ギリシャ神話のオルフェウスは、妻のエウリディケが毒ヘビにかまれて亡くなると、妻を連れ戻すため、黄泉の国へ出掛けます。冥界の神には「地上に戻るまで振り向いてはならない」という条件で許しを得ますが、妻が後にいるかどうか心配のあまり振り向き、結局連れ戻せずに終わります。モンテヴェルディは、この悲劇をそのままオペラにしました。
これをパロディーにしたのが、オッフェンバッハのオペレッタ「地獄のオルフェウス」。オルフェウスとエウリディケは互いに飽き飽きしていて浮気志向。そこへ黄泉の国の神プルートーが現れエウリディケを誘拐。オルフェウスは妻がいなくなって大喜びしますが「世論」に脅迫され、仕方なくオリンポスのジュピターに訴えます。
オリンポスの神々も全く退屈しきっていて、皆揃ってプルートーのところへ。浮気者のジュピターはエウリディケが欲しくなりますが「世論」にうるさく迫られ「振り返らない」条件付で、連れ戻すことを許します。もちろん、ジュピターは途中で武器である稲妻を使ってオルフェウスを振り返らせます。オルフェウスは一人で去り、めでたし、めでたし。
蛇足
このオペレッタは日本では「天国と地獄」と呼ばれています。名高い「地獄のギャロップ」は「フレンチ・カンカン」として知られ、よく運動会などのBGMに使われます。オッフェンバッハはドイツ生まれですがパリに住み、フランス人は「はひふへほ」が発音できないので、フランス式にはオフェンバックと呼ばれます。