「
琥珀の目の兎」で世界的に知られるようになった貴重な値付けコレクションを、ナチスの手から守った女性については、以前に「
女傑の空白」で紹介しました。
さてヒトラーを暗殺しようとした
7月20日事件にも女傑が存在しました。
しかも、彼女なしには事が運ばない、という重要な役割を遂行した女性です。
マルガレーテ・フォン・オーフェンは、いわば楚々とした女傑です。
彼女の父親はプロイセン近衛連隊の司令官だったのですが第一次大戦で戦死。彼女は家計のため秘書として国防省に勤めるようになりました。
コンピューターの無い時代、タイプライターが打てることは、極めて重要なスキルでした。彼女は何回か国防省関係の極秘のミッションにも関わっています。
1943年に
渦中の人で紹介した
ヘニング・フォン・トレスコウの要請で、彼のもとで秘書を務めるようになりました。トレスコウは
シュタウフェンベルクとともに
ワルキューレ作戦の段取りを検討し、事態の変化に応じて作戦も修正しました。その際マルガレーテは常に一緒でした。
彼女の役割は作戦の詳細をタイプし、変更があれば新たにタイプし、更に極秘裏に計画書を管理することでした。変更のため不要となった計画書は、彼女がトイレで焼きました。それでも大量にたまった書類は、シュタウフェンベルク夫人の
ニーナがリュックサックに入れて持ち出し、安全な環境で焼却しています。
トレスコウはマルガレーテを全面的に信頼していました。それはトレスコウ夫人がマルガレーテと幼馴染で親友だったからです。マルガレーテは頻繁にトレスコウ家を訪問し、彼らはヒトラーとナチスに批判的で、そうした議論も自由に行われました。
シュタウフェンベルク家の場合は、妻を心配させないためシュタウフェンベルクが詳しい話をしなかったので、後にニーナは、ヒトラーを殺すための時限爆弾を設置したのが夫だったと知って驚愕しました。
トレスコウが前線で指揮にあたっているとき、マルガレーテが同志の間の連絡係となっていました。
あるときトレスコウは、マルガレーテの協力に感謝して金の腕輪をプレゼントしました。彼女は、その腕輪を生涯肌身離さず身につけ、形見としてトレスコウの娘に贈りました。
すみません。少なくとも、あと1回続きます