「宮崎正弘の国際情勢解題」
令和弐年(2020)1月21日(火曜日)
通巻6347号
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「社債は償還できなくなりました」。
中国企業の債務不履行(デフォルト)が「ブーム」に
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山東省といえば軍人出身者が多い土地柄であり、孔子の生まれ故郷だ。
軍港も多く、安全保障上の要衝である。渤海湾沿岸の諸都市は一時期、韓国からの投資が目立ったが、不景気と共に多くが夜逃げ、マンションは歯が抜けたようになって済南、青島、威海衛など、経済的にぱっとしなかった。
三洋電機と提携したハイエール(海爾)も電化製品の売れ行きが横ばいからマイナス。つまり山東省を牽引する主力産業がなくなった。
アルミ産業はやたら電気を使う。コーン油の大手「西王集団」が社債デフォルト(150億円)をやらかし、中国の社債市場に警鐘が乱打された。
ドル不足に陥った当局の政策変更で与信枠が縮小した(デレバレッジ=過剰債務の圧縮)ばかりか、共通するのは銀行が「借りろ、借りろ」と薦めたため、具体的な拡大計画も青写真もなく、無造作に巨額を借りた。
土地投機、株式、FX相場への投機にあて、海外における企業買収(たとえば山東省の山東如意集団は英国の老舗テキスタイルを買収した)や無謀な設備投資(中国宏橋集団など)、ブームに乗り遅れた不動産投機などで焦げ付きが生じ、つぎに銀行が「貸しはがし」に転じたため、社債パンクが連鎖した。
内蒙古省の地方政府直轄企業とも言える「フフホト経済技術開発区投資開発集団」が発行した債券は昨師走に償還が出来なかった。デフォルトは准公的機関でも起こり、株式なら下落だが、安心といわれた債券の償還不履行となったのだ。
省都フフホトの包商銀行は破産し、公的機関の管理に置かれた。地方銀行の破産が併行して起きた。
もっとも衝撃的なデフォルトは中信国安集団である。この中信は、CITIC傘下であり、信用があるとされた。67億円の預金が凍結された。
引き続きカリウム肥料大手の「青海塩湖工業」、ゼネコンの「南京建工産業集団」。また海航集団関連の大新華航空、東旭光電科技、永泰能源などの債務不履行が連続した。
中国の債権市場の規模はおよそ500兆円、2020年1月からは「ジャンク債市場」を整備する。ジャンク債というのは投資危険というグレードの債券である。
それでなくとも中国民間企業の社債デフォルトは4・9%に達し、異様な状況に陥っている。
武漢の肺炎のように、またたくまに債務不履行の蔓延だ。
2019年12月、天津物産集団がデフォルト(330億ドルのドル建て債券)、ついで北大方正集団が310億円の社債償還が出来ず、政府の継続的援助の展望が望めないことが判明した。
北大方正集団のデフォルトはまだ確定してはいないが、ベンチャーの嚆矢として華やかなビジネス展開をしてきた有名な大学ベンチャーゆえに、去就が世界から注目されるのも無理はない。
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