寒に入り急に寒くなり、一昨日午後あたりから雪が舞いました。昨日は、お天気で
ベランダの雪も殆ど溶けましたが、最低気温は-7℃とあり凍っていました。
都市部の雪は、車を始め自転車、歩行者の事故のもとになり危険がいっぱい。
何やら難しいタイトルなんですが、廃棄物・・つまり排出口からものを観ようと
いう考えなんです。
手元の会報の『「すてられたもの」目線の人文学』(藤原辰史氏、京都大学人文
科学研究所准教授)なる記事を読んで、“なるほど! ずっと見過ごされてきたが、
大事なことだ”と思いましたので取り上げました。
この方(藤原氏)は、2019年に『分解の哲学―腐敗と発酵を巡る思考』(青土社)
を出版されていて、各方面の多くの方から賛辞の言葉が届けられたそうです。
(ネット画像より
一口に言えば、『今日食べたランチの内容は覚えていても、今日捨てられたゴミ
の内容を覚えている人は少ない』しかし『捨て続けなければ家も職場も頭の中も、
活動ができない』『細胞も外部に老廃物を捨て続けなければいけないし、人間も腎
臓や膀胱や肛門がなければ生きて行けない』『都市は上水道だけが引かれていても
下水道がなければ機能しなくなるだろう』 そんな視点で捉えられています。
これまで物質循環の入り口よりも出口は、いつも軽蔑、差別、無視の対象であった
とし、この軽視された部分を今こそ光を当てて考え直すべきではないかというのです。
(ネット画像より)
地球温暖化の問題は深刻ですが、これを少しでも改善するためのエネルギーとし
て原発を見直す・・というか導入推進を図る為政者は、その出口、すなわち放射性
廃棄物の後処理について、ずるずると先延ばしするだけで、つまりはもぐらたたき
を繰り返しているに過ぎないのですね。
経済学者のケインズは、資本主義の源泉は「アニマルスピリット(野心的意欲)」
として、今日 社会を豊かにしてきましたが、その結果の問題として、例えばプラ
スチックゴミ、つまり廃棄物の問題が浮揚しています。
会報記事にも『海を泳ぐ魚たちのはらわたに信じられないほどのプラスチックが
詰められている。そして私たちの はらわたにもまた1週間にクレジットカード1枚分
のプラスチックが通過している』と衝撃が述べられています。
(ネット画像より)
また、記事には、あのフランスの大作家ヴィクトル・ユーゴのレ・ミゼラブルに
あるパリの下水道が引用されていました。主人公ジャン・バルジャンが娘(養女)の
恋人、瀕死のマリウスを背負って下水道を逃げる・・その下水道をユーゴは『パリ
のはらわた』と呼んでいる。つまりは、パリのあらゆる活動の結果の廃物がそこに
詰まっている‥ といっているのですね。
さらに、著者、藤原氏が思い入れを抱く『蟻の街のマリア』の一節も引用されて
いました。戦後、東京の一角にバタヤ地区が出来、そこには行き場のない社会から
捨てられた人々が集まっていた。そこは「蟻の街」と呼ばれていたが、ある時ポー
ランド出身の聖職者がゴミから拾った木で十字架を作り、教会を建て、そこに大学
教授の娘(キリスト教者)を連れてきて、子供たちと一緒にオルガンで歌い勉強を
教え、ともにリアカーを引いて紙くずや鉄くずを拾い集めお金を貯め「蟻の街」は
見違えるように活性化した・・というのです。
著者自身の体験談もありました。 東京の公営住宅に住んでいる時、掃除のおじ
さんがいて、毎日出るゴミからカッターナイフや色紙やマジックでおもちゃに変身
させた話で、このおじさんの手つきを子供たちが見て、魔法のような工作を見るその
姿に感動を覚えたのも、『分解の哲学』の発端でもあったと。
機会があれば、この『分解の哲学』を読んでみたいと思いますが、記事が示すよ
うに、常に忘れられた、いや忘れてはいないけれども、いつも後回しにされてきた、
排出口、つまりは廃棄物に今一度焦点を当てて、単に、エコやリサイクル(このこ
とも重要ですが)などだけでなく、もっと抜本的にメスを入れて考える必要がある
のではないかと思うのです。
現役のまだ若いころ、「テクノロジー・アセスメント」(技術がもたらす副次的
影響を総合的に分析・予見すること)という言葉が流行したことがありました。単
に目的的な機能の実現を目指すだけでなくそれの実現による影響を幅広く捉えるこ
とが重要であるというのです。
特に近年は、競争の激化、スピード化の要請から、これらのアセスメントは直接
的な影響だけにとどまっている可能性があり、将来的な問題は社会の共通事項などと
追いやってしまう傾向にあるのかもしれません。
昔、読んだ『パパラギ』(1920年、エーリッヒ・ショイルマン著)などは、その
原点を突いた物語なんですね。
(ネット画像より)
問題が起こらないと分からないのですね! 分かっていても対処しないのです。
’Scarborough Fair’ - Simon & Garfunkel 【和訳】サイモンとガーファンクル「スカボロフェア」1966年