次に好きになった選手は、色々いますが、本当に思い入れがあるのは、西本聖投手ですね。スマートな野球が好きな人から見れば、暑苦しいことこのうえないくらいの熱血・雑草魂です。まさに、巨人の星です。現在の上原投手の雑草魂など、甘い甘いというところです。
というのも、入団時のドラフト1位は甲子園のアイドル定岡正二投手で、西本投手はドラフト6位かドラフト外でした。記者会見時の写真も、長嶋監督と満面の笑顔で握手する定岡のはるか遠くで暗い表情をしていたのが西本投手です。当時の定岡といったら、まさに今のハンカチ王子と同じくらいの人気でしたから。西本投手は、この定岡に勝つことを目標に必死にがんばり、定岡より先に一軍にあがり、若手の有望株となったのでした。
そんな時に全国的な社会問題を巻き起こして入団してきたのが江川卓投手でした。江川投手は高校時代から「怪物」と呼ばれ、当時松坂とハンカチ王子とマークンを合わせたくらいの超大物選手だったのです。せっかく若手の有望株の座を手に入れた西本投手ですが、また江川の影に隠れた存在になってしまいました。しかし、熱血西本はこんなことでへこたれません。今度はこの怪物江川をライバルに見立てて、闘志を燃やしたのでした(江川の方はそんな気はなかったと思いますが)。
西本投手の特徴は、沢村のように足を高々と上げるフォームと切れ味鋭いシュートです。シュートの方は天下一品でしたが、足を高々と上げるフォームはその力が球に伝わっていると思えず(西本投手のストレートは140㌔程度でした)、子供心にあまり合理的なフォームではないと思ったものです。しかし、闘志を前面に押し出す西本投手としては、あの足を上げるフォームが闘志をもっとも表現出来るスタイルだったのだろうと思います。投球の威力に何の関係もなくても、気持ちを表す手段だったのだと思います。
こうした西本投手がもっとも輝いていたのが、日本ハムとの日本シリーズです。江川・西本とも2勝ずつあげて、日本一になりましたが、普通の出来だった江川に比べ、西本はソレイタなど強力打線の日本ハムに対し、最初が確か二安打完封、二試合目も一点取られたかどうかという完璧な内容で、シリーズMVPに輝いたのでした。
その後、江川はボロボロになるのを潔しとせず、あっさり引退し、TVで人気者となりましたが、西本はその後中日にドレードされ、そこで巨人相手に闘志を燃やし、20勝をあげる活躍をして最後まで熱血でいたのした。プロに入るくらいだから、もちろん才能はあるわけですが、素人が見てもそれほど才能に恵まれていると思えない選手でも、あそこまで闘志むきだしに練習し、試合に臨めば、勝つことが出来るのだと教えられた選手です。