前回のヨゼフィーヌムついでに、もう一度
ヨーゼフ皇帝について
以前に
孤独な皇帝としてフランツ・ヨーゼフI世について書きましたが、ヨーゼフII世も別の意味で孤独な皇帝でした。
1764年3月27日、戴冠式のヨーゼフII世
ヨーゼフII世は典型的な
啓蒙専制君主で、数々の先進的な改革を行いましたが、その多くは先進的過ぎて臣民に理解されず、治世後半に撤回せざるを得ませんでした。
皇帝家の狩猟場であった
プラーターを市民に開放したのもヨーゼフII世です。
多分最も知られているエピソードのひとつは:
あるとき臣下が「陛下は皇帝なのですから、身分の低いものばかりとつきあわず、もっと身分の高い方々ともおつきあいください」と言うと、ヨーゼフ皇帝は「自分と対等の身分の人間とだけつきあうとしたら、毎日カプツィーナ墓所にこもっていなければならない」と答えました。
カプツィーナ墓所には17世紀半ば以降のハプスブルク家の人々の棺が収められています。
ヨーゼフII世は最初に結婚した
皇妃を深く愛していましたが、彼女は2度目のお産のとき亡くなりました。これがトラウマとなり、二度と結婚すまいと思ったのですが、皇帝が独り身では問題だと言う周囲の強制で再婚。しかし2人目の皇妃には殆ど見向きもしませんでした。
こうして彼は子供のないまま急逝し、弟の
レオポルト大公が後継者となりました。
古い
映画アマデウスにヨーゼフ皇帝が登場します。モーツァルトを後援していたヨーゼフII世が1790年に急逝したのはモーツァルトにも大きな打撃でした。モーツァルトは1791年に世を去っています。映画の最後に出てくる貧弱な木製の棺は決してモーツァルトが貧困だったからではなく、質実剛健を旨としたヨーゼフII世の考案した「繰り返し使える棺」です。
モーツァルトがヨーゼフII世と会う場面
モーツァルトは実際にも奇矯な人物だったようですが、映画では、それを強調するため、やや誇張のきらいがあります。それで「本国」のオーストリアでは、子供に誤ったイメージを植えつけないため、として映画鑑賞に年齢制限をしたそうです。
映画では
サリエリが悪役になっていますが、実際にはサリエリとモーツァルトの間柄も友好的なものだったようです。