金木犀、薔薇、白木蓮

本と映画、ときどきドラマ。
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現在、記事の整理中。

181:池田亀鑑『平安朝の生活と文学』

2020-08-29 20:27:45 | 20 本の感想
池田亀鑑 『平安朝の生活と文学』 (ちくま学芸文庫)
★★★★★

【Amazonの内容紹介】

豊かな国風文化を育んだ平安時代、
その担い手だった宮廷の人びとはいったいどんな生活をしていたのか。
本書は、『源氏物語』や『枕草子』などの文学作品をはじめ、
さまざまな古記録を博捜し、当時の行事や日常を復元する。
後宮の制度や宮仕えの動機から、住宅事情、食事と食べ物の種類、
結婚と風習、懐妊と出産、美意識やその表現、美人の条件や教養、
はては娯楽、疾病、医療、葬送、信仰などにいたるまで明らかにした、
平安時代の女性生活百科の名著。
国文学専攻の教師や学生はもとより、広く古典文学愛好家必携の書。
通読するだけでも、当時の生活が澎湃として眼前に立ち現れる。

********************************
 
女性の生活に焦点をあてた事典的な内容になっており、
王朝時代の生活を知りたい人には非常に役に立つ。
女房名の法則に結構驚いた。
親や夫の官職にちなんだ名前をつける、というのは知っていたんだけど、
上臈・中臈・下臈で名前に使われる通りや国名に差があったのね。

ビジュアル的な要素(たとえばかさねの色目とか調度品)は弱いんだけど、
幅広い要素をカバーしていて、なおかつ詳しい。


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180:神坂次郎 『藤原定家の熊野御幸』

2020-08-29 19:48:24 | 20 本の感想
神坂次郎 『藤原定家の熊野御幸』 (角川ソフィア文庫)
★★★☆☆3.5

【Amazonの内容紹介】

中世の人々の信仰を集めた熊野詣は、
苦しい道を辿れば辿るほど来世の利益が約束されるという
困難な旅であった。
建仁元年、後鳥羽院に同行を命じられた藤原定家は、
先駆けとしてゆく先先の儀式や食事、
宿舎の世話をする役目だった。
のんびり歌を作る暇もない中で、
時には寝過ごして慌てることもあったが任務をまっとうした。
不平不満を漏らす同行記録からは
定家の人間的側面がよく見える。
熊野を熟知した著者ならではの定家考。

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電子書籍の期間限定ポイントが消失しそうだったので、
たまたま目についたこれを購入。
以前、どこかで紹介されているのを見かけたんだけど、
購入を見送ったのだった。

『明月記』の熊野御幸の部分にスポットをあてたものだけど、
定家より熊野自体に焦点があるような。
小説風のところもあれば、伝承の紹介、
ルポタージュっぽいところもあり。
初めて行く場所なのにツアコンをさせられる定家の
悪戦苦闘と不平不満。
いくら便宜をはかってもらいたいからといって、
やりたくないことをやっちゃだめだよね……と改めて思う。
いやなことであればあるほど見返りを期待して、
苦しむことになるんだもの。
定家の性格といい、後鳥羽院のふるまいといい、
「そりゃあ仲悪くなるわ!」といった感じ。
和歌のことがなくても、きっとうまくいかなかっただろう。
あと、何回も熊野に行ってた後鳥羽院、
自分は全部お膳立てしてもらえるからいいけど、
下々の者にとっては本当に迷惑な人だっただろうな……。 

興が乗ってきてあちこちに和歌や漢詩を書きつけてから、
書いちゃダメだったんだ、と気づいてあちゃー、なエピソードが
面白かった。

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