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書評 しょひょう BOOKREVIEW 書評 BOOKREVIEW
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エジプト大統領の側近が、じつはイスラエルのスパイだった
最高の機密を掴んで、戦争の準備状況をエルサレムに知らせていた
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ウリ・バル=ヨセフ著、持田鋼一郎訳『モサド最強のスパイ』(ミルトス)
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事実は小説より奇なり。
エジプト大統領の最側近が、イスラエルのスパイだった。
嘗てはシリアの参謀総長の親友が、やはりイスラエルのスパイだった。
世界にはよくある話、FDR政権はおびただしいソ連のスパイがいた。ノモンハン師団長の小松原はソ連のスパイだった。
日本でも以前は有能な愛国的スパイがいたが、いまは制度的に日本人スパイは存在しない。ところが外国のスパイになっている日本人がかなりいる。平和惚け日本では、これを取り締まる法律がない。だから日本はスパイ天国と言われるのだが、じつはさほどの機密がないから、スパイにとってもつまらないのではないか。
在日の外国人スパイにしても、殆どの情報はおおやけにされており、政治家は気軽に会えるし、機密、最高機密の区分けもないのでペラペラ喋る。なにしろ日本の政治家には国家安全保障という概念が欠如している。
冗談は措くとして、さてエジプトの英雄だったナセル大統領の女婿が、じつはイスラエルのスパイだったという世紀の大事件を本書は克明に追及し、年月を掛けて仕上げた現代史の舞台裏を詳述する記念碑的作品である。
ナセルはアラブの英雄として、いまも高い評価があり、シシ現職大統領もナセルを尊敬している。スエズ戦争など失敗の多い政治家だが、ナショナリズムを鼓吹した。
この物語はナセル死後から本格化する。
暗号名「エンジェル」。
1966年、アシュラフ・マルワンはナセルの愛娘で次女のモナと結婚した。大統領側近として世界の社交界に人脈を拡げ、また利権も多く、マルワンは大実業家になった。
1970年にロンドンでイスラエルのモサドと接触した。ときのエジプト政権はサダト。もちろん、マルワンはサダトに深く食い入り、軍事情報を、それも最高機密情報を掴んだ。エジプトがイスラエルと戦争を準備していた。イスラエルは単なる軍事演習とみていた。
マルワンはイスラエルのスパイだったが、同時に二重スパイでもあり、その複雑怪奇な、緊張感が連続するサスペンスは本書のお楽しみ。
しかし「用済みとなってスパイは消される」。
マルワンは2007年、ロンドンで死んだ。謎の死だった。
本書の解説を佐藤優氏が書いている。