文化逍遥。

良質な文化の紹介。

国立演芸場5月名人会

2018年05月23日 | 落語
 5/19(土)、第417回国立名人会を聴いてきた。いつもは、午後1時から始まるのだが、この日は珍しく6時開演の夜席だった。



 名人会となると、やはり観客も落語好きな人が集まる。皆、古い言葉や江戸の風俗をある程度知っている人がほとんどだ。なので、演者も今は死語となっている言葉に対する説明などもせず、ある意味安心して噺に入れるようだ。当然、雰囲気も一般の寄席の時とは変る。団体客もいないし、わたしのように一人で聴きにきている人も多いようだった。演者の持ち時間も普段より長く、一人当たり20~30分位で、最後の真打は40分程の長演になる。
 聴きたかったのは、やはり五街道雲助の『淀五郎』。この人は、地味な芸風でテレビ出演なども少ないが、端正な語り口は古典落語ファンを十分に満足させてくれる。ちなみに、この日2人目に出た隅田川馬石は、五街道雲助の弟子。一門には変わった名が多いが、雲助師匠は十代目金原亭馬生の門下で、その十代目の父であり師匠であるのが五代目古今亭志ん生。その志ん生という人は借金取りから逃れるために芸名を何度も変えたらしい。その志ん生が使った中の芸名を今五街道雲助一門が使っている、ということらしい。本来は、この雲助師匠あたりが馬生の名跡を継ぐべきだったろうが、本人が固辞したと聞いている。わざと、落語家らしからぬ名で本格的な古典落語をじっくり聴かせるというのも、また良いのかもしれない。ある意味、本当に古典を聴きたい人が来るようになる。ただし、それには本当の実力が無ければ出来ないことだ。

 「淀五郎」という演目は、古典落語の中の芝居噺でもあり人情話でもある。数ある芝居噺のなかでも、わたしが特に好きな演目だ。演じ分けが難しく、並みの噺家では噺がつくれない。この日の『淀五郎』、出来も良く最後まで緊迫感があった。千葉から東京までわざわざ夜出かけただけの価値があった高座だった。

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