午前中に子雀を鳥篭に入れ、電車に乗って、田園調布の「小鳥の病院」へ連れて行く。電話で「雀ですが診ていただけますか」と問い合わせたら「どうぞ」といってもらえたのである。田園調布の駅から歩いて2分ほどの住宅街に「小鳥の病院」はあった。私の前に4人の「患者」(を抱えた人間)がいて、順番を待っていた。待合室と診察室の境目はないので、治療や説明の様子が全部わかる。人間の病院だったらありえないが、実に勉強になる。「へぇ」と思うことばかりだ。やがて子雀の診察の順番が来る。医師は子雀を籠から取り出して、こう言った。「これは雀の天然痘です。」予想もしていなかった病名にびっくりした。あとからインターネットで調べたら「雀痘」と呼ばれているもので、ほかに「カナリア痘」とか「鶏痘」とかいろいろな種類があるらしい。免疫力の弱い子雀がかかりやすい(発症しやすい)のだという。本来であればそういう弱い子雀は巣立ちの過程で淘汰されてしまうのだが、その落ちこぼれの子雀を私が拾ったということである。抗生剤の飲み薬(朝晩4滴)と、免疫力を高めるための栄養価の高い餌を渡される。いまの状態でリリースするのは無理で、とにかく免疫力の向上が先決で、免疫力が高まれば痘瘡は小さくなっていくとのこと。問題は新しい餌を子雀がちゃんと食べるかどうかということ。来週また診せにくるように言われる(私はゼミ合宿なので、妻か息子に頼もう)。帰宅して、さっそく新しい餌を与えてみる。白い粉をお湯でペースト状(マッシュポテトみたいな感じ)にして、少しばかり粟玉をまぜて、耳かき棒に塗って子雀の顔の前にもっていくと、ちゃんと食べた。とりあえずホッとする。
午後、大学へ。研究室で面会を2件。帰りがけにあゆみ書房で鷲巣力編『加藤周一が書いた加藤周一』(平凡社)という面白いタイトルの本を購入。加藤周一が自分の本に付けた「あとがき」91篇と「まえがき」11篇を収めたもの。私のように「まえがき」や「あとがき」を読むのが好きな人間にはたまらない本である。