著者は会計論とファイナンスの明治大学商学部教授。<o:p></o:p>
ノーベル経済学賞(スエーデン国立銀行賞)の流れに沿ったファイナンスの知見とは面白い筋立てだ。アメリカは直接金融で、欧州・日本は間接金融というのは事実で、アメリカの本社は売却が多いが、欧州・日本は自社ビルが多いのが特徴でもある。つまり、アメリカ型金融が独自ともいえる。<o:p></o:p>
株式は最後の資金調達手段(ペッキング・オーダー理論)で経営者の選好性が低いことを明らかにしている。日本はドイツ法型で明文化のため条文に無いことは禁止でこれが裁量行政を生んだとの「私見」は秀逸だ。<o:p></o:p>
株式はの歴史についても無限責任の東インド会社から準則主義+産業革命+証券取引所=近代株式会社は分り易い。<o:p></o:p>
つぎにコーポレート・ガバナンスで、かつての日本のメインバンクは間接金融として強い力があったこと、株主(プリンシパル)より経営者(エージェント)の支配が強いこと(エージェンシー理論につながる)、監視機関の必要性などの指摘がある。ファイナンシャル・ゲートキーパーとして公認会計士があるが、その活用はエンロン事件などの影響もあり監査と連動とある。また証券アナリスト(セルサイド)や格付け会社の利益相反の指摘は切実な課題だ。<o:p></o:p>
モジリアーニの借入れと株の均衡、税金が無ければ内部留保と資金調達の差はないこと、ポートフォリオ理論、CAPMのβ(個別株のリスク感応度:システマティック・リスク)やリスクの混合による低下があること、オプション理論のδ(オプション価格の市場感応度)とCDSなどリスクの保険料を説明しており分り易い。<o:p></o:p>
行動経済学もあり、結局は「人」が扱うものでもありインサイダー問題、複雑化しすぎた証券化、どんどん売ったローンと転売による責任の不在、証券化による拡散と資本主義全体のシステミック・リスク化、格付けの利益相反に話が及んでいて、論旨の展開が良い。<o:p></o:p>
その結果、コーポレート・ガバナンスからマーケット・ガバナンスを「ルールの束」の必要性として採り上げている。新制度は経済学というらしい。ノーベル経済学賞ではサイモン、コール、カーネマン、ウイリアムソンとのこと、一度読んで見よう。<o:p></o:p>
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まとまりが良く「株」の入門にもお薦め<o:p></o:p>
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