「宮崎正弘の国際情勢解題」
令和弐年(2020)1月9日(木曜日)弐
通巻6337号
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<<休刊のお知らせ>> 明日10日—13日は海外取材のため休刊です。
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中国生産基地の空洞化は想定より迅速、対米輸出の激減ぶりは凄まじい
製造業は中国から逃げ出した。「世界の工場」は曠野に変貌した
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2019年に中国からの対米輸出は20・8%の激減を示した。
いうまでもなく米中貿易戦争の勃発、高関税の影響だが、過去30年間の賃金上昇が基本の要素である。中国の賃金は日本並みになった産業はIT、通信関連だ。競争力は失われる。
高関税のため中国に於ける生産は赤字に転落した企業が目立つ。
まず中国の繊維産業、雑貨、スポーツシューズ、玩具などの企業が中国から脱出し、アジアに工場を建設した。
ついで中国に進出した外国企業が、この波に乗る。外国企業が逃げ遅れたのは、撤退条件が厳しく、手続きに時間がかかるからだ。工場設備の移転は困難を伴うのだ。日本企業の中小零細は、撤退するに際しておよそ一千万円の支出を余儀なくされたという。
同期、対米輸出を激増させた国々がある。
ベトナム 51・6%の激増
台湾 30・0%の増加(以下同)
タイ 19・7%
インドネシア 14・6%
メキシコ 12・7%
マレーシア 11・3%
(数次はサウスチャイナモーニングポスト、2020年1月8日)
カンボジア、ラオス、フィリピンなどが、この列に続いている。
激減傾向はとまらない。
おそらく2020年は、2019年よりも多くの企業が中国から脱出することになると中国専門家は予測している。
第一にたとえ米国が関税を引き下げて米中貿易戦争が解決しても、いったん出て行った企業は中国には戻らない。
第二に製造業にとって、部品、部材企業がすでに脱出しているため、中国国内のサプライチェーンが崩壊している。物理的な強制力をともなって、撤退せざるを得ないのだ。
第三に賃金を低めにしても、現在の中国人はいちど贅沢を知ってしまった。安い工場への労働力は消滅しつつある。
かつて中国の繁栄は続く、経済成長は安定的に持続すると唱えていたエコノミスト達もいまは静かである。中国「賛歌」は「惨禍」となった。