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わたしのレコード棚ーブルース148 Hound Dog Taylor

2021年08月22日 | わたしのレコード棚
 ハウンド・ドッグ・テイラー(Hound Dog Taylor)は、本名セオドア・ルーズベルト・テイラー(Theodore Roosevelt Taylor)。1917年4月12日にミシシッピ州ナッチェス(Natchez)で生まれ、1975年12月17日にシカゴで亡くなっている。ハウス・ロッカーズ(The House Rockers)を率いて、エレキギターでスライド奏法によるエッジの効いたオーバードライブに近いサウンドと、あまりうまいとは言えないが特徴のある声でロックに近いノリで歌うブルースマンだった。
 ハウス・ロッカーズは、テイラーの他に、ギターのブリューワー・フィリップス(Brewer Phillips)、ドラムスのテッド・ハーヴェイ(Ted Harvey)の二人。テイラーの音楽は、あくまでこの2人と共に作り上げられている。ラフな音のようにも聞こえるが、3人の演奏はコントロールされており、リズムのアクセントポイントは一致している。この二人がいなければ、おそらくテイラーはただの場末のギタリストに過ぎなかっただろう。それほど、息が合っているように聴こえる。
 バンドの中にベースはいないが、ブリューワー・フィリップスが巧みにベースラインを弾いて全体を引き締めている。わたしの聞いた限りでは、フィリップスはギターの調弦を全体に1音下げているようだ。少なくとも低音弦側は下げていると感じる。テイラーの演奏はオープンDが多いので、それに合わせるためにも6弦をDに落とすと演奏しやすいこともあるだろう。
 一口にブルースと言っても、ブルースマンにより微妙にリズムアクセントの位置が異なるものだ。その微妙なズレが自然な揺らぎとなり、味わいともなるのだが、時には乱雑で収拾のつかない音楽に陥ってしまうことにもなる。まあ、それはそれとして、1917年の生まれなのにテイラーの音楽は今聞いても後のハードロックに通じるようで、新鮮味があるものに聞こえる。マディ・ウォータースが1915年生まれなので、テイラーとほぼ同世代。しかし、残された録音で比較するとアンプの使い方などに、時代を先取りしていたものを感じる。ちなみに、エルモア・ジェイムスの曲を多く取り上げているのでフォロワーのようにいわれることもあるテイラーだが、エルモアは1918年生まれなのでテイラーの方が1歳年上だ。ただエルモアは1963年に45歳で亡くなっており、テイラーが本格的なアルバムを出した1971年までにエルモアのナンバーを自分なりのスタイルに組み込んでいった、というところだろう。


 アリゲーター原盤のLP、AL4701で、日本ではアトラスレーベルから歌詞カードなどが付いてLA23-3015として出ていた。1971年と1973年のシカゴ録音10曲。下の画像はジャケット裏面。後述するブルース・イグロアによるLP内の解説によると、テイラーの使っているギターは「日本製超安物」で、スライドバーは「キッチンのイスの足で作ったもの」だったという。写真だけでギターの判別はできないが、テスコのようにも見える。

 写真のように、テイラーはいつも座って演奏し、ブリューワー・フィリップスは立って動きながら演奏していたという。


 同じくアリゲーター原盤のLP、AL4704。アトラスLA23-3003、高地明氏の解説が付いている。その解説には「・・恐らく1973年の終わり頃にレコーディングされた、テイラーのセカンドアルバム・・」とある。

 同裏面。1975年にテイラーが58歳でガンにより亡くなった後のハウス・ロッカーズのメンバー2人は、それぞれシカゴのブルースシーンでセッションマンとして活動した。若い頃メンフィス・ミニーにギターを教わった事もあるというセカンドギターのブリューワー・フィリップスは1999年8月30日74歳で、ドラムスのテッド・ハーヴェイは2016年10月6日85歳で、共にシカゴで亡くなっている。

 そしてもう一人、ハウス・ロッカーズを語る上で忘れることが出来ない人がいる。それは、アリゲーター(Alligator)レーベルの設立者であるブルース・イグロア(Bruce Iglauer)である。

 日本では、キングレコードから出た2枚組CDで、KICP2394/5。1971年から1991年までのアリゲーターに録音された様々なミュージシャンの代表曲を20周年記念盤として発売されたもの。全35曲を収録。この中にイグノアが1991年1月に書いた「アリゲーター物語」と題する小冊子(鈴木啓志訳)が解説を兼ねて入っている。以下に、簡単な要約を載せておく。
『・・田舎者の一人の白人の少年がシンシナティの郊外からやってきてハウンド・ドッグ・テイラー、ブリューワー・フィリップス、テッド・ハーヴェイの3人を聞き、「よしレコーディングしなきゃ」と思い立った時こそ、フローレンスでアリゲーター・レコードが出来た時といっていいのかもしれない。・・私は彼らを愛し、レーベルを始めた。・・』。文中の「フローレンス」とは、シカゴのサウスサイドにあったブルースクラブの名前。イグノアは1947年ミシガン州生まれなので、アリゲーター設立時には20代半ばだった事になる。

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