牛込・神楽坂 酒問屋 升本総本店の別館「涵清閣」 主人が語る

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地域のご縁も「ビールボーイズ」

2008-04-10 10:14:27 | 酒の本棚(書評?)
弊社の位置する飯田橋から江戸川橋、小石川にかけては出版・製本の街でもあります。
弊社から徒歩3分圏内でも、あの「ハリーポッター」の静山社キリスト教関連で名高い新教出版社、「指輪物語」やロアルド・ダールものを繰り出している評論社など、その道では有名な出版社が数多くあります。

今日の神楽坂涵清閣、順位はいかほど?

この本も徒歩3分圏内出版社の一つ。創元推理文庫等でおなじみの東京創元社からの新刊(2月)です。



竹内真(2008):ビールボーイズ、東京創元社、316p.

小説なので、ネタバレ注意です。内容は出版データベースのものをそのまま持ってきましょう。


北海道の新山市、正吉たちは、ビール工場の撤退のために憧れの茜が転校していってしまうのを惜しんで、秘密基地に集った。茜を転校させてしまうビールという存在へ復讐するために、皆でビールを飲んでしまおう! これが正吉の地ビール造りへと誘うきっかけだった。4人の仲間たちの12歳から30歳まで、ビールで結びついた友情と成長の軌跡を描いた感動の物語。名作『カレーライフ』につづく、フード系成長小説の決定版。きっとビールが飲みたくなるコラム付き。


「フード系小説」というのがあるとは知りませんでしたが、どうもこの人の作風のようです。
各章のタイトルが、「第○回ビール祭(●歳)」となっていて、上記説明のように、仲間たちの友情と成長の軌跡が、●歳の時にビールを飲みに集まった場面から語られる、というスタイルになっています。
こうした構成も面白いですし、サクサク読める割に文章がしっかりしていることにも感心。
(この構成、雑誌連載とかだと散漫になってしまいキツいと思って巻末を見たのですあ、書き下ろしのようです)

そして、ビールについてよく調べている!!酒屋もビックリです。
その賜物は各章の間にちりばめられたビール「コラム」で、これだけでもちょっとした出版物になるのでは、という力作です。
また、ストーリーの中にも、いろいろと凝った形でその成果があらわれています。
文献資料だけではなく、実際の取材もされているようです。
弊社に一文を寄せていただきたい、とも思いました。

ちなみにこの写真は、、、ビールの仕込みを行うマッシュタンです。
ちょっとネタバレ注意。



一つだけ、しっくりこなかったのが、地ビールや地域の動向の感覚。
小説の中では1983年から2001年までのお話となっており、恐らくリアルな世の中での地ビール動向も描かれた通り(つまり、正確に取材されている)なのですが、あの頃って、地ビールにフォローの風が吹いていました。

これを地域の疲弊も進んでいる2008年の今、読むと、「そんな時代もあったなぁ」となってしまいます。
その後、大変なご苦労をされて、しかし着実に歩まれている地ビール業者の方も少なくありませんので、後日談みたいなものも書いていただきたいなぁ、とも。

ちょっと早いけど、ゴールデンウィークには東急ハンズで地ビール手造りキットを手に入れて、ビールを仕込みながらこのビールボーイズをご覧になっては如何でしょうか?


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牛込・神楽坂 酒類卸 升本総本店
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