伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

新版 活動期に入った地震列島

2008-02-06 08:10:40 | 自然科学・工学系
 地震や地震予知、地震防災についての入門書。
 何か読んでいて、中越沖地震のことにまで触れているのにどうも基本的に古い感じがしたのは、1995年に阪神大震災後わかったことをまとめて書いた本の補訂版だからなんですね。地震学がその後急速に進んだせいか、読んでいて聞き覚えのある話が多く、新たな発見があまりない感じ。
 阪神大震災後に基本部分が書かれているのと著者が京都大学教授ということからか、西日本の活断層と東南海地震関係が中心になっています。
 言われてみれば当たり前ですが、活断層の活動した後の破砕帯はもろいのでV字谷や川筋になりやすく、道ができたり川があったりで人が集まって住みやすい(20頁)というのは、考えさせられます。


尾池和夫 岩波科学ライブラリー 2007年12月6日発行(初版は1995年)
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日本一わかりやすい労働ニュースの読み方

2008-02-05 08:03:09 | 実用書・ビジネス書
 労働法、社会保険関係について広く浅く解説した本。
 書かれていることについてはわかりやすく書けていると思いますが、多くの項目が話の入口の本来簡単なところで止まっていますから、それで「日本一わかりやすい」って言うのはちょっと・・・。
 賃金の相場の部分については、著者の経営するコンサルタント会社が調査した独自データで詳しめに論じていて、その部分が読みどころでしょうか。その調査の対象についてのサンプルデータがないので調査の信用性の評価が難しく、中小企業の賃金相場、退職金相場を政府統計よりも実際にはずいぶん低いことを強調して中小企業経営者の主張を正当化する方向で使われていることとあわせて、無条件に信頼するのは危険だと思えますが。
 経営者にコンサルティングするのが著者の仕事ですので、全体的には経営者寄りの立場で書かれているところが多いと感じます。


北見昌朗 東洋経済新報社 2007年12月20日発行
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就業不能 「働けないリスク」に企業はどう向き合うか

2008-02-04 08:06:33 | 実用書・ビジネス書
 心身の傷病によって長期間働けなくなった場合の所得保障保険「GLTD」の導入のメリットを説明した本。保険代理店会社の販促本ですね。
 現在の日本の社会保障と生命保険が、死亡の場合と短期の入院等には手厚いのに対して長期の労働不能の場合には収入の保証がほとんどなく生活が破綻するリスクがあること、十数年来日本の企業が推進した成果主義の導入やリストラが従業員の忠誠心を失わせるとともに従業員の孤立化と過剰な業務負担を招いてうつ病を中心とする精神疾患の増大を生じていることなどの日本のセイフティネットの貧困と労働環境に関する指摘は頷けます。
 長期の就業不能に対して保険で所得保障をすることで従業員が安心して働くことができ、従業員の忠誠心を回復し優秀な人材を獲得することができるとか、うつ病でも安心して治療に専念できる環境を作ることで重篤化を防ぎ人材の有効活用を図れるとともに訴訟リスクを減らすことができると、この本は述べていますが、そのあたりはセールストークとして割り引いて読んだ方がいいでしょう。うつ病による人材喪失と訴訟リスクを強調するわりに精神疾患の場合の所得保障期間は2年間に限定されています(108頁)し、保険料は導入する企業の考え次第で労使の負担が変えられ、標準的なケースでも従業員の負担の方が多くなっている上全額従業員負担にもでき(171~172頁、207~208頁)、従業員に本当にメリットがあるのかの判断は簡単ではないと思います。


鳥越慎二 ダイヤモンド社 2007年12月6日発行
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ついていったらだまされる

2008-02-03 08:41:27 | ノンフィクション
 キャッチセールス、霊感商法、アポイント商法(デート商法)、出会い系サイト、偽オーディション等の詐欺商法についてのレポート。
 いずれも著者自身が引っかかった体験として書かれている点がユニーク。ターゲットも若者に設定されていて文章・構成も読みやすくされています。
 霊感商法は、著者は明言は避けていますが、手口・トークから明らかに統一協会ですし、最初のキャッチセールスから絵画の展示会商法への流れもまずまちがいなくそうでしょう。まだやってるんですね。
 出会い系サイトの方は、別の機会にたまたま応募したアルバイトが出会い系サイトのサクラで、中年のオヤジが一生懸命女性を装ったメールを送っている姿を目撃したという話(123~128頁)が笑えます。俳優志望でなかなか芽が出ない著者がオーディション詐欺に引っかかった話(161~174頁)は、なかなかやるせない。
 そういう話を受けて著者が忠告するのは、騙されないためには疑問を持ち続けること、疑わしいことは先送りせずにその場で考え続けること(201~208頁)。提言としては地味ですが、大切なこと。プロのトークにかかったらそれでも引っかかるかも知れませんが。
 子どもに読ませてみたい1冊です。


多田文明 理論社 2007年11月22日発行
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賢い消費者になるための法

2008-02-02 21:07:42 | 人文・社会科学系
 消費者センターの相談員が、様々な消費者相談と相談員が行った交渉の事例を紹介した消費者問題の啓発本。
 同種の本に比べて相談事例が具体的で相談者の話や相談ぶりとかもリアルなところが読ませどころです。仕事柄、こういう相談者いるよねとか、こういう相談者困るんですよねとか、頷きながら読んでしまいました。消費者センターの相談員が要領を得なかったり態度の悪い困った相談者からねばり強く話を聞き出す様子や、たちの悪い業者を交渉で追いつめていく様子に感心します。もちろん、実際にはこうは行かなかったケースの方が多いのだろうとも思いますが。
 消費者センターの場合、相手方が持つ「お上」意識と行政指導の圧力、業者にとっては裁判より怖いかも知れない業者名公表を武器に裁判外で交渉するので、弁護士が入る場合とは状況や展開が違うなと感じます。
 最初と最後はちょっと堅い感じですが、全体の半分以上を占める相談事例が読みやすく参考になりました。


加藤新太郎、岡田ヒロミ、鳥居喜美子編 弘文堂 2007年12月15日発行
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太陽からの光と風

2008-02-01 19:13:26 | 自然科学・工学系
 太陽のことや太陽が地球や生物に与える影響、太陽の活動が人工衛星やGPSに与える影響などについて解説した本。
 太陽のことから少し横道にそれた話が勉強になりました。例えば、地球温暖化に関連して、エーロゾル(浮遊粒子)が増加した場合に、それ自体が太陽光を反射して気温を下げる効果に加えて、雲の粒子が小さくなり雲の太陽光反射が多くなって気温を下げる「雲アルベド効果」がまだよくわかっておらず、それによって温暖化の評価がかなり変わること(43~47頁)とか知りませんでした。生体時計の話でも、時間の経過を予測する生体時計があって、そのために明日は何時に起きようと思っているとその時間に起きれたりするとか、時計を見ずに何秒経ったかを答えさせて実際には60秒の時間を75秒以上と答えた人の5年間での死亡率は45秒未満と答えた人の5倍:せっかちな人ほど早死にする(92~94頁)とか(^^;
 地球上空の電離圏の電子数によって電波の速度が変化しGPSの精度に影響を与える(168~177頁)とか太陽からの放射線で人工衛星のコンピュータが誤動作したりハングアップする(138~141頁)とかが説明されていて、興味深いのですが、太陽の活動が活発になったときにどうなるのか、それに対する対策はといったことが、今ひとつ書かれていません。ちょうどこれから太陽の活動が活発になり、特にGPSや衛星通信がその洗礼を受けどうなるかが注目されている時期にとってもタイムリーに出版されたのですから、そのあたりを書き込んで欲しかったなと思いました。


秋岡眞樹編著 技術評論社 2008年1月10日発行
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