伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

病院に行かない夫 体重計に乗らない妻

2008-02-16 08:45:01 | 実用書・ビジネス書
 心臓病のリスクと治療についての一般向け啓蒙書。
 タイトルの巧さに惹かれて読んでみましたが、心臓病とそのリスクを高めるメタボリックシンドロームについてひたすら不安を煽り、とにかく医師の健康診断を定期的に受けなさいという本でした。
 この本を読んでいると、太っていればもちろんメタボ、やせていても「隠れ肥満」のおそれがある、運動不足はメタボ、ジムで鍛えていてもメタボのおそれありと、メタボの疑いのない人は世の中に存在しないみたい。
 1つ該当するだけでも「特別な自覚症状もなく健康診断でもギリギリ再検査といわれないタイプ」と脅される「生活習慣チェッカー」には「休日は外出せず、家でゴロゴロしている」「しばらく運動をしていない」「階段よりエスカレーターを選びがち」「遅い時間に食事をすることが多い」「心配性だ」「プレッシャーに弱い」なんて項目が並んでいます(18~21頁)。
 さらには1つでも該当すると「狭心症の可能性大」と書かれている狭心症チェッカーには「胃のあたりが痛む」「背中が痛む」「のどが痛む」という項目も(72~73頁)。狭心症でこういうケースもあるという指摘ならわかりますが、これで「狭心症の可能性大」って、ちょっと酷くない?
 心臓神経症は心臓病かも・・・と思うストレスから発症するって書いてあります(88頁)が、この本を読んで心臓病の不安を感じない人はほとんどいないと思います。その場合でも安心するために医師の健康診断をとなるわけですが。


齋藤滋監修 幻冬舎 2007年12月19日発行
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モテたい理由

2008-02-15 20:57:03 | エッセイ
 女性誌のモテ特集の外しっぷりとライフスタイルで売るセレブたちを揶揄する世間話的エッセイ。
 タイトルで売る本だと思いますが、タイトルに対する回答は読んでもよくわかりません。モテるためとか、ライフスタイルとか言っているのは、他人に認めてもらいたい、よりはっきり言えば他人に羨ましがられたいということで、その相手は現実には男ではなく同性たち・・・ということをたぶん言っているんでしょうが、それは「モテたい理由」に正面から答えている訳じゃないと思います。
 また、この本全体としてのテーマも流れも読んで釈然としません。前半は女性誌批評。それが男は女はという紋切り型の上に、女については「女の私が言うのだ、嘘ではない」(42頁)、男については「私の周りの男子にリサーチをしてみた」(40頁)という超主観的決めつけ。女性誌を読み尽くしたと言う著者が女性誌を論じるのに定量的な話は全くなくて、1つ2つの特集などをあげつらうだけ。後半は日本のセレブについてのゴシップ的な論評。で、ライフスタイルで売るセレブを揶揄した挙げ句に最後は自分史を書いて終わりって・・・
 まぁ、著者の世代が私と近いので論評の対象となっているものが昔読んだり見たりしたものが多くて興味深いし、個別の論評には同感することも多く、サブカルチャー批評の世間話として読む限りは面白いのですが。


赤坂真理 講談社現代新書 2007年12月20日発行
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あねのねちゃん

2008-02-14 21:27:41 | 物語・ファンタジー・SF
 主人公の想像上の友人(イマジナリー・コンパニオン)だった「あねのねちゃん」が大人になってから現れ、通常は他人には見えないのに、他人に影響を与えることもでき、主人公の潜在的願望を叶えて復讐を始めるのですが、そういうイマジナリー・コンパニオンを持つのは主人公だけではなく、戦いが始まるというようなストーリーの小説。
 最初のうちは、消極的で控え目な性格の主人公の隠された願望が、イマジナリー・コンパニオンの手によって満たされるという超能力小説っぽい趣ですが、イマジナリー・コンパニオンが抑制できなくなりさらにはイマジナリー・コンパニオンに支配されるというホラーっぽい展開もあって、その中間的なお話。
 現実に影響を与えうるイマジナリー・コンパニオンを持つ登場人物が、イマジナリー・コンパニオンに持たせる役割がそれぞれで、そこに人間性が表れています。そういう点では主人公が一番低レベルに思えてしまうのが哀しいですが。


梶尾真治 新潮社 2007年12月24日発行
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星と砂漠と王子さまと

2008-02-12 08:06:47 | 物語・ファンタジー・SF
 著作権切れで出版ラッシュとなった Le Petit Prince のまた最近出た新訳。
 別の新訳を読んでいないので、新訳比べはできませんけど、翻訳で論争の的になり続けている、キツネが王子さまに特別な関係になるために必要なこととして伝えたapprivoiserは従来の岩波書店版と同じ「飼いならす」。すったもんだしてもやっぱりこれがベストの選択なんでしょうか。王子さまがヒツジに食べさせたい若木も「小潅木」って・・・今訳するのならもっと読みやすくして欲しいなと思うんですが。
 タイトルは、岩波書店の主張に配慮して「星の王子さま」にせずに、しかし、星は残してちょっと中途半端。いっそのこと原題通りに「小さな王子さま」の方が潔いと思うんですけど。
 Le Petit Prince は高校時代に英語版を授業で読まされて以来。大人の「私」が子どもの心を忘れずに、澄んだ心の目で見ようと述べながら、同時に王子さまの心の成長(一直線の成長でもないけど)が描かれ、それをうれしく思うとともに少し寂しさ/せつなさも感じる(そう感じるとは書いていませんけどね)、そのあたりの微妙な「私」の心理が、親になってみて読んで味わい深く思えました。


原題:Le Petit Prince
サン=テグジュペリ 訳:飯島勉
文芸社 2007年12月15日発行
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敗戦国ニッポンの記録 下巻

2008-02-11 17:21:11 | ノンフィクション
 アメリカ国立公文書館所蔵の写真の中から占領時代の日本の写真を選んで掲載した写真集。下巻は復興の過程での民衆の生活に関する写真が集められています。
 アメリカサイドで撮影した写真ですので、アメリカに好意的な写真が多くなっているとは思いますが、貧しいながらも人々がたくましく生活している様子を写した写真を見ていると、アメリカが占領がうまくいった例としていつも日本占領を引き合いに出す気持ちがわかる気がします。
 また、メーデーなどで、皇居前広場を埋め尽くす50万人の群衆なんて写真を見ると、隔世の感がありますし、労働者の団結権の意味も今とは違って感じられます。占領政策の転換後の労働運動に関する写真も掲載されていたら、さらにまた違う感慨を感じられたかとも思いますが。
 人々の生活ぶりを見ても、法や制度の意味合いも、固定したものではなく時代に応じて創造的に考える必要があることを再確認できる気がしました。
 個人的には、事務所のすぐそばの神田小川町交差点の写真(100頁)に、へ~っここって戦後すぐから角の店の敷地が斜めに切られてたんだって、感慨深く見ました(そんなマニアックなこと誰も考えないって(^^ゞ)。


半藤一利 アーカイブズ出版 2007年10月20日発行
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バブル

2008-02-11 11:33:49 | ノンフィクション
 元特捜検事で弁護士に転身後は暴力団やバブル紳士ら闇社会の人々の代理人として活動していた著者のインタビュー本。
 「反転 闇社会の守護神と呼ばれて」の検察官時代を落としてバブル紳士の依頼者関係を少し追加し、バブル時代のエピソードと論評を追加したという感じ。
 前半は「反転」の要約版という感じで、著者の依頼者関係で新たに出てきたのは武富士と暴力団の関係(65~69頁)くらいでしょうか。「反転」からふくらませたのは許永中関係を少しと山口組の宅見若頭関係が中心で、後半で貸し手側の問題、銀行の悪辣さやRCC(債権回収機構)の強引さなどが指摘されています。
 「反転」を読むのが大変と思う人(まぁ分厚いですからね)には手頃ですが、「反転」を読んだ後に読むとディテールが落ちるのでちょっと物足りないと思います。


田中森一 宝島社 2007年12月21日発行
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反転 闇社会の守護神と呼ばれて

2008-02-10 20:14:39 | ノンフィクション
 特捜部検事時代に多数の疑獄事件を手がけ、弁護士に転身した後は暴力団やバブル紳士たちの弁護を多数引き受けて、手形詐欺容疑で起訴されて実刑判決を受けて上告中(執筆時。2008年2月12日上告棄却)の著者によるノンフィクション。
 検察時代の疑獄事件への圧力や人間関係も含めた裏話、弁護士になった後の暴力団やバブル紳士と政治家の実名入りの危ない話が多数書かれており、ノンフィクション好きには読みどころに事欠きません。検察官時代にしても弁護士時代にしても、守秘義務大丈夫かなと思ってしまいますが(どうせ辞めることになるんだからということでしょうけどね)。また弁護士になってからの部分は、依頼者層や金銭感覚、弁護方針のほぼ全てに私は違和感を覚えますけどね(別世界の弁護士なんですね)。
 私にとっては、具体的な疑獄事件での政治家たちの反応や、その事件で調べがここまで進んだのにこういう経過で潰れたという話も大変興味深いですが、それとは別に一般事件も含めて被疑者や弁護士に対してどのように対応していたかの方が驚きでした。民社党の代議士の取調でいきなり怒鳴りつけて灰皿を壁に投げつけた(73頁)なんていうのが最初の方に出てきてビックリしますが、そんなのかわいい方で、机を激しく叩きながらフロア中に響きわたるほどの大声を発して責め立てる(140頁)、被疑者を立たせたまま尋問することもしばしばだった(140頁)とか、検察ではなく警察の話としてですが「府警庁舎の地下にあった取調室では殴る蹴るが日常的におこなわれ、しばしば暴力団員のうめき声が聞こえてきたものだった」「アバラ骨を折るなんかザラだ」(131頁)それで暴力団員が傷害事件で告訴してきても刑事や検事は「何をねむたいことぬかしとるんじゃ。お前らに人権なんぞあるかい」といった調子で突っぱね不起訴にする、そういうことがしょっちゅうあった(132~133頁)なんてことまで書かれています。
 最初の勾留期間の10日間は弁護士が被疑者の接見に来ても「大事な調べだから今日は勘弁してください」「今日は現場検証に連れて行くから」などと口実を作って接見させず被疑者を孤独にさせて自白に追い込んだ(140頁)とか、「狭い拘置所の取調室で、被疑者に同じことを毎日教え込むと、相手は教え込まれた事柄と自分自身の本来の記憶が錯綜しはじめる。最後にはこちらが教えてやったことを、さも自分自身の体験や知識のように自慢げに話し出すのである」「そして、多くの被疑者はいざ裁判になって、記憶を取り戻して言う。『それは検事さんに教えてもらったのです』だが、それではあとの祭りである。調書は完璧に作成されているので、裁判官は検事の言い分を信用し、いくら被疑者が本心を訴えても通用しない」(150~151頁)と、弁護士の接見を妨害し被疑者に嘘の自白をさせていたことまで書かれています。
 そういう疑いを持つことはままありますが、でもまさかそこまではねと思っていたことが、やっぱりそうだったのかと思ってしまいます。もちろん、これを書いた時点では自分が検察に起訴されて無実を訴えている立場ですから、検察官を悪く言いたい気持ちがあるのは当然でその分割り引くべきでしょうけど、それにしても元検事が自分の経験として書いた検察捜査の実情ですので資料価値は高いと思います。


田中森一 幻冬舎 2007年6月25日発行
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図解 「大人の説明力!」

2008-02-09 09:20:10 | 実用書・ビジネス書
 セールスやプレゼンのための説明のやり方の解説本。
 説明をするとき、自分の目的(獲得目標)と相手のニーズをまず考え、その上で説明したいテーマについてどう説明するかを考えろという指摘は頷けます。そのためには、最初から説明をするのではなく、相手に質問して相手の関心・ニーズを確認することが大事だとか、相手に考えさせ自分で理解するために敢えて説明しないこと/沈黙することが有効な場合もあるという話もなるほどと思います。なかなか実践できませんが。
 そして説明で一番大事なのは事前準備で、資料をよく理解し、自分が理解するためにもまず図解し、説明の筋書きを考え、それを相手にあわせて仕上げ、さらにリハーサルしてから説明に臨むべきとか。う~ん、これって証人尋問の準備と同じですね。私も証人尋問ならそうしますけど、意見陳述とか講演ではそこまではなかなか・・・


開米瑞浩 青春出版社 2007年12月15日発行
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新しい道徳

2008-02-09 08:50:04 | 人文・社会科学系
 単一の価値観で通じた「成長社会」では「正解」を速くはじき出す「情報処理力」が求められたが、変化が激しく複雑な「成熟社会」では「正解」よりも議論した末の「納得解」が重要でありそれを導くための「情報編集力」が必要だとして、思考停止したパターン認識から「それぞれ」の複眼的発想による新しい道徳へと移行することが必要だということを論じた本。
 学力低下の議論を素材に、必要な学力は何か、これからの日本に必要な学力は(小学校時代に身につけるべき基礎学力は別として)情報編集力で、そのためには総合学習こそ必要ではないか、「ゆとり教育」見直しのきっかけとなった国際テストでも1位のフィンランドは総合学習を増やしているではないかと論じています。いじめ問題では、大人の社会でもいじめはあるのに学校のいじめだけ許せないのは疑問だ、いじめを抑制するためには親や教師でない大人が学校運営に参加して子どもが多様な大人にもまれて成長する機会が必要だと指摘しています。
 論理的に一貫しているのか、やや疑問も感じますし、テレビが何でも2項対立に単純化することを批判して世の中はもっと複雑と言いながら、2項対立的に印象的な言葉でまとめています。でも、それがわりとうまくて説得力があったりして、一筋縄ではいかないように思えます。
 最後の章で個性が大事と論じ、全ての人間は障害者でありたまたま障害のない期間があると考えれば生きやすいという発想は目からウロコですね。


藤原和博 ちくまプリマー新書 2007年12月10日発行
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ワーキングプアの反撃

2008-02-08 08:09:58 | 人文・社会科学系
 近年の「規制緩和」「改革」路線で使用者側がやりたい放題に労働者を切り捨ててきた結果生じた働いても貧しいワーキングプア層の悲惨さと怒りを語る対談本。
 本当は労働法制の規制緩和などで使用者側のやりたい放題を許している仕組みを変えなければ助からないのに、心情右翼→中国人・朝鮮人とか、過労死予備軍の正社員→フリーター→生活保護受給者とか、弱者がより弱者を憎むという構造に絡め取られているということが、お話の1つの軸になっています。フリーター層やネットカフェ難民の悲惨な生活と哀しみと怒りが、読んでいてしみじみと感じられます。
 内容からはまだ「ワーキングプアの怒り」くらいですが、タイトルの「反撃」は、そうしたいという希望を込めてでしょう。私も反撃に至って欲しいと思うのですが。


雨宮処凜、福島瑞穂 七つ森書館 2007年7月1日発行
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