フランス悩ます「旧植民地の禍根」 ニューカレドニア暴動、中国の浸透にも警戒
南太平洋にあるフランス領ニューカレドニアで今月、分離独立派による暴動が起きた。旧植民地に残る先住民の禍根が背景にあり、マクロン仏大統領が進めるインド太平洋戦略に不安を投げかけた。独立派をあおる外国の干渉も明らかになり、フランスでは中国の浸透に対する警戒が強まった。
暴動は13日から続き、警官を含めて7人が死亡した。現地時間の28日朝に非常事態は解除されることになったが、緊張は続く。交流サイト(SNS)では「仏警察は殺し屋」「植民地主義を終わらせろ」という憎悪の言葉が飛び交う。 暴動は選挙制度改革に対する独立派の反発が契機になった。仏政府は、外交関係が悪化する旧ソ連のアゼルバイジャンがSNSなどを通じて独立派の暴動をあおったと非難した。
■インド太平洋戦略の要衝 南太平洋では中国が影響力を広げており、フランスではアゼルバイジャン以上に「中国の危険」に気を付けよという警告も出た。政府与党のクロード・マリュレ上院議員は仏紙で、「中国は熟れた果実のようにニューカレドニアが手中に落ちるのを待っている」と指摘。中国は南太平洋に覇権を広げると同時に、島の主産品ニッケルを狙っていると訴えた。ニッケルは電気自動車(EV)バッテリーの原料で、ニューカレドニアは世界3位の生産地だ。 米中攻防が激しくなる中、ニューカレドニアは仏インド太平洋戦略の要衝として重要度を増していた。
豪州の東にある島で、中国が接近するパプアニューギニアやソロモン諸島と海を隔てて対峙(たいじ)する。 中国はニューカレドニアのニッケル輸出の4割以上を占める最大の貿易相手。2021年には仏国防省傘下の研究機関が、「独立派は中国の影響下にある」と指摘した。この島を対中包囲網の要所とみて、親睦団体を通じて独立派に食い込んでいると分析した。
マクロン大統領は昨夏のニューカレドニア訪問時、「独立すれば中国の基地を受け入れることになる。それでいいのか」と独立派を牽制(けんせい)した。 暴動の発端となった選挙制度改革は、ニューカレドニアの民主主義を正常化する狙いがあった。島では仏政府との1998年の合意に基づき、独立の是非を問う住民投票が3度行われ、新規住民にはその間、地方選挙権が与えられなかった。独立がすべての投票で否決されたのを受け、政府は憲法を改正して新規住民への選挙権付与に踏み切ろうとした。