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わたしのレコード棚ーブルース99『Mississippi Blues & Gospel』

2020年08月20日 | わたしのレコード棚
 オーストリアのDOCUMENTレーベルのフィールドレコーディング・シリーズからの一枚、DOCD-5320『Mississippi Blues & Gospel』。アラン・ローマックスなどにより1934-1942年に録音されたものを編集、25曲を収録。このシリーズについては、すでに何枚かをこのブログでも紹介している。農場(Plantation)や収容所(State Penitentiary)などで簡易的な録音装置で録音されたものなので音質的には聞きづらいところも多い。が、このCDも、特にブルースギターを弾く者にとっては、極めて重要な曲を収録しているので紹介しておきたい。



 注目すべきは、ウィリアム・ブラウン(William Brown)の1942年7/16にアーカンソー州サディー・ベック農場(Sadie Beck's Plantation)で録音された3曲だ。このウィリアム・ブラウンについては、以前は、サン・ハウスなどと活動したデルタブルースの名手ウィリー・ブラウンと同一人物と考えられていたが、今では、別人というのが通説になっている。聴き比べてみても、声の質もリズムの取り方も異なるように感じられる。生没年など、詳しい事跡は分かっていない。
 さて、その3曲とは以下の通り。
1.Mississippi Blues
2.East St.Louis Blues
3.Ragged And Dirty
 この中でも「Mississippi Blues」は、ギターパートだけを教則本などで取り上げられることが多い名曲だが、原曲は6分を超える長い曲で語りに近い歌も入る。ピアノの音をギターに置き換えたとも言われるが、1942年にこんなにも複雑で、洒落たヴォイシングがどうして出来たのか、ギターを弾く者の端くれとしては、驚きと賞賛しかない。余談だが、わたしがコピーした限りでは3フレットにカポを付けてのAモードで、キーはCになる。さらに、ブギウギ調の間奏のところでは1弦12フレットを左手小指で押さえ続けて弾く。ここのギターブレイクは教則本には載っているのを見たことがないので、参考までに。
 あとは、ブッカ・ホワイト(Buukka White)が、パーチマン・ファームで1939年5/23に残した2曲も貴重な録音。「Sic 'Em Dog's On」と「Po Boy」で、やはり、ギターの教則本で取り上げられることの多い曲だ。ブッカ・ホワイトは、戦後のフォークリバイバル・ブームで「再発見」され、バンドでの演奏なども残している。が、やはり戦前の演奏を聴くと、なにか別物の・・つまり、聴衆やプロデューサーに拘束されていない自由な場での魂のこもったブルースを演奏しているように感じられる。

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