金木犀、薔薇、白木蓮

本と映画、ときどきドラマ。
★の数は「好み度」または「個人的なお役立ち度」です。
現在、記事の整理中。

163-164:市川ジュン『鬼国幻想』上・下巻

2020-08-03 22:40:56 | 20 本の感想
市川ジュン 『鬼国幻想 上・下』
★★★★☆

【Amazonの内容紹介】

幼い時、かけがえのない時をともに過ごした三人。
しかし、それぞれ帝の寵妃、男装の女武者、叛逆の皇子となり、
時代の流れが三人を引き裂いていく…。
悲劇の皇子・大塔宮護良親王をめぐる史実に着想を得て、
華麗なる筆致で描き出された、異説・南北朝絵巻!

*******************************************

漫画。
電子書籍の読み放題にて。

「男まさりの姫」設定にはもううんざりしているし、
「実は女が裏で糸を引いていたのだ!」という展開も
女によほどの能力が付与されていないと、
白ける一方なのだけども、
これは「ヒロインのどこに魅力があるの???」とは思いこそすれ、
苦痛を感じるほどではなかった。
キャラクターが立っていて、ドラマ性も高く、引き込まれる。
結構長いのに、途中で読むのをやめようとは思わなかったもの。

しかし、これだけは言いたい。

出家したんなら、ちゃんと坊主にしようぜ!!

女性受けが悪いのはわかるんだけどさ~~~。
いくら何でも天台座主で長髪は許されないでしょ!

野心家でひどいこともいっぱいしているのに
不思議と嫌いになれない阿野簾子が魅力的。
そして、ヒロインと直義の関係の描き方も割と好き。
足利直義、第一印象が子どものころに見た大河ドラマ『太平記』の
高嶋政伸だから、まったくときめかなかったんだけど、
結構「クールなイケメン」設定の作品が多いのね……。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

162:宮木あや子『泥ぞつもりて』

2020-08-03 22:16:55 | 20 本の感想
宮木あや子 『泥ぞつもりて』(文春文庫)
★★★★☆

【Amazonの内容紹介】

女は待ち、男は孤独を知る。
清和、陽成、宇多天皇、いつの時代も女に生まれれば同じこと。
平安王朝にまつわる男女の尽きせぬ狂おしい想い。

*******************************************

いやいや、たとえ入内させる姫でなかったとしても、
初潮が来たかどうかくらい、
お付きの女房が把握していないわけないでしょ!!
ましてや帝の子を産むために入内させるんだもの、
両親がしっかり確認しているはず。

というところから始まって、ツッコミどころは満載なんだけど、
さすがに情念の描き方はお見事。
業平と高子についてはあまりにも多くの作品で描かれているから
食傷気味だったのだけども、これは切ない……。
そして、男女の間の感情よりも、
女から女、男から男への巨大感情が印象的だった。
宇多天皇にスポットをあてた「東風吹かば」、
若いころ輝いて見えた道真が色あせて見えるようになってしまったこと、
彼に嫌悪を覚えるようになってしまったこと、
そのことに苦しみながらも、彼を突き放して
取返しのつかないことをしてしまう宇多天皇の感情の流れには
こちらも息苦しくなってしまうほど。

「もうやめたい」と権力にそこまで執着していない基通の描き方は新鮮だったけど、
その感情が作中での彼のふるまいともリンクしていないのは残念だった。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

161:田中阿里子『猪名の笹原かぜ吹けば 紫式部の娘 賢子』

2020-08-03 21:52:17 | 20 本の感想
田中阿里子 『猪名の笹原かぜ吹けば 紫式部の娘 賢子』(講談社)
★★★★☆

【Amazonの内容紹介】

源氏物語の完成に向けて苦慮し、
藤原道長の強引な求愛に懊悩する紫式部。
一方、式部の娘賢子は母の厳しい教育を受け、
侍女らにかしずかれて成人するが、
友人も少なく孤独の身であった。
後見もいない賢子の将来を思いやり、
母娘ともども皇太后彰子の許へ出仕するようになる。
やがて、和泉式部、赤染衛門らとの交際が始まり、
さらに、貴紳顕官の子弟たちの誘惑が待っていた…。
長篇歴史小説。

*******************************************

上の内容紹介は、徳間文庫から出ていた『紫式部の娘 賢子』のもの。
たぶん中身は同じだと思うのだけど。
読んだのは昭和61年刊行のハードカバー版。

紫式部の娘・大弐三位が主人公。
彼女、紫式部と違い、
「妻にはなれないってわかってるけど、それはそれ。
公達たちとの恋を楽しみまーす!」
とめちゃポジティブに割り切って、女房ライフをエンジョイしている
イメージがあったのだけども(このイメージは小式部内侍のものと似てる)、
この話ではずいぶん印象がちがった。
父を早くに失い、母と祖父も亡くなってしまったあとの、
みなしごの孤独と寄る辺なさ。
甘い言葉を口にしながらも決して第一の女にはしてくれない男たちの
気まぐれに涙する女心。
ひとりで生きていく! というわりに、
能力面にはスポットがあてられないのだけども、
まあ、運も実力のうちだしな。

帝の乳母になって三位にまでなるわけだけども、
終盤のオリジナルの展開(創作)にはどんよりしてしまった。
前後して読んだ小説でも同じような「帝と乳母」の描かれ方がされていて、
うーん……やっぱり多かったのだろうか、こういうの。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする