
<統治の出発点>
政治見識は、社会なるものの、そもそもの成り立ちを知ることからはじまります。
人間は、集まって、社会を作ります。
その社会の最大規模のものが、現時点では国家です。
世界政府が出来ていませんので、国家が最も上位な社会です。
そして、国家という社会の特徴は、それが物的暴力手段、つまり、警察と軍隊をもっているということです。
物的な力による、強制力を持っているということですね。

<第一動機は安全>
そもそも人間は社会をなぜ作ろうとしたのでしょうか?
第一の動機は、安全の確保です。
独りでは周囲の人間や動物に襲われる危険が常にあります。
特に人間に、つまり、他の部族や民族に襲撃される悲劇は、最大の悲劇です。
暴力手段でもって、財産や生命も奪われるだけでなく、生き残ったものを支配し続けます。
支配は、奴隷状態になるのが一般的です。
近代ですらそれはあって、トルコのアルメニア人襲撃は悲惨でした。
男性人民を殺しまくり、女性は生かして性奴隷にしました。
トルコの男性は、幾人ものアルメニア女性を囲い、ハーレムのような生活をしました。
顔と手に入れ墨を入れ、逃げてもすぐに性奴隷だったことがわかるようにした。
彼女たちは逃亡しても、食べられません。
入れ墨ですぐにアルメニア人の性奴隷だったことがわかりますので、他でも同じ処遇を受けるしかなかった。
だから多くは、支配男性の家にとどまりました。
異民族に征服されるというのはこういう悲惨さが伴います。
もちろん征服する民族にもよります。
太平洋戦争後に征服された日本民族は幸運でした。キリスト教民族である米国人は、残忍なことをしませんでした。
これに比べると、ロシア民族は、もう少し凶暴で残忍です。
もし日露戦争で日本が負けていたら、トルコ的なこともなされたかもしれません。
女性の性奴隷化も部分的には起きたかも知れません。
日本国内がロシア警察によって統治され、反抗的な男性は、次々にシベリア送りになったでしょう。
日本民族は、国が海に囲まれていることもあって、異民族に襲撃され、征服され、支配されることなく、明治維新まできました。
そして日露戦争に勝って、第二次大戦前まで来ました。
太平洋戦争で征服されましたが、相手国家がアメリカで、これに統治されるという、幸運に恵まれました。
だから、日本人は国民の安全ということに関してとても鈍感です。
いまの平和状態を人間社会には当たり前という感覚でうけとめています。
相変わらず若者は、テレビのバカバラエティーをみてキャッ、キャッ笑っています。
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だが、人間は、何よりもまず、安全のために集まって社会を作ろうとします。
日本もそうです。
集団を組織化し、外部者の襲撃に対処しようとして、国家を作ってきたのです。

<第二動機は食の確保>
第二の動機は、食物の効率的な生産です。
飢餓はダイナミックな苦しみを人間にもたらします。
これは何としても避けたいと思う。
食の確保は安全の次に重要課題です。
人は食物の生産を効率よくしようと切望します。そして社会を作る。
狩猟にしても、農耕にしても、複数で協働して行うと、生産は何倍も効率的になるからです。

<社会統治は、自己保全が最大課題>
安全と食を失った人間は悲惨です。
だから社会を形成して、この二つを確保すると、人は、既成社会をなんとしても守ろうとします。
これが崩壊すれば、確保した安全と食は、ほぼ失われてしまうからです。
だから社会運営の基底動機は、社会保全でアリ続けます。
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社会は、いったん出来上がると、他の成果も成員に与えていきます。
成員相互の交流も、精神文化も、祭りや芸術も社会には出来上がっていきます。
人民は、それをエンジョイしている内に、統治の基底課題を忘れてしまいます。
だが、社会運営すなわち統治の最大動因は、その社会そのものを保全することです。
そしてそれを保全するのに働く、基底的な動機は、安全と食の確保であり続けます。
政治見識は、これを見失ったら、成り立たないのです。

<集団の一体性>
社会を保全するに最大の要因は、社会成員の一体性を維持することです。
社会は、成員の一体性の産物です。
一体性が崩れたら、社会は崩壊します。
統治の基底課題は、社会成員の一体性を維持することなのです。
そして、統治担当者には、この真理が大きく働き続けます。

<二つの一体性形成方式>
一体性形成方式には、二つあります。
第一は、成員の多くが主体的に一体性を形成し、統治担当者がそれに反するものを制裁でもって
強制的に一体性に参加させる、という方式です。
自由主義ではこの方式をとります。
自由主義とは、成員の自由意志をベースにして、一体性を形成しようという思想です。
第二は、成員を強制的に一体化させてとにかく社会を形成し、
以後それに個々人の自由を可能になる範囲で加味していく方式です。
いわゆる、社会主義ではこの方式をとります。
社会主義とは、強制力でもって人間集団の一体性を形成しようという思想です。
この視野によって、ロシア(ソ連)の社会主義国家と、中国の社会主義国家との違いが浮き彫りになってきます。
次回、しばらく間が開くかも知れませんが、それを示そうと思います。

「チャーチ」なのに、政治見識の話が続いていますね。クリスチャンの方々、すみません。
もう少しで、聖書に戻ります。
当面、ユーチューブのページで、「ヨハネ伝解読」を検索して下さい。
現在連載している動画シリーズがすべて出てきます。
