温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

台温泉 精華の湯(2013年6月再訪)

2013年07月04日 | 岩手県
 
拙ブログを立ち上げて間もない2009年6月に、台温泉の日帰り入浴専門施設「精華の湯」を取り上げております(その当時の記事はこちら)。当時の拙ブログは内容も構成も稚拙で貧弱、今となってはとても皆様にお見せできるような代物ではない羞恥の塊なのですが、「精華の湯」が2012年秋にリニューアルしたという情報を得たので、改めてきちんとした記事をアップすべく、先日再訪問してまいりました。外観には特に目立った変更点は無いようですね。


 
館内は確かに以前と比べて綺麗でこざっぱりしているような気がします(私の記憶が朧げなので、はっきりしたことは言えませんが…)。
上がり框に設置されたカウンターの上には小さな券売機が置かれており、訪問時には無人状態でしたので、自分で券売機から発行された券を、鍵が付いた小さな箱へ投入しました。箱の下に提げられている「当店はお客様との信頼関係により運営されております」という札が、不埒な輩による無銭入浴をやんわりと牽制しています。


 
浴室入口手前にはご当地らしく小岩井のビン牛乳自販機が設置されていました。話が前後しますが、当然湯上りには腰に手を当てながらビン牛乳を一気飲み。「をとこ」の暖簾を潜って中へ。


 
曖昧な私の記憶でも明確に申し上げられることの一つとして、脱衣室は明らかに綺麗になり、通気性も良くなりました。普段から意図的に渋い温泉施設を巡っている私でも、綺麗な施設に出会うとやっぱり気分が上向きになるものです。なぜか更衣エリアを蔑ろにするような施設って意外と多いのですが、快適な状態で更衣できることは、気持よく湯船に浸かることと同じくらいに、入浴においては大切なことでありますから、こうして綺麗な脱衣室を使わせてもらえることは、温泉めぐりをしている私のような人間にとっては非常にありがたく思います。なお室内にロッカーは無いので、貴重品はロビーに設置されているコインロッカーを使いましょう。
壁には加水方法に関する説明が掲示されていました。温泉に対する誠意が伝わってきます。


 
浴室も基本的なレイアウトに変更はありませんが、サッシ・壁材・床まわりなど、室内の建材はほとんどが更新されており、新設の浴場と見紛うばかりにどこもかしこもピカピカで、木の香りが充満しています。以前同様に露天風呂はありませんが、大きな窓からは日本庭園が眺められ、室内空間ながら開放的な雰囲気が得られます。


 
洗い場にはシャワー付き混合水栓が5基設置されています(カランから出てくるお湯は真湯です)。梁や柱がむき出しになっている天井を見上げると、新しい材木ならではの色合いの美しさと幾何学的な模様としての美しさの両方が楽しめました。前回訪問時は室内の換気があまり宜しくなくて蒸し風呂状態だったのですが、更新工事後は換気も改善されたのか、室内には湯気篭りが全くなく、とても快適な居心地です。


 
猛禽類の嘴のような形をした湯船は以前同様に二分割されており、木の仕切り板の左側に当たる湯口サイドの槽は4人サイズで44℃とやや熱め。一方、板の右側は4~5人サイズで一般人向きの42~3℃。湯口から注がれたお湯は左側の槽から仕切り板の穴を通じて右側の槽へと流れ、嘴の先っちょに当たる部分から絶え間なくオーバーフローしていますが、私が全身を湯船に沈めると、槽の全ての辺からザバーっと勢い良く溢れ出てゆきました。


 
お湯は塩ビのパイプから一旦小さな湯溜まりに注がれ、そこから左側の槽へと流れ落ちてゆきます。その湯溜まりには白い湯華がたくさん溜まっていました。使用源泉は新湯源泉で、お湯は薄い貝汁濁り、湯口にてタマゴ感(味と匂い)がはっきりと感じられ、軟式テニスボール的な味や匂い、そして芒硝の存在を思わせる知覚も少々有しています。こうした匂いや味は、湯口では明瞭に確認できるのですが、湯船に至ると急に弱くなるので、温泉の個性というものがいかに繊細であるかを再認識することができます。浴感としてはサラスベ感と硫酸塩泉的なキシキシ感が拮抗していたように記憶していますが、とにかく肌に伝わるフィーリングが良く、ほのかな硫黄臭も相俟って、体が茹で上がるのを承知で、ついつい長湯してしまいました。温泉街の奥のほうで軒を連ねる小規模旅館のお湯も良いのですが、この新湯源泉もなかなか良いですね。ただ、加水しているとはいえ源泉投入量は決して多くはないので、今回のように私が独占できるような状況でしたら、お湯のコンディションも良好状態を維持できるのでしょうけど、もし連休などで集中混雑が発生した場合、お湯がどうなってしまうかちょっと心配でもあります。


 
ちなみに源泉はこちら。この源泉の画像は、拙ブログでは何度となく登場していますね。この日もアツアツのお湯がホースから捨てられていました。


 
リニューアルしたのはお風呂だけじゃなく、隣接している蕎麦屋さん「かみや」も新しくなっていたようです。ちょうどお昼時だったので、こちらの暖簾を潜ってお腹を満たすことに。



店内の様子はすっかり変わっていたのでビックリ。今回頂いたのはざるとそばがきの天ぷらのセットです(そばがきは私の好物)。こちらは十割蕎麦なんだそうでして、十割って当たりハズレが大きいので頂く前はちょっと警戒していたのですが、実際にそばを手繰ってみますと、上品な透明感があるとともに、口にした時の潔い歯ごたえや喉越しが気持よく、それでいて飲み込んだ後にも程良い余韻が残りました。また、おつゆも出汁や味醂のバランスが良く、東北でしばしば見受けられるしょっぱさもあまり無かったので、そばの持ち味が邪魔されること無くとても美味しくいただくことができました。ちなみに、この日のお風呂はガラガラだったのですが、お蕎麦屋さんは平日だというのに満席でしたよ。それだけ人気のあるお店なんですね。


新湯
含硫黄-ナトリウム-硫酸塩・塩化物温泉 95.8℃ pH8.2 56L/min(掘削自噴) 溶存物質1.094g/kg 成分総計1.094g/kg
Na+:286.2mg(82.83mval%), Ca++:44.6mg(14.84mval%),
Cl-:149.0mg(27.24mval%), HS-:4.1mg(0.78mval%), SO4--:448.9mg(60.64mval%), HCO3-:73.8mg(7.85mval%),
H2SiO3:40.7mg, HBO2:20.8mg, H2S:0.3mg,

岩手県花巻市台第2地割56-1
0198-27-2426
台温泉旅館組合HP内の紹介ページ

6:00~22:00 年中無休
500円
ロッカー(100円リターン式)・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★★
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台温泉 冨手旅館

2013年07月03日 | 岩手県
 
前回取り上げた「藤助屋」さんから歩いて数十秒のご近所にある「冨手旅館」が次なる訪問先です。こちらのお風呂は「鶴の湯」と称されているようです。玄関ではニャンコがお出迎え。



玄関脇の外水道には「台温泉発見の地」と書かれた札が置かれていましたが、本当にここなんですかねぇ…。今から約600年前、山に入った漁師が湯煙らしきものを発見して村に帰り、それを聞いた将監が現地を探索して発見したのが台温泉の開湯縁起なんだそうでして、その時に温泉で傷を癒していた鶴がその場から飛び立ったという伝説も残っていて、それが「鶴の湯」という名前の由来のようです。ちなみに台という地名はアイヌ語由来で「森」という意味なんだそうでして(参考:台温泉旅館組合HPの「台温泉の歴史」)、北東北にはこの他にも秋田県の湯の岱・伊勢堂岱・上の岱、青森県の長平(ナガダイ)・毛無岱(八甲田)などなどタイが付く地名は枚挙にいとまがありません(北海道は言わずもがな)。



浴室はひとつしかないため、女性が使う場合はこの札を提げるようです。


 
脱衣室には掛け流しであることをアピールする手書きのプレートが掲げられていました。綺麗で明るい室内には扇風機が設置されており、湯上りで火照った体をクールダウンするにはもってこい。棚が置かれている区画の先にはステップがあって、それを下りて浴室へ向かいます。前回の「藤助屋」同様、階段を下りてゆく温泉には良いお湯に巡り合える可能性が多いので、こうした構造の部屋を目にすると否が応にも期待が高まります。わくわく。


 
淡い水色のタイルが貼られた浴室は、半地下のような位置にありながら、窓から燦々と外光が降り注いでいるために、意外にも明るくて閉塞感は感じられません。湯船は左右に形状の異なるものが1つずつあり、シャワーなどの使いやすい水栓類は無い代わりに、お湯や水が出る配管むき出しのコックがひとつずつ設けられています。使いやすいシャワーが便利なことは言うまでもありませんが、こうしたプリミティブな水栓もまた古い温泉らしい趣きがあるので、私個人としてはこの手の設備もかなり好きです。



右側の浴槽は2人サイズで、縁が石材で槽内はタイル貼り。ヨットの帆を逆さにしたような形状です。お湯はぼんやりと灰白色に懸濁しており、綿ぼこりのようなスタイルをした灰白色や黒色の湯華が大量に浮遊・沈殿していました。


 
浴槽の手前側にはイミテーションのモミジが飾られた岩が据えられており、そこから竹筒を模した管が突き出ているのですが、その管からは何も出ておらず、その代わりに浴槽隅にある丸い湯口からお湯が噴き上げられていました。上述のように源泉かけ流しの湯使いなんだそうでして、湯船はちょっと熱めの湯加減でしたが、入りしなにピリっとする熱いお湯に全身を浸すと、身も心もシャキッと引き締められ、俄然活力が漲りました。とはいえ、若干お湯が鈍っているような気もしますが…。


 
一方、黒い御影石のような石材で縁取られている、左側の一人サイズの四角い浴槽には、私の体感で50℃以上のアツアツなお湯が張られており、熱いお湯に慣れているはずの私もさすがにこの時は入れず仕舞いでした。ぼんやり濁っていた右側の槽と違って、こちらのお湯は濁りのない無色澄明、湯の花もそれほど目立っていませんでした。左右両浴槽のお湯が同じ源泉であるとするならば、その見た目の状況から察するに、この左側の浴槽の方がお湯の鮮度が優れているのでしょうね。


 
浴室左手前の隅には洞窟を模したような湯溜まりがあり、ここに溜まった源泉は床の下を潜って熱い左側の浴槽へと注がれてゆきます。湯溜まりには柄杓が置かれているので、そこから直接お湯を汲むこともでき、実際に汲んでお湯を「テイスティング」(←なんだか気障な言い方ですね…)をしてみますと、薄っすらとタマゴ感(味と匂い)を有しながらも癖の少ないマイルドな質感が得られました。サラサラスベスベで軽やかな心地良い浴感ながら、お湯の持つ力強さは流石であり、まるで体の中で炭が燃え続けているかの如く、湯上りはいつまでも火照り続け、汗もなかなか引きませんでした。


2号泉
単純温泉 86.5℃ pH8.5 76L/min(掘削自噴) 溶存物質0.8210g/kg 成分総計0.8214g/kg
Na+:200.2mg(87.71mval%), Ca++:15.2mg(10.88mval%),
Cl-:103.7mg(27.24mval%), HS-:1.5mg(0.37mval%), S2O3--:0.4mg(0.00mval%), SO4--:308.7mg(59.98mval%), HCO3-:58.3mg(8.96mval%),
H2SiO3:87.8mg, HS:0.2mg,

花巻駅前(4番のりば)より岩手県交通バスの台温泉行きで終点下車、徒歩5分(400m)
岩手県花巻市台第2地割18
0198-27-2553

日帰り入浴時間要確認
200円
石鹸あり、他備品類なし

私の好み:★★
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台温泉 藤助屋

2013年07月02日 | 岩手県

岩手県花巻市の台温泉は私の好きな温泉地の一つです。先日も岩手県を訪れた際にどうしても台温泉のお湯に浸かりたくなり、当地で何軒かお風呂を梯子してしまいました。まず1湯目は「藤助屋」さん。袖看板が無ければ民家と見紛うような佇まいですね。台温泉のお宿でも奥の方に位置する数軒に関しては屋号の他に「○○の湯」というようなサブネームを持っており、「藤助屋」は「薬師の湯」を称しています。こちらのお宿の場合は単に称しているのみならず、その名前の自家源泉を持っているんですからスゴイじゃありませんか。


 
玄関先で「ごめんください」と声をかけて入浴をお願いしますと、お婆ちゃん女将が快く受け入れてくださいました。外観のみならず内部も民家そのもので、もし片手にしゃもじを持ってお邪魔したら桂米助の気分が味わえそうな雰囲気の館内を通り、浴室へと向かいます。お風呂は一室しかないので貸切利用となります。ステップを下って脱衣室へ。お婆ちゃん曰く浴室の照明のスイッチは自分でON/OFFしてほしいとのことでしたので、その指示通りに操作させていただきました。


 
脱衣室から更に階段を下りて浴室へ。戸を開けるとフワっと硫黄の香りが鼻をくすぐってきました。
各地で温泉めぐりをしていると、階段を下りてゆく浴室の温泉は大抵が「アタリ」、つまり印象に強く残るほど良いお湯に遭遇する場合が多いので、こうしてどんどん下へおりてゆくお風呂ですと、否が応にも期待に胸が膨らんでしまいます。
ほぼ半地下に近いレベルの浴室は、目線の位置まで石板が貼られており、床にも石材が用いられているので重厚感のある男性的な印象を受けます。浴槽は大小2つにわかれており、小は1人サイズで大が3人サイズといったところ。洗い場に関してはシャワー付き混合水栓が1つあるのみです。私はシャワーを使わず、桶で湯船のお湯を汲んで掛け湯しました。


 
浴室の最奥に据え付けられている金属のボックスから塩ビ管が伸びており、途中のチーズによって二又に分かれ、片方は浴槽へお湯を注ぎ、もう片方では床へお湯が捨てられていました。全量投入すると湯船が熱すぎちゃうので、投入量を絞るために半分捨てているのかしら?



上述の塩ビ管から源泉が直接注がれる小槽は激熱で、とてもじゃないが入れるような温度ではありません。これは入浴をするためではなく、大きな浴槽へお湯を供給するための湯溜まりと考えた方がよさそうです。


 
一方こちらが大きな方の主浴槽。大小両浴槽の仕切りには穴が開いており、小さい槽からその穴を通ってお湯がこちらへと流れ、その間に激熱だったお湯もこなれて入りやすくなってくるわけです。主浴槽の縁には切り欠けがあって、湯船のお湯はそこからしっかりと溢湯しており、私が湯船に浸かると、お湯がザバーっと勢い良く溢れ出て行きました。無色透明でキリリとした鮮度が冴えるお湯には白く小さな湯の花がチラホラ舞っています。湯使いはもちろん完全掛け流しです。


 
塩ビ管から供給されるお湯の他、大きな浴槽にはこのようなホースからもお湯がチョロチョロと注がれています。
分析表によればこちらでは自家源泉の「薬師の湯」と台温泉の2号泉をブレンドしているんだそうでして、2号泉は総硫黄が2.1mg(硫化水素イオン1.5+チオ硫酸イオン0.4+遊離硫化水素0.2)なので辛うじて硫黄泉ですが、一方「薬師の湯」は総硫黄が1.3mg(硫化水素イオン1.2+遊離硫化水素0.1)であるため硫黄泉には該当せず、台温泉の源泉の中でも硫黄分が少ないこの「薬師の湯」の影響か、お湯を口にしたり、あるいは鼻を近づけて嗅いだりして確認できた硫黄感は、他の宿のお湯よりかなり大人しいものでして、室内全体にはほんのりとした硫黄臭が漂っているものの、お湯自体はほぼ無味無臭と表現したくなるような、とてもマイルドな感じでした。ただしホースのチョロチョロ湯からはイオウ感が弱いながらもはっきりと伝わってきたので、塩ビ管のお湯とホースのお湯は別物なのかもしれません。知覚面がマイルドだからといってなめてかかってはいけないのが温泉の真の実力であり、湯加減の熱さもさることながらお湯の持つパワーが入浴中の私の体に乗り移り、湯上りはなかなか汗が引かずに強く火照り続けました。さすが台温泉のお湯はパワーが違いますね。


薬師の湯(2号井と薬師の湯混合泉)
単純温泉 50.0℃ pH8.4 溶存物質0.8210g/kg 成分総計0.8214g/kg
Na+:206.1mg(91.15mval%), Ca++:14.5mg(7.32mval%),
Cl-:95.6mg(26.65mval%), HS-:1.2mg(0.39mval%), SO4--:281.1mg(57.75mval%), HCO3-:62.7mg(10.17mval%),
H2SiO3:82.0mg, HS:0.1mg,

2号泉
単純硫黄温泉 86.5℃ pH8.5 76L/min(掘削自噴) 溶存物質0.8210g/kg 成分総計0.8214g/kg
Na+:200.2mg(87.71mval%), Ca++:15.2mg(10.88mval%),
Cl-:103.7mg(27.24mval%), HS-:1.5mg(0.37mval%), S2O3--:0.4mg(0.00mval%), SO4--:308.7mg(59.98mval%), HCO3-:58.3mg(8.96mval%),
H2SiO3:87.8mg, HS:0.2mg,

花巻駅前(4番のりば)より岩手県交通バスの台温泉行きで終点下車、徒歩5分(400m)
岩手県花巻市台第2地割25
0198-27-2720

入浴時間要確認
300円
備品類なし

私の好み:★★★
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