尾氏に通じるようなダークっぽい作品。ハッピーエンドでなくて、突き放したような終わり方になっている。母親にお前は鬼だからと言われて育った女性の所に、森か木の精かなにやら分からない男が訪れるという話は、萩尾氏の最新のコミックス 「山へ行く」 に載っていた 私を愛してくれと言う黒い男 のシリーズにちょっと初めだけ似ているかしら。彼女は付いて行ってしまうんだけどね。
次のページには見開きで 大島 弓子氏 のカラーイラスト。白い服のはかなげな少女、と思ったら背中に大きな緑色の羽を背負っている。
- 三日間の人生が始まったばかりのかげろう -
ですって。なるほど。
次は 「箱の中の子供」 と言う題の 樹村 みのり氏 の淡い色合いの絵本のような絵物語。これは 安部公房 の 「箱男」 か、以前TV番組で見た箱の中で暮らし、人に移動してもらう 「箱の中の若者」 か。
子供の引きこもり (精神的なもの含む) を言及しているのかと思うが、この頃 (29年前) より今見たほうが断然現実的で怖いと思う。又、それを淡~い綺麗なカラーで表現されると余計怖いような。
他の絵物語は ささや ななえ氏 の 「聖者がいっぱい」 一人称で話しているが、どうも他人には自分が思っているようには自分が見えないらしい。今風に言えば浮いてる存在、KY (空気の読めないヤツ) か? と思ううちに話はだんだん深刻になって行って・・・。
ミステリーなどではよくある (?) 誰かが私を突き飛ばそうと狙っている--。でも本当は・・・という話。
- 隣にいる人間が何の動機も邪念もないままに人を殺さないと誰が言い切れるだろう -
文章だけでも充分鳥肌の立つお話でした。ささや氏ってこういうの上手いわ~{{{{(+_+)}}}}
マンガは、山岸 凉子氏 の 「グール」 と 佐藤 史生氏 の 「天使の繭」。
「グール」 はコミックスに収録されているものを持っていますが、こちらが初出だったのですね。大きな版でみると余計おどろおどろしい、餓鬼になってしまった自分を認めたくない海の遭難者の話。
佐藤 史生氏の 「天使の繭」 はこれまたちょっと難解な…。天才ダンサーの少年の精神世界・心象風景の描写が流石です。彼に興味を持って、精神の崩壊を食い止めるべく精神科医に連れて行く美形の男が 「天使のようなもの」 で、山下 和美氏 の 「不思議な少年」 を連想しました。
他にはイラスト付のエッセイ 竹宮 惠子氏の連作らしい 「鏡の国の少年たち ④」。「あやうくも美しい少年の季節」 と題して文学や映画の中の少年達を紹介している。ケーコたんの趣味全開で今見ると微笑んでしまう。
後は恒例の 少女漫画家さんたちへのアンケート、今回は夏向きの質問が多く、避暑地は海派 ? 山派 ? とか、今迄で一番怖かったことは ? 等など。
アンケートじゃないけど、山田 ミネコ氏 の幽霊との交友録が非常に怖かった。つくづく私は見る人でなくてよかったわ
あとは 伊東 愛子氏 の詩画のページで 「碧い海」。 若い頃死に分かれた妻に人生の最後に会いに行く男。彼女は海の底に沈んだ船の中の冷凍庫で若いままにいるはずだ・・・。
今はこういう人気漫画家総出演のアンソロジーは無理でしょうね~。