10時15分、起床。
4時半ごろに薬を飲んだら、8時半くらいには目が覚めるだろと見込んだが、思いのほか寝てしまった。
トースト、ハム&エッグ、サラダ、牛乳、紅茶の朝食。
午後3時、そろそろ家を出ようかというときに、妻が「お昼どうする? 焼きそば作ろうか?」と言ったので、「いますぐ食べる」と答える。
3時25分に家を出る。暑さの峠を越えて、夏が旅支度を始めている空だ。
3時35分発の蒲田始発に乗る。夏の終りのガラガラ電車は風通しがいい。
早稲田には4時20分に着いた。 人影のまばらな南門通りを歩く。
早稲田小劇場どらま館。4時半から、劇団ガガの旗揚げ公演『大西部激熱活劇 海を知らぬ少女の前にカウボーイハットのわれは』の千秋楽である。
ガガというのは早稲田の演劇出身の仲間たちが立ち上げた演劇ユニットである。卒業生のサワチさん(論系ゼミ7期生)が参加するというので、千秋楽の公演を観に来た。
西部劇である。白人とインディアンの戦いである。涙の川を間に挟んで、白人の町とインディアン(リボ―族)の土地が対峙している。白人の町の主要な舞台は、人生から落ちこぼれたような連中がたむろする「豚のホテル」、威勢のいい女たちの娼館「人間の仕事」、そして市庁舎である。 そこにはさまざまな人間的な欲望が渦巻いている。一方、リボー族も決して一枚岩ではなく、あくまでここに留まって白人と戦おうとする者、白人の手の及ばない土地に移ろうとする者たちの対立がある。2人の白人、マック(元北軍士官)とアープ(元保安官)は白人とインディアンの橋渡しをする存在である。2人は親友で、他の白人とは違う何者かとしてインディアンの社会に受け入れられた経験をもっている。この辺りの設定は、ケビン・コスナー主演の映画『ダンス・ウィズ・ウィルブス』(1990年)を下敷きにしているのだろう。インディアンの名前の付け方がそっくりなので、間違いないだろう。脚本の神山慎太郎は西部劇をずいぶんたくさん知っているようだから、もしかしたら白人の町の設定も何かの作品を模しているのかもしれないが、私には分からない。むしろ私が思ったのは、サワチさんがが出演したさまざなの劇団の芝居で娼館や廓が舞台になっていたことについてで、なぜ娼館がこれほどまでに演劇人たちをひきつけるのかということだ。そこは男の性的欲望の場所というよりも、アナーキーな空間であり、人間の根源的な欲望と、それと表裏一体の男女の一途な愛と、結束する元気な女たちがいる場所である。
80分ほどで中入。外に出て、自販機のジュースで喉を潤す。
後半の60分は、白人の町の方では娼婦のアミ―と彼女のヒモのモンコの逃避行、インディアンの土地の方ではマックとインディアンの娘(炎を抱く腕)の再会が物語の焦点である。モンコは戦闘のトラウマで性交不能になっている(まるでベトナム戦争の帰還兵みたいだ)。一方、マックはインディアンの娘を裏切って娘を死の淵に追いやってしまった過去をもつ。モンコが勃起する場面は感動的であると同時にコミカルであるが、マックとインディアンの娘が迫りくる死(火山の噴煙)の前で、かつてマックが娘にした「海を見せてあげる」という約束が果たされる場面は純粋に感動的で、私の右の眼からは涙がこぼれた(なぜだか私は右の目からしか涙が流れないのだ)。
終演後、会場の外でサワチさんと面会した。今回彼女はゴーストの役で出ていた。黄泉の世界からの使者のようでもあり、マックに裏切られて死んだ(も同然の)インディアンの娘の仮象のようでもある。生きた娘の愛らしさと、死んだ女の怨念の両方を演じて見事だった。
私にとってのサプライズは、娼婦の一人(ミミ)を演じていたのが卒業生のミサキさん(文学部社会学コース出身)だったことだ。彼女は私の講義「日常生活の社会学」を履修していて、大変印象的なレビューシートを書いてくれて、それで記憶に残っていた(大教室の学生でそういうことはめったにない)。まさかこんなところで再会するとは思っていなかったので、びっくりした。2人は同じ演劇サークルの同期だったそうである。そうだったんですか。それで思い出したが、ミサキさんは9月卒業で、私はその卒業式で彼女と話をしたとき、卒業後は仕事の傍ら演劇を続けていきたいと言っていた。演劇、続けていたんですね。生き生きとしたいい表情をされてますね。
どらま館を出たのは7時を過ぎた頃。
ちょっと用事があって研究室に寄って行く。日曜日のこの時間、すでに門は閉まっているが、警備の人に言って中に入る。
原稿を書くのに必要な資料を持ち帰る。
8月も最後の一週間となったな。
夕食は「てんや」で食べる。
先日、蒲田の「てんや」で食べておいしかった穴子とめごちの天丼、そこに温かい小うどんを付けて(1000円)。
穴子、めごち、エビ、オクラ、海苔、紅生姜のかき揚げ。
9時半、帰宅。
バドミントンの世界選手権をテレビでやっていた。男子シングルスで桃田賢斗が見事に連覇を果たした。波に乗ったときの彼を止められるものは、いま、誰もいない。まさに世界が認めた王者だ。
2時半、就寝。今夜は最初から薬を飲んで寝た。