9時、起床。
今日の「ごちそうさん」。一つのテーマ(問題)は一週間で終わる(解決する)、翌週にひっぱらない、というのが朝ドラの原則である。今週のテーマ(悠太郎の浮気疑惑)もはたしてそうなのだろうか、問題は深刻なようである、と思っていたら、なんのなんの、やはり原則は守られたのである。夫婦は元のさやに納まった。
「亜希のカレーはそれなりに美味しかったですけど、僕には無理です。あなたのカレーがある限り、よそのカレーを心からうまいというのは僕には無理なんです。ぼくはたぶんよそでどんなカレーを食べてもあなたのカレーを思い出してしまうんです。あなたのところに戻ってきてしまうんです。」(by悠太郎)
釈然としない部分はあるもののめ以子は悠太郎を許すのである。め以子がカレー用の肉を買いにいったときに玄太が言った一言は、視聴者の反応を予想しての脚本家の自己言及である。「安いおなごやのう、結局、カレーひとつでコロリか」。
しかし、コロリといかないおなごもいるであろう。実際、私の妻がそうである。妻は毅然とした口調で言う。「もしあのとき亜希子が拒まなかったら二人は一線を越えたわけでしょ。悠太郎が自分の意志で踏みとどまったのではなくて、亜希子に拒まれて、越えられなかっただけよね。つまり悠太郎は浮気をしようとしたわけよ。これはダメよ。」はい、おっしゃる通りです。なぜか叱られているような気分になる。
10時に家を出て、大学へ。大手町のホームの売店で『an an』を購入。岡田准一のまなざしに惹かれて・・・というわけではなくて、特集のテーマが「東京」であったからだ。「東京」への憧れは近代日本人の人生の物語に通底するテーマの1つであるが、まだまだ賞味期限は切れていないようである。
ゼミの卒業生(3期生)のIさんとHさんが研究室にやってくる。Hさんは山形の支店で働いているが、数日前から研修で上京しているのである。二人は仲良しで二人そろってやってくるのはこれで二度目である。
二人の希望で昼食は「SKIPA」に食べに行く。
私とIさんは定食を、Hさんはチキンカレーを注文。Iさんは「SKIPA」は初めて、Hさんは二度目だ。美味しくてヘルシーな料理に二人とも満足。
そして宙太さん、のんちゃん夫婦とも話ができて、大満足のようであった。
神楽坂の駅で二人とは別れる。二人は高田馬場方面、私は大手町方面だ。「じゃあね」と私が言うと、「先生って、いつも別れ方があっさりしてますよね(笑)」と言われる。去年の卒業のときのことを言っているらしい。確かに、卒業パーティーのときも、卒業式のときも、「じゃあ、また」と言って、まるで来週授業で会うみたいな感じで私は君たちと別れた。これは別に情が薄いわけではありません。一種のダンディズム、別れの美学なんです(笑)。大袈裟に別れを惜しむと、本当にもう会えないかもしれないでしょ。あっさりと別れるのは、また気楽に会いたいからですよ。
何気ない毎日が
風のように過ぎてゆく
この街で君と出会い
この街で君と過ごす
この街で君と別れたことも
僕はきっと忘れるだろう
それでもいつか
どこかの街で会ったなら
肩を叩いて微笑んでおくれ (「いつか街で会ったなら」 詞:喜多條忠 曲:吉田拓郎 歌:中村雅俊)
東京ステーションギャラリーで今日から始まった「プライベート・ユートピア ここだけの場所(ブリティッシュ・カウンシル・コレクションにみる英国美術の現在)」を のぞいていく。3月9日まで。
「制度に支配された時代や物質が溢れ返る時代を経て、今、私たちは「私」(private)の時代を生きています。それは単なる個の時代ではなく、その個が表向きには閉ざされた空間の中でそれぞれに成熟し、現代の技術がそれらの世界を隣り合う細胞のように結び付け、自ずとルールを生成しては、その価値観を全人類と共有している世界です。そこにはもはや公も私もなく、ここにしかない場所であると同時に、どこにでも繋がっている世界―「ユートピア」(utopia=nowhere)といってもいいでしょう。
1990年代以降、ますます活気づく英国のアートシーンは、そうした時代の様相を映し出すアーティストを数多く輩出してきました。本展で紹介する彼らの些細な日常品を応用したり、ふとした視点の転換を提案するなど、すぐそばに有りながらも知らなかった世界へと私たちを誘ってくれます。また自己の有り様をも浮かび上がらせる一条の光でもあります。」(日本側主催者あいさつ、図録6頁)
「ユートピア」というのは「どこにもない場所」というのが一般的な理解だと思うが、それを「ここにしかない場所であると同時に、どこにでも繋がっている世界」というふうに再解釈している点が面白いと思う。
たくさんのアーティストの作品を観たが、私にとって圧倒的に興味深かったのは、ジェレミー・デラーの「あなたを傷つける様々な方法(エイドリアン・ストリートの人生と時代)という作品である。ゲイ・ギミックで有名な年老いたプロレスラーが語るライフストーリーのドキュメンタリー映像作品であった。
小腹が空いたので、蒲田に戻ってから、「まやんち」でサンドウィッチを食べる。
くまざわ書店で以下の本を購入。
アリス・マンロー『ディア・ライフ』(新潮社)
加藤周一『最終講義』(かもがわ出版)
NHKスペシャル取材班『老人漂流社会』(主婦と生活社)
本橋信宏『東京最後の異界 鶯谷』(宝島社)
『英語で読む村上春樹』2月号(NHKラジオテキスト)
本日の夕食の献立はフライの盛り合わせ(海老、ウィンナー、玉ねぎ)。冒頭に書いた、悠太郎の言い訳は納得がいかないという妻の語りはこの場で語られたものである。
食後の甘味は「梅花亭」で買ってきたうぐいす餅とみたらし団子。