金木犀、薔薇、白木蓮

本と映画、ときどきドラマ。
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110:小谷野敦 『悲望』

2008-11-14 16:18:31 | 08 本の感想
小谷野敦『悲望』(幻冬舎) ★★★☆☆

「悲望」と「なんとなく、リベラル」の二編を収録。

「悲望」は小谷野敦の作家デビュー作らしいです。
「実録 東大ストーカー物語。」と帯に銘打ってあるとおり、
東大の大学院に在籍する主人公が、
同じ院生の「篁さん」に恋をして、嫌がられてるのに
彼女の言動を都合よく解釈して、つきまとい、つきまとい、
留学先のカナダにまで追っかけていくという、
被害者にとっては恐怖以外の何者でもない物語。
篁さんの言動に関する一つ一つのエピソードと
それに対する主人公の思考が細かに描かれていて、
「もうやめろ!!」と言いたくなる。

残念ながらわたしは篁さんの恐怖がわかるので、
(彼女の魅力はさっぱりわからないが)
ユーモア小説としては読めませんでした。
小谷野氏の私小説としてはおもしろいのだけど、
一つの小説としてはいかがなものか……。
そして小説なんだから、あとがきで批判に
反駁しちゃいけないと思いますわ。
作家は作品で答えていかないと。

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109:吉田修一 『初恋温泉』

2008-11-14 00:23:15 | 08 本の感想
吉田修一『初恋温泉』(集英社)
★★★☆☆

温泉宿を訪れた5組の男女のそれぞれの物語。
夫婦関係の破綻を描く「初恋温泉」「風来温泉」は、
「夫」や「男」の悲しさに胸をつかれる。
吉田修一、恋人同士の関係を描いた話はそうでもないのだけど、
夫婦を描いた話にはこういうやりきれなさを感じることが
多い気がする。

「純情温泉」は高校生カップルのお話で、
「Water」に通じる明るい青春もの。
女の子といちゃいちゃしているときに
部屋に入ってきてしまったお父さんの狼狽ぶりがおかしい。
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