フィールドノート

連続した日々の一つ一つに明確な輪郭を与えるために

9月11日(金) 晴れ

2009-09-12 23:23:32 | Weblog

  当初の予定では午前中にゲラの校正を終えて、午後は映画でも観に行くつもりでいたが、結局、校正作業が3時頃までかかってしまったので、ゲラは宅配便ではなく、目黒にある出版社まで散歩を兼ねて自分で直接届けることにした。山の手線の目黒駅で下車し、行人坂というとんでもなく急な坂道を下って、雅叙園の横を通り、目黒川にかかる橋(太鼓橋)を渡り、山手通りに出る。歩道橋をわたってすぐのところ(徒歩12分)。ゲラを渡し、社員のみなさんとしばし雑談。


行人坂(登ってくる人たちはみな前かがみだ)

  帰りは、あの坂道を登るのではなくて、東急目黒線の不動前駅までの道を教えてもらう。徒歩10分だが、目黒不動に寄り道する。境内を歩いていたら、基礎演習の学生からケータイにメールが届いた。夏休みのレポート、規定の8000字をオーバーしてもかまいませんかという問い合わせだった。かまいませんよ、とメールを返す。そろそろ私も秋学期の授業の準備を始めないとならない。


みずかけ不動明王(後光が射している)

  多摩川駅で目黒線から多摩川線に乗り換えるとき、途中下車して、土手に出てみる。夏の終わりの夕焼けの空。

  丸子橋のたもとに昔からやっている釣り道具やさんがあって、ミミズも売っている。おばさんにミミズの太さを尋ねたら、太いのと細いのがあるとのこと。細いミミズを子雀の餌にしようと購入。300円。渡されたプラスチックの容器にはおがくずのようなものがぎっしり詰まっていて、ミミズたちはその中だ。何匹入っているのかと尋ねたら、おばさんは呆れたような顔をして、数えたことなんてないわと言った。こんなことを尋ねた客は私が初めてなのだろうか。数える気にならないくらいたくさんであることは間違いないようだ。おばさんが言うには、ミミズはプラスチックの容器に入れたまま冷蔵庫の野菜室に入れておくと長く生きるそうだ。でも、それは妻が許さないだろうと、おばさんの話に頷きながらも、私は思った。妻に内緒で入れておくという手はあるが、妻がプラスチックの容器に気づいて、何だろうと開けたときのことを考えると、あまりにリスキーだ。我が家で一番涼しい場所は1階の書庫だから、そこに置いておこう。

  多摩川線の車内は女性客が多かった。もしかして女性専用車輌に乗ってしまったのかと思ったほどだ。私の座ったシートの向かいのシートは8人とも全員女性だ。私の手にしている紙袋の中にはたくさんの、釣り道具屋のおばさんも数えたことのないくらいたくさんの、ミミズがいる。でも、車内の乗客の誰一人としてそのことを知らない。考えてみると、これは手に汗を握るほどスリリングな状況ではなかろうか。
  帰宅してさっそく子雀にミミズを一匹与えてみた。欣喜雀躍するかと思いきや、子雀は首をかしげつつ、口ばしの先でミミズをつんつんしただけで、食べなかった。ミミズも迷惑そうにしていた。(結局、ミミズたちは庭土に解放してやった。せいぜい我が家の土壌を豊かにすることに貢献してほしい)。