金木犀、薔薇、白木蓮

本と映画、ときどきドラマ。
★の数は「好み度」または「個人的なお役立ち度」です。
現在、記事の整理中。

映画:『花戦さ』

2020-08-22 21:44:36 | 映画の感想
2020年の映画⑫:『花戦さ』( 篠原哲雄 監督)
★★★☆☆3.5

【シネマトゥデイの内容紹介】

戦国時代の京都。
花を生けることで世の平穏を祈る「池坊」と呼ばれる僧侶の中でも、
専好(野村萬斎)は名手とうたわれていた。
そのころ、織田信長(中井貴一)亡きあと
天下を手中に収めた豊臣秀吉(市川猿之助)の圧政が人々を苦しめ、
専好の友であった千利休(佐藤浩市)が自害に追い込まれる。
専好は秀吉に対して、力ではなく花の美しさで戦おうと立ち上がる。

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Amazonプライムにて。
映画館で公開当時、見ようと思って身に行けなかったもの。
先に低評価の感想ばかり目にしていたのであまり期待していなかったのだけど、
思ったよりよかった。

表情も含め、主人公の言動がひたすら気持ち悪いんだけど、
どうしても秀吉に屈することができずに死に向かって突き進んでいく利休、
彼と主人公の芸術家同士としての交流と、
芸術家として秀吉に立ち向かおうとする主人公、という展開は悪くなかった。
ヒロインも、まあ、いなくてもそこまで支障はないのだけども、
芸術家と秀吉の対立、という構図に花は添えていたと思う。

ストーリーはいまいち盛り上がらず、
タイトルの「花戦」の結末にも爽快感がないのだけど、
めずらしい人物にスポットをあてた分の楽しみが確かにあった。
華道を嗜んだことはないのだけども、
主人公の生ける花の良さはちゃんと伝わるのがすごい。

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映画:『来る』

2020-08-22 21:17:44 | 映画の感想
2020年の映画⑪:『来る』(中島哲也 監督)
★★★★☆

【シネマトゥデイの内容紹介】

幸せな新婚生活を送る田原秀樹(妻夫木聡)は、
勤務先に自分を訪ねて来客があったと聞かされる。
取り次いだ後輩によると「チサさんの件で」と話していたというが、
それはこれから生まれてくる娘の名前で、
自分と妻の香奈(黒木華)しか知らないはずだった。
そして訪問者と応対した後輩が亡くなってしまう。
2年後、秀樹の周囲でミステリアスな出来事が起こり始め......。

*****************************

Amazonプライムにて。

Twitterで話題になっていたから見たのだけど、
いやー、確かにすごい魅力のある映画だった。
正直言って、出来はそんなによくないと思うんだよ。
克服すべき敵である「あれ」に関しては説明不足だし、
最後は投げっぱなしで「どういうこと???」だし。
しかし、それを補って余りある勢いとときめきがあった。

前半は、妻夫木くん演じるイクメン気取りの秀樹に
ひたすらヘイトがたまる。
お調子者で、カッコつけだけど中身が伴わず、
見ていて恥ずかしくなるくらい。
なんでこんな男に准教授の彼は親切なんだ……と思いきや、
黒木華のパートになって裏側が明かされてにやり。
妻も妻だとは思うけれど、秀樹に一切同情の余地がないのがすごい。
現代の社会における子育てって、もはや破綻前提なのでは……と
思わせる前半。

そして後半、スーパー霊能対戦ともいうべき展開にわくわく。
松たか子演じる日本最強の霊媒師がめちゃかっこよく、
その彼女と妹の関係性にときめき。
出番は少ないながら、神職のじいさんたちの肝の据わりっぷり、
カプセルホテルで装束に着替えるシーンのくすぐりも
わかってるね~といった感じ。
たいして活躍もしてないのに、柴田理恵の存在感もすごい。
そして、まったく役に立たない岡田くん、松たか子に殴られる岡田くん。

おもしろかった!


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172:ニック・シャラット 『ねこと王さま』

2020-08-20 21:10:15 | 20 本の感想
ニック・シャラット 『ねこと王さま』(徳間書店)
★★★☆☆

【Amazonの内容紹介】

ある日、ドラゴンのせいで、おしろがもえてしまった王さまは、
いちばんのともだちのねこといっしょに、町へひっこして、
小さな家にくらすことになりました。
「王さまのしごと」のほかには、何もできなかった王さまでしたが…?
少しずつ、いろいろなことができるようになる王さまと、
王さま思いのかしこいねこの、ユーモラスで心あたたまる物語。
英国のアリゲーターズ・マウス賞受賞。小学校低・中学年~。

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今年の青少年読書感想文全国コンクールの
中学年課題図書のうちの一冊。

絵も話の内容もほのぼのとしていて可愛らしく、
文字量もそれほどないため、
本の苦手な子でも読むのに苦労はしなさそう。
ただ、わかりやすいテーマがあるわけではないので、
自分でネタをふくらませられない子にとっては
苦しいのかもしれない。
王さまの成長や、ねことの関係、
王さまが関わることになる庶民の態度の変化。
このあたりに焦点をあてて書く子が多いのかな。

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171:斎藤倫 『ぼくがゆびをぱちんとならして、きみがおとなになるまえの詩集』

2020-08-20 20:57:54 | 20 本の感想
斎藤倫 『ぼくがゆびをぱちんとならして、きみがおとなになるまえの詩集』(福音館書店)
★★★☆☆3.5

【Amazonの内容紹介】

きみはいつものように、あけっぱなしの玄関から、
どんどんぼくの部屋にあがりこんできた。
ランドセルをおろして、きみはいった。
「ねえねえ」
「なんだあ」
「せんせいが、おまえは本を読めっていうんだ。
 ことばがなってないから」。
ぼくは立ち上がってとなりの部屋に行き、
本だなから一冊の詩集をとってきた。
そして、ページをひらいて、きみに手渡す。
「ここんとこ、読んでみな」。
詩はむずかしい。詩は意味がよくわからない。
だから、詩はおもしろくない。
確かに詩はむずかしくて、よくわからないものかもしれない。
でも、詩はおもしろくて、ほんとうにたのしくて、そして自由だ。
詩は、ことばを自由にし、ことばによって縛られ、
不自由になっているわたしたちに、
ことばは、わたしたちを縛るのではなくて、
わたしたちは、ことばによって自由になれるのだと教えてくれる。
20篇の詩を通して、詩人斉藤倫と楽しみ、そして考える、
詩のことそしてことばのこと。

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知人から借りたもの。

詩とはどんなもの? ということを物語の形で書いた
すてきな本だった。
ストーリー、会話自体が詩のよう。
先が気になるという種類の話ではないけれど、
一章一章を、じっくり読みたい感じ。

児童書にカテゴライズされているけれど、
子どものころのわたしが読んでも、
きっとこの本の良さを理解はできなかっただろう。
大人になったからこそわかるという気もする。


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170:上野正比古『平成歌合 新古今和歌集百番』

2020-08-19 21:08:05 | 20 本の感想
上野正比古 『平成歌合 新古今和歌集百番』(角川フォレスタ)
★★★☆☆

【Amazonの内容紹介】

和歌の伝統のひとつである「歌合」にならって
新古今和歌集から厳選した百首と自詠歌を番わせ
註釈を加える試みの第2弾。
古の歌人である藤原定家、西行法師、和泉式部らが
現代短歌と時を超えてコラボレーション。

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新古今和歌集の歌をピックアップして、同じ題で作者が作歌して
作者名を伏せて歌合の形式で読者が勝敗をつけるという面白い試み。

新古今集の歌、本当にわずかな有名なものしか知らないんだけど、
それでもどちらが当時の歌かって、結構わかるものだな。
理由は自分でもうまく説明できないんだけど、
語彙とか、言葉のリズムとかが、やっぱり違うんだろうか。

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169:諸田玲子『今ひとたびの、和泉式部』

2020-08-19 20:53:39 | 20 本の感想
諸田玲子 『今ひとたびの、和泉式部』(集英社文庫)
★★★☆☆3.5

【Amazonの内容紹介】

平安朝、大江家の娘式部は、宮中で太后に仕え、
美貌と歌の才を高く評価される。
和泉守と結ばれ幸せな日々に、太后危篤の報が届く。
急ぎ京へ戻った式部を親王が待っていた。
高貴な腕に抱きすくめられ、運命は式部を翻弄していく。
愛する人たちを失いながらも、歌に想いを綴っていくが…。
浮かれ女と噂を立てられながらも、生涯の愛を探し続けた式部。
冥き道をゆく謎多き女性を大胆に描く親鸞賞受賞作。

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あれ、この人とつながってたんだ? という面白さはあったけれど、
和泉式部と関わった男たち自身ではなく、
キャラ立ちしていないその関係者が先にいっぱい出てきてしまったものだから、
序盤はもう、誰が誰やら。
「和泉式部が最後に愛していたのはだれか?」
という謎で引っ張っていくのだと思いきや、
話は彼女の死の真相へ。

意外は意外なんだけど、どうにもストーリー上の必然性が
感じられなくてもやもや。
そこまで執着する理由があった??

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168:スズキダイチ 『ヒロイック・コンプレックス(1)』

2020-08-19 20:28:55 | 20 本の感想
スズキダイチ 『ヒロイック・コンプレックス(1)』(星海社)
★★★★★

【Amazonの内容紹介】

超戦士として戦う男勝り女子・みすずが憧れる可愛い戦闘美少女。
その正体は男らしい戦士に憧れるカワイイ系男子? 
異色入れ替わりラブコメ!

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「ツイ4」で既読なんだけど、新人作家さんを応援するつもりで購入。
キャラクターの可愛らしさとノリ、ユーモアのセンスが好き。
みすずも大鳥くんも可愛いね。
絵は経験を積めばうまくなっていくだろうけれど、
キャラメイクとか全体のムードとかセンスみたいなものって
作者の人格と強く結びついていて、
簡単には変えられないのでは? と思うので、
「絵が好き」より、そちらのほうが大事な気がする。

欠かさず見ていたWeb漫画は数あれど、
今まで星海社のコミックスを買おうと思ったことはなかった。
微力ながら助太刀いたす! の気持ち。
売れますように!!

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167:繁田信一『庶民たちの平安京』

2020-08-14 22:34:47 | 20 本の感想
繁田信一 『庶民たちの平安京』(角川選書)
★★★★☆

【Amazonの内容紹介】

これまで、貴族の視点からのみ論じられてきた平安京。
しかし、人口の大半を占めていたのは、
貴族たちに仕える庶民たちである。
彼らは貴族の供をして宮廷に出入りし、儀式を見物するばかりでなく、
炊事、造酒、機織、あるいは鳥や魚の調達等、
さまざまな職掌に励んでいた。
なかでも牛飼童は副業で運送業をしていたのだ。
当時の記録類を駆使して庶民生活を明らかにし、
王朝時代の大都市の実像を初めて描き出す。

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ふだん「平安時代の生活」として取り上げられるのは
貴族の中でも上級貴族のものだけで、
中級以下はよくわからないし、
ましてや庶民なんて非常にぼんやりとしたイメージしかない。
特に不思議だったのが、貴族の従者が家を持ってるってこと。
土地や家を持つだけの財力があったの??

そういう長年の疑問がこの本で解消した。
主家たる貴族が、自邸の近くに作った社宅みたいなもんだったのね。

源氏物語の車争いの場面の「葵の上の従者vs六条御息所の従者」とか、
貴族の従者同士の乱闘だとか、
主人の体面に関わることだし後から問題にならないんだろうか……と
思っていた従者の立場や、同業者同士のネットワークについても
解説されている。
ふだんスポットがあたらない庶民を中心に扱っている点で、
めずらしく興味深い。

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166:山中智恵子 『「明月記」をよむ―藤原定家の日常』

2020-08-12 18:17:09 | 20 本の感想
山中智恵子 『「明月記」をよむ―藤原定家の日常』(三一書房)
★★★★★

【Amazonの内容紹介】

鎌倉時代の歴史資料としても、文学作品としても高い価値を持つ
藤原定家の19歳から74歳までの日記「明月記」に、
斎宮研究の第一人者であり、歌人でもある著者が挑み、
その人間像を浮かび上がらせる。

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今まで出会った本の中では、いちばん詳細に、しかも読みやすく
「明月記」を紹介しているかもしれない。
全訳ではなく、記事を取捨選択しているし、
訳と筆者のコメントの区別がしにくい書き方が
残念ではあるのだけど、面白かった。

『後鳥羽院御口伝』、何回読んでも、
定家への愛憎半ばする感情の強さにもだえてしまう。
他の歌人と比べて、めちゃくちゃ字数費やしてるのね……。

成家は「定家よりはるかに劣っていて」と
結構ひどい紹介がされているんだけど、
補任の記録見ると、業績が残っていないわりに
定家より出世してる気がする。


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165:酒井順子『平安ガールフレンズ』

2020-08-12 18:03:17 | 20 本の感想
酒井順子 『平安ガールフレンズ 』(角川学芸出版)
★★★☆☆

【Amazonの内容紹介】

誰とガールズトークしてみたい?
「あるある」の元祖、女子に人気のリア充清少納言。
ねっとり濃厚な性質、内に秘めるタイプ紫式部。
負けず嫌いな“出家してやる詐欺”美女藤原道綱母。
平安の“中二病”夢みる物語オタク菅原孝標女。
モテと才能に恵まれるも、なぜか不幸体質和泉式部。
千年前と今とをつなぐ古典エッセイ。

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いつもの酒井さん、といった感じ。
「現代だったら……」の仮定がうまく、ライトでさくさく読める。
ちょっと古典を読んでみようかしらって人に、
ガイドとしていいんじゃないだろうか。

平安ではないけれど、いつか後深草院二条にも
意地悪くツッコミをいれてほしい。

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