シドニー・メイデン(Sidney Maiden)は、前回の「わたしのレコード棚ーブルース114」で取り上げたK.C.ダグラス(ギター)と共に西海岸で活動した、ヴォーカルとハーモニカ・プレーヤー。生没年など詳しいことは分かっていないが、生まれたのはルイジアナ州で1917年か1923年。1940年代初頭に、カリフォルニアに移動し、そこでK.C.ダグラスなどと出会い、副業としてナイトクラブなどで二人あるいは小編成のバンドでダウンホームなブルースを演奏していたという。亡くなったのは1987年か、あるいは1970年としている資料もある。
BLUESVILLEレーベルの原盤(BV1035)をP-VainがCD化し、1994年にPCD-1969として国内で発売した『Trouble An' Blues』。録音はカリフォルニア州バークレーで、1961年4月。ギターのバッキングをしているのはK.C.ダグラス。実はこれ、CD評を担当した時にP-Vainから貰ったもの。ただし、CDのプレスが間に合わず、貰ったのはカセットテープ。今は、CD-Rに落としてある。解説等は白黒のコピー。なので、画像が少し見にくいが、ご容赦願いたい。
ライナーノーツには「Mouthharp」となっているが、使っているハーモニカは10穴のいわゆるブルースハープだろう。それを吹きながら、しっかりと歌うことが出来る人は、なかなか少ない。スタイルはけっこう多様で、サニー・ボーイ・ウィリアムソン#1を彷彿とさせるものや、サニー・テリー風のホーカム・ブルースもある。そこに、ダグラスのミシシッピーのカントリースタイルギターと相まって、なかなか味わいのある演奏になっている。
以下に『ブルース&ソウル・レコーズ No.2(1994年9月)』に、斎藤業の名で書いたわたしの記事を、我田引水ながら載せておく。
『シドニー・メイデンのハーモニカと歌にK.C.ダグラスがギターをつけている全12曲。「アメリカ南部の田舎の街角から聞こえてくる素朴なブルース」といった印象を受けたが、これは61年カリフォルニア州バークレーでの録音。ルイジアナ生まれのメイデンとミシシッピー生まれのダグラスは、職を求めて西へと渡り歩き、45年頃カリフォルニアで出会いコンビを組んだという。ブルース好きな人ならどこかで聞いたことがあるメロディにメイデンが詞を付けた曲がほとんどだ。ダグラスのギターのチューニングが少しずれていてホンキートンク・ピアノみたいな音になっているが、これはギター自体に狂いがあったためだろう。3000Km離れた故郷を想いつつ演奏されたアクのあるブルースに耳を傾けるのもオツなもの。
ブルースヴィルは白人のための録音といわれるが、60年代に異なるコミュニティに属する人達が接点を求め合った記録、と言うことも出来るだろう。勇気あるエンジニア、プロデュサー、ミュージシャン達、そして聴衆の人達にも、拍手。』
少し補足しておくと、このCDが録音された1960年代は、公民権運動が始まって黒人・白人間の対立が深まり、フィールド録音などでも危険を伴うことがあったのだ。一方で、いわゆるフォークムーブメントという、アコースティックな弾き語りが流行った頃でもあり、古いスタイルのカントリー・ブルースも多く録音された時代だった。シドニー・メイデンもそんな幸運に恵まれた一人だったと言える。しかし、この録音などの後、ほとんどその事跡は分からない。死亡地も、インターネットなどでも調べてみるとアリゾナ州としていたりするが、ほとんどわかっていないのが実情だ。
ACEというイギリスのレーベルのLP、CH247。BLUESVILLEに残された音源から、フォークブルースの16組のミュージシャンそれぞれ1曲ずつ計16曲を選んで編集された名盤。シドニー・メイデンやK.C.ダグラスを含み、フォークブルースを知るには良い編集になっている。ちなみに、BLUESVILLEというレーベルは、母体がPRESTIGEというジャズのレーベルを制作しているFantasyという会社で、そこがブルースファン向けに作ったのがBLUESVILLEだった。
LP裏面。
BLUESVILLEレーベルの原盤(BV1035)をP-VainがCD化し、1994年にPCD-1969として国内で発売した『Trouble An' Blues』。録音はカリフォルニア州バークレーで、1961年4月。ギターのバッキングをしているのはK.C.ダグラス。実はこれ、CD評を担当した時にP-Vainから貰ったもの。ただし、CDのプレスが間に合わず、貰ったのはカセットテープ。今は、CD-Rに落としてある。解説等は白黒のコピー。なので、画像が少し見にくいが、ご容赦願いたい。
ライナーノーツには「Mouthharp」となっているが、使っているハーモニカは10穴のいわゆるブルースハープだろう。それを吹きながら、しっかりと歌うことが出来る人は、なかなか少ない。スタイルはけっこう多様で、サニー・ボーイ・ウィリアムソン#1を彷彿とさせるものや、サニー・テリー風のホーカム・ブルースもある。そこに、ダグラスのミシシッピーのカントリースタイルギターと相まって、なかなか味わいのある演奏になっている。
以下に『ブルース&ソウル・レコーズ No.2(1994年9月)』に、斎藤業の名で書いたわたしの記事を、我田引水ながら載せておく。
『シドニー・メイデンのハーモニカと歌にK.C.ダグラスがギターをつけている全12曲。「アメリカ南部の田舎の街角から聞こえてくる素朴なブルース」といった印象を受けたが、これは61年カリフォルニア州バークレーでの録音。ルイジアナ生まれのメイデンとミシシッピー生まれのダグラスは、職を求めて西へと渡り歩き、45年頃カリフォルニアで出会いコンビを組んだという。ブルース好きな人ならどこかで聞いたことがあるメロディにメイデンが詞を付けた曲がほとんどだ。ダグラスのギターのチューニングが少しずれていてホンキートンク・ピアノみたいな音になっているが、これはギター自体に狂いがあったためだろう。3000Km離れた故郷を想いつつ演奏されたアクのあるブルースに耳を傾けるのもオツなもの。
ブルースヴィルは白人のための録音といわれるが、60年代に異なるコミュニティに属する人達が接点を求め合った記録、と言うことも出来るだろう。勇気あるエンジニア、プロデュサー、ミュージシャン達、そして聴衆の人達にも、拍手。』
少し補足しておくと、このCDが録音された1960年代は、公民権運動が始まって黒人・白人間の対立が深まり、フィールド録音などでも危険を伴うことがあったのだ。一方で、いわゆるフォークムーブメントという、アコースティックな弾き語りが流行った頃でもあり、古いスタイルのカントリー・ブルースも多く録音された時代だった。シドニー・メイデンもそんな幸運に恵まれた一人だったと言える。しかし、この録音などの後、ほとんどその事跡は分からない。死亡地も、インターネットなどでも調べてみるとアリゾナ州としていたりするが、ほとんどわかっていないのが実情だ。
ACEというイギリスのレーベルのLP、CH247。BLUESVILLEに残された音源から、フォークブルースの16組のミュージシャンそれぞれ1曲ずつ計16曲を選んで編集された名盤。シドニー・メイデンやK.C.ダグラスを含み、フォークブルースを知るには良い編集になっている。ちなみに、BLUESVILLEというレーベルは、母体がPRESTIGEというジャズのレーベルを制作しているFantasyという会社で、そこがブルースファン向けに作ったのがBLUESVILLEだった。
LP裏面。